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【レポート】Altneu[アルトノイ](島地保武+酒井はな)&岡本優 コンテンポラリーダンス公演『杜子春』

みる・きく
会場
サントミューゼ

Altneu[アルトノイ](島地保武+酒井はな)&岡本優

コンテンポラリーダンス公演『杜子春』

2022年10月1日(土)・2日(日)15:00~16:00

サントミューゼ 小ホール

 


 

昨年に引き続き、現代ダンスの名手である島地保武さんと古典バレエの名手である酒井はなさんとで構成されるダンスユニット「Altneu(アルトノイ)」による新作公演『杜子春』が行われました。

 

今回は、バレエ経験を持つコンテンポラリーダンス界気鋭の若手ダンサー・岡本優さんを迎え、芥川龍之介の『杜子春』を原作にクリエーションを重ねました。

 

 

冒頭は、アルトノイ・スペシャルデュエットとして、酒井さんと島地さんが踊ります。

ゆっくり暗転した舞台に青白い照明が灯り、タンクトップとパンツ姿のふたりが登場。

 

クラシックギターによるラヴェル『亡き王女のためのパヴァーヌ』の音楽に合わせ、シンプルな構成ながら華麗に踊る2人。

酒井さんの片手で何かをつかもうとするようなポーズで暗転し、客席から拍手が起こります。

 

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その後、床に貼られた黒いテープを島地さんがはがしていくと、一部隠れていた白いテープが登場。

そして取っ手のついた黒くて丸い小道具が3本、舞台の下手側にそっと置かれます。

 

舞台上には4本の2連になった蛍光灯やシンバルが吊り下げられており、客席部の天井にはミラーボールが設置されています。

 

白いテープで象られた舞台面や、一ノ松~三ノ松のように配置された3本の小道具は、さながら能の舞台のよう。

これからはじまるであろう『杜子春』に期待が膨らみます。

 

 

「お幕…」という掛け声とともに、岡本さん(杜子春)が舞台に登場。

黒くて丸い小道具をくるっと反転させると、それは鏡であることがわかります。

 

岡本さんによるソロの舞踊後、床に横たわり虚ろな表情で眠りにつく動作をするやいなや、驚いて「はっ!」と叫びながら目覚めると同時に、蛍光灯が激しく明滅します。

 

 

その後すぐに島地さん(仙人)が「お幕ぅ!!」とお腹から大きな声を発して登場。

後光のような照明に照らされながら、神秘的な音楽とともに舞台にしずしずと摺り足で現れます。

翁のように長いあごひげをたくわえ、厳かな雰囲気を醸し出すその姿は、まさに仙人のよう。

 

 

その後島地さんの舞うようなソロから、岡本さんとのデュエットへ。

交わるような、交わらないような微妙な間合いでふたりの体が交錯します。

白い衣装の中で体のシルエットがライトによってぼんやり浮かび上がる様子が動きとあいまって、とても美しく見えます。

 

その後、岡本さんのソロから島地さんとのデュエットまで、微妙に変化を加えながらも一連の流れが都合3回繰り返されます。

金持ちの息子だった杜子春が落ちぶれ、老人のお告げで贅沢三昧の暮らしをするも、再び落ちぶれて…といった物語を連想させます。

 

 

次のシーンでは、銅鑼を叩くような大きなバチを両肩に担いだ島地さん(仙人)が、「今日はやや曇っているなー。西も東も曇っているなー」とセリフを口にし、小噺が続きます。

 

すると急に「ここまでしかできていないんです…物まねで40分続けていくんでいいですか?」と島地さんが話しかけ、客席を笑わせます。

素なのか、これも「杜子春」の一幕なのかが判然としないまま、島地さんの独特でユーモアな世界観で舞台は続いていきます。

 

 

 

その後、島地さんが岡本さんに「声を、出しては、いけないぞ」と呼びかけ、吊り下げられたシンバルをバチで打つと、「お幕」と発して黒いトウシューズ姿の酒井さんが長い棒を持って現れました。

 

バロック調の音楽が流れ、赤と青の強い照明で照らされた舞台上で、酒井さんは棒を駆使しながら、バレエの技術を加えて力強くも華麗に踊ります。

 

 

続いておどろおどろしい音楽が大音量で流れはじめ、白い大きな布をかぶった島地さんが現れます。

酒井さんは岡本さんに迫った後、大きな布を旗のようにつけたポールを持って再び現れ、舞台を走り回ります。

 

 

蛇や軍臣、虎、物乞いなどに扮した島地さんと酒井さんが、岡本さんに向かって声を出させようとする恐怖と緊張感。

しかしそれは音楽とともに突如途切れ、束の間の静寂が訪れます。

 

 

舞台にはマイクスタンドが置かれ、ミラーボールが回る中、岡本さんが「上唇、下唇。でも心はいつもうるさいの」と独唱をはじめます。

心地の良いメロウな音楽とともに、ラップを交えながらのびやかに歌う声が広がり、杜子春の修行を軽やかに表現します。

 

 

歌唱後、岡本さんがはけると、物々しい音楽とともに酒井さんと島地さん(閻魔)が大・中・小の鏡を持ちながらキビキビと力強く踊ります。

座ってあとずさりながら出てきた岡本さんに対し、閻魔が鏡を持って迫り、恐怖に慄く杜子春の表情を写したまま去っていきます。

 

 

舞台には座って腕を上下に組む岡本さんだけが残り、暫しの静寂。

そこに島地さん(杜子春の父)と酒井さん(杜子春の母)が登場。

身体の痛みにこらえながら、2人は組体操のように独特な体勢を変化させていきます。

 

 

その後岡本さんとともに、儚くも透明感のある音楽に合わせてさまざまに踊ります。

まるで父母の杜子春への慈みと母を想う杜子春の愛が交錯しているようで、クライマックスへと向かう雰囲気に場が包まれます。

 

 

杜子春の父が舞台を去り、杜子春の母は悲しそうな表情で、後ろ歩きで舞台からいなくなります。

苦しみながら、床を這うように進む杜子春。

 

 

舞台の中心で杜子春は力尽き、ゆっくり床に右頬をつけて眠るように目を閉じると、島地さん(仙人)が登場。

杜子春に近づきそっと手を向け、照明が徐々に暗転し、終演。

 

 

客席から大きな拍手が沸き、繰り返されるカーテンコール。

3人は手を繋ぎ、満ち足りた笑顔で応えていました。

 

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終演後に、お客様に感想を伺いました。

 

コンテンポラリーダンスが好きという上田市在住の女性は、「ダンスの構成が興味深くて、クリエーションでいろいろ試みた時間も含めて伝わってくるようでした。足さばきの音も聞こえて、生身の人間が踊る姿をその場で共有できることも面白さを感じました」と、余韻を味わいながら話してくれました。

 

バレエとコンテンポラリーダンスを習っている小学校5年生の女の子は、お母様と一緒に来たそうです。「昨年のアルトノイのワークショップにも参加しました。ワークショップも公演も、とても勉強になりました」。

 

老若男女、様々な方が“文学×コンテンポラリーダンス”の魅力や可能性を感じる公演となりました。