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【レポート】ショパン・ザ・シリーズ Season3《ショパンと楽聖たち》Vol.1 シューベルトとショパン 〜二人の即興曲〜

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ショパン・ザ・シリーズ Season3《ショパンと楽聖たち》

Vol.1 シューベルトとショパン 〜二人の即興曲〜

2023年11月24日(金) 19:00~開演

サントミューゼ小ホール

 

 

世界を目指すピアニストの登竜門・ショパンコンクールで入賞し、日本を代表するピアニストとして国内外で活躍する高橋多佳子さん。過去にショパンの故郷ポーランドで10年以上ピアノの研鑽を積み、彼の作品を時代ごとに取り上げたCDをリリースするなど、高橋さんの演奏活動を語るうえで欠かすことができないのがショパンの存在です。

 

高橋さんの演奏とトークを通してショパンの心を知るリサイタル「ショパン・ザ・シリーズ」は、ショパンと3人の作曲家に注目する全3回のプログラム。今回はシューベルトを取り上げ、ショパンと交互に6つの即興曲を演奏しました。

 

過去にサントミューゼのレジデント・アーティストとして何度も上田を訪れている高橋さんは、「みなさま、ただいま!」と笑顔でステージに登場。客席からは温かな拍手が送られました。

 

10代から才能を開花させたシューベルトは、朝起きると毎日作曲をしていたと言われています。「湧き出るような音楽の泉が、彼の中にあったのでしょうか」と高橋さん。

 

 

特に歌曲を多く遺したシューベルトは、「歌曲王」と呼ばれています。当時はイタリア語で歌を作ることが一般的でしたが、シューベルトはドイツ詩に合わせて曲を書きました。その一つが、ゲーテの詩に曲をつけた作品『魔王』。当時まだ無名だったシューベルトに代わって友人が『魔王』の楽譜を出版社に送ったところ、受け取った出版社は、同じ名前の別の作曲家に問い合わせたそう。するとその作曲家は「こんな駄作は私の作品ではない」と怒ったというエピソードを高橋さんが語ってくれました。

 

『即興曲 第1番 ハ短調 作品90-1』は、「ベートーヴェンの亡くなった年に作られたからか、ベートーヴェンの影響を受けていると思います」と高橋さん。ベートーヴェンの『交響曲 第5番 運命』のモチーフが魂の慟哭のように登場すること、連打するような音が出てくることなどを挙げました。

 

 

そして演奏へ。美しいメロディーが紡がれる中、スクリーンにはシューベルトの自筆譜が映し出されます。中盤に『運命』を思わせるモチーフが現れ、連打する左手の音色が秘めた情熱を感じさせました。

 

一方のショパンは即興曲の演奏が得意でしたが、いざ楽譜にして出版するとなると大変悩み、うまく書けずに鉛筆をへし折ったこともあると伝えられるほど。『即興曲 第1番 変イ長調 作品29』は27歳ごろに書いた作品で、当時彼には16歳の恋人がいたそう。「若者ならではのフレッシュな感覚や即興的な部分があふれた曲です」と高橋さん。

 

きらきらと輝く軽やかなメロディーが、舞踏会の情景を思わせます。哀愁漂う雰囲気も含めて、パリのきらびやかな空気を映し取るかのようでした。

 

続いてはシューベルトとショパンそれぞれの即興曲第3番を。シューベルトの作品が先に作られましたが楽譜の出版に時間がかかったため、ショパンは作曲当時、シューベルトの第3番を聴いたことがなかったと考えられています。しかし偶然にもこの2曲は、同じ変ト長調で作曲されています。始まってすぐに悲しい和音が現れる点も共通点。また2人とも転調を多く使うことが、楽曲の個性と魅力に結びついているのだそう。

 

「2曲とも、よくぞこの世にこれほど美しい曲を生み出してくれたと思うほどです」

 

甘さと儚さを感じるシューベルトの第3番は、夜明けの静けさを思わせます。ショパンの第3番は、軽やかで洒脱。繊細な糸を紡ぐような美しさに、ショパンらしい魅力を感じました。

 

生涯で一度も出会ったことがないと言われるショパンとシューベルト。けれどショパンが25歳の時、出演したコンサートで共演者が歌う『魔王』を聴いた記録が残っているそう。その時のピアノは、あのリストが弾いていたそうです。ショパンはシューベルトの楽曲を聴いて、どんな印象を受けたのでしょうか。

 

最後に弾いたシューベルト作品は、高橋さんが小学生の時に初めて演奏した『即興曲 第2番 変ホ長調 作品90-2』。めくるめくメロディーの美しさ、ダイナミックな転調に引き込まれる素晴らしい曲でした。

 

 

最後に、ショパンが25歳の時に作った『即興曲 第4番 嬰ハ短調 作品66遺作「幻想即興曲」』を。華麗さと凛とした強さをあわせ持つ楽曲です。高橋さんのショパンに対する長年の思いと敬意を感じさせる、体温が乗った素晴らしい演奏でした。

 

 

終演後のサイン会では、多くのお客様と笑顔で言葉を交わしていた高橋さん。幼い頃から高橋さんのコンサートに通っているという小学生や、ピアノを習っている中学生には「今は何を弾いているの?」と気さくに話しかけていました。

 

高橋さんの視点を通して、シューベルトとショパンの共通点と個性を目と耳で感じることができたリサイタル。第2回、第3回も楽しみです。

 

〈プログラム〉

シューベルト:即興曲 第1番 ハ短調 作品90-1

ショパン:即興曲 第1番 変イ長調 作品29

シューベルト:即興曲 第3番 変ト長調 作品90-3

ショパン:即興曲 第3番 変ト長調 作品51

シューベルト:即興曲 第2番 変ホ長調 作品90-2

ショパン:即興曲 第4番 嬰ハ短調 作品66遺作「幻想即興曲」