【レポート】群馬交響楽団 上田定期演奏会-2023夏- 関連プログラム 「群響メンバーによる室内楽演奏会」
5月22日(月) 19:00~20:00 サントミューゼ 小ホール
6月25日にサントミューゼで開催する「群馬交響楽団 上田定期演奏会-2023 夏-」のオーケストラ公演に先立ち、群響メンバーによる金管五重奏の演奏会が行われました。
登場したのは、群響の金管楽器奏者5人。トランペット奏者の太田恭史さんとガルシア安藤真美子さん、ホルン奏者の竹村淳司さん、トロンボーン奏者の棚田和彦さん、そしてテューバ奏者の松下裕幸さん。「群響・群馬ブラスクインテット」というユニットを結成し、数々の公演やリサイタルに出演しています。
ステージに現れてすぐ、立ったまま清々しい演奏を響かせました。バレエ音楽「『ラ・ペリ』のファンファーレ」。さわやかなメロディー、凜とした音色に心が浮き立ちます。
演奏後は松下さんから「3月にサントミューゼで開催した定期演奏会では、たくさんのお客様にお聴きいただき、嬉しく思いました」と、挨拶がありました。
2曲目に演奏したのはマウラーの「3つの小品」。一曲一曲は短いですがそれぞれ曲調が異なり、明るさ、切なさ、朗らかさと豊かな表情を見せます。金管のピュアな音色を堪能できたのも印象的でした。
続いて、メンバーがそれぞれの楽器の特徴を紹介してくれました。トランペット奏者の太田さんは今日、4種類の楽器を持ってきたのだそう。それぞれフォルムが異なり、音色も違うと実物を見せながら解説してくれました。
ホルン奏者の竹村さんは、オーケストラの中でも最も演奏が難しいとされるホルンの音の仕組みについて説明。「プロ野球選手の打率と違って、私たちは10割の確率で正確な音を出さなくてはいけません。プレッシャーに負けないために休日は家庭菜園に没頭して気持ちを切り替えています」と笑いを交えて話しました。
ドビュッシーの名曲「亜麻色の髪の乙女」は、トランペットの音色に他の楽器の音が少しずつ重なっていく様子が美しく、絶妙な和声が心に沁みるようでした。
エヴァルド作曲「金管五重奏曲 第1番より 第3楽章」は温もりを感じる、落ち着いたメロディー。19世紀にロシアで活躍したエヴァルドは、もともと土木技師だったのだそう。当時のロシアでは副業として作曲に取り組む人が多く、彼らの曲を有力な商業家が出版して広める仕組みがあったのだと言います。
イギリスで生まれた曲「ジ・エンターティナー」は親しみあるメロディーにそれぞれの楽器の特徴が伸びやかに表れ、楽しい気分になりました。
続いては日本の作曲家、成田為三による「浜辺の歌」。松下さんは学生時代、イギリスの金管楽器のアンサンブル団体「フィリップ・ジョーンズ・ブラス・アンサンブル」が、来日コンサートのアンコールでこの曲を演奏するのを聴いて感激したのだそう。「それ以来大好きな曲。一度は金管楽器だけで演奏してみたいと思っていました」と話します。
トランペットのゆったりとした美しい旋律に豊かなハーモニーが重なり、じんわりと響きます。一音一音を噛み締めるような、贅沢なひとときでした。
群馬出身の作曲家、岡村陽による群馬をモチーフにした曲のメドレーも。群馬出身の作詞家による曲や、群馬を舞台に作詞された曲が並びます。おなじみの童謡「うさぎとかめ」、モダンにアレンジした民謡も。最後は尾瀬を舞台にした曲「夏の思い出」をじっくりと聴かせました。
最後は名作ミュージカル「ウエスト・サイド・ストーリー」より3曲を演奏。これらは金管五重奏の不朽の名作とされ、今なおさまざまな場所で演奏されています。ドラマティックな展開に胸が躍る「I Feel Pretty」、魅惑的なハーモニーで歌うように聴かせる名曲「Maria」。そして哀愁漂うメロディーが伸びやかに響き合う「Tonight」。金管五重奏が織りなす、ピュアで深みある世界を堪能させてくれました。
演奏後、客席からは大きな拍手が贈られます。アンコールに登場した5人が演奏したのは、名曲「銀河鉄道999」。美しく心躍るハーモニーは、金管楽器の魅力を余すところなく伝えてくれました。
6月に行われる定期演奏会では、オーケストラの形で美しいハーモニーを聴かせてくれるでしょう。当日が楽しみです。
〈プログラム〉
デュカス/「ラ・ペリ」のファンファーレ
マウラー/3つの小品
ドビュッシー/亜麻色の髪の乙女
エヴァルド/金管五重奏曲 第1番より 第3楽章
ジョプリン/ジ・エンターティナー
成田為三/浜辺の歌
岡村陽 編/メドレー群馬
バーンスタイン/「ウエスト・サイド・ストーリー」より「I Feel Pretty」「Maria」「Tonight」
【アンコール】
タケカワユキヒデ/銀河鉄道999