2023年9月 9日(土) 16:00~18:00
2023年9月10日(日) 10:00~12:00
サントミューゼ 多目的ホール
現在16名のダンサーを擁し国内外で活動するダンスカンパニー「Co.山田うん」による市民参加型公演に関連したワークショップが、2日間にわたって開催されました。2日目の様子をレポートします。
今回は、カンパニー所属の山口将太朗さんが講師役を、河内優太郎さんがアシスタントを務めます。参加者は、中学生から50代まで幅広い年代の女性9名。バレエやフリースタイルのダンスを習っている人からダンス経験がほとんどない方まで、背景はさまざまです。
最初は、円になって音楽に合わせて、身体の各部位を動かしてじっくりほぐしていきます。弾むような音楽に変わると、空間を動いていきます。動く時と脱力する時のメリハリをつけつつ、より大きく動けるように山口さんが声を掛けます。次はすれ違う人と、目を合わせて軽く挨拶を。歩くスピードを上げ、出会った人と手をつないで離れるというように、少しずつ人との関わりが出てきます。ガイドに合わせて、繋いだ手を起点として引っ張り合う方向に力をかけてみたり、出会った人の足の間をくぐったり。参加者の気持ちがほぐれてきていることが、表情や動きから伝わってきます。
一旦リセットして自由に歩き回ります。近くにいる人と手を繋いで徐々に大きな円をつくり、繋がったままさまざまな動きにトライします。最後はそれぞれが自由に仕掛けていき、互いの力が拮抗することで思いがけない動きが生まれ、あちこちで歓声が上がります。
小休止後に自己紹介を挟んで、変則的な鬼ごっこへ。前の人の背中に抱きついてムカデのような列をつくります。鬼役の山口さんが、「いちばん後ろの人がタッチされないように、守りながら逃げてください。列が途中で離れたら終わりです」とルールを説明。遊びとはいえ、追いかけられるとつい本気になるようで、大いに盛り上がります。
ここからはペアの動きに入ります。向かい合って自分と相手の右肩をくっつけて回って元に戻ります。初対面の相手に体重をかけることに遠慮があるようです。「形を追うのではなく、コミュニケーションとしてお互い体重をかけ合ってみてください」という山口さんの言葉で、動きがぐっと変わります。ここから違う動きを繋げていき、お互いの力の入れ方、支え方がより高度になっていきます。「人と関わって踊る時は、体重をかけるのを遠慮せずに、攻めの姿勢で相手を気遣う“攻めの優しさ”でやってみてください」。
次はペアで向かい合って、ひとりはいろんなところに手を出して、もうひとりがそれに手でついていくというゲーム的な動きをやります。まだまだ遠慮がちな動きを見た山口さんは、「もっと意地悪になって相手をからかうようなイメージでやってみてください」。からかわれた身体とからかう身体、操作的な身体と反応の身体、そのコントラストが面白さを生み出します。さらにルールは自由度を増し、最後2対1で行う頃にはダンスのように見えてきました。
2回目の休憩を経て最後の20分は、1対1でどちらがスープを飲めるかというゲームを行います。道具はテーブルとイス、紙皿とスプーンのみ。ルールは、先に紙皿とスプーンの両方を手にした人が勝ちというものです。「相手に飲ませないように自分が飲めるように、いろんな発想で“守る/取る”をしてください」。
テーブルにあがる人、皿やスプーンをわざと相手の近くに置いてみる人、守りに徹する人と、まさに十人十色。レクリエーション的ですが、今日のこれまでの動きでできた土台が活き、ダンスや演劇のような物語を感じさせるのはとても興味深いところです。
最後、山口さんが締めくくります。
「今日何度もお伝えした“攻めの優しさ”は、『お互い楽しむために、私はこう行くよ』というコミュニケーションです。それが踊りになると、体重をかけあっているのに危なく見えないとか、宙に浮いて重力に逆らっているように見えるという瞬間がたくさん生まれます」。
そういった瞬間が、見る人に「(その感覚は)よく分かる、好きだ」という“共感”として作用すると山口さんは言います。
「今日のワークショップで少しでも興味を持った人は、10月15日の市民参加公演でもぜひご一緒しましょう!」。会場全体から、大きな拍手が沸き起こりました。
参加者のひとりが「公演には出ないつもりでしたが、今日とても楽しかったので、出てみようかなと気持ちが変わりました」と感想を教えてくれたように、心身ともに充実した時間になったようです。
『Co.山田うん 市民参加型創造公演 レプリゼント』の公演情報はこちら
日時:10月15日(日) 14:00開演(開場13:30)
場所:サントミューゼ 大スタジオ
料金(全席自由・税込):一般 500円(高校生以下 無料(要整理券))