サントミューゼ(上田市交流文化芸術センター・上田市立美術館) おかげさまでサントミューゼは10周年

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【レポート】Chopin The Series ~Season2~ 《ショパンと楽聖たち》 Vol.2 モーツァルトとショパン ~天才クラヴィーア奏者の饗演~

みる・きく
会場
サントミューゼ

2022年11月25日(金) 19:00開演 サントミューゼ小ホール

ピアノ:高橋多佳子 ゲスト:下田幸二

 

ピアニスト高橋多佳子さんの全3回、各60分のコンサートシリーズ「Chopin The Series」。好評だった昨年に続き、今年度はSeason2《ショパンと楽聖たち》というテーマで8月、11月、12月に開催されます。今回は、モーツァルトとショパンに焦点をあてたVol.2の様子をレポートします。

 

舞台には2台のグランドピアノが並び、客席には多くのお客様が。期待の高さが伺えます。

 

登場して一礼した高橋さんは、モーツァルトの「トルコ行進曲」からスタートします。スクリーンに、モーツァルトの生まれ故郷・ドイツのザルツブルクの街並みが投影されます。

 

演奏が終わると満面の笑みの高橋さんが挨拶をし、早速、本日のゲスト・下田幸二さんを呼びます。下田さんはピアニスト、音楽評論家で、高橋さんのお連れ合いでもあります。「昨年はちょうどショパン・コンクールの年で、その話をしましたね。また上田に来られて嬉しいです」という下田さん。おふたりにとっては、サントミューゼが全国で一番好きなホールなのだとか。お客様は拍手で応えます。

 

「モーツァルトとショパンは、時代的には接点はないんですが、若き日のショパンはモーツァルトのオペラ『ドン・ジョヴァンニ』の変奏曲をつくっていますね。天才として名高かったモーツァルトに、ショパンも憧れたのでしょう」と下田さん。高橋さんが、その曲の冒頭を弾いてくれました。

 

スクリーンに当時の新聞と「帽子をとりたまえ、諸君、天才だ」という文字が映ります。これはシューマンがこの曲を聴いて書いた評論の一節で、実際に1829年にウィーンで演奏されて大喝采を浴びました。

 

またショパンは、モーツァルトに師事したフンメルを尊敬して曲を弾くというかたちでも関わりがありました。フンメルとショパンの協奏曲には似たところがたくさんあるそうで、モーツァルトとの間接的な関わりはとても興味深いものがあります。

 

続いて、モーツァルトとショパンの協奏曲です。高橋さんは「どちらの曲も天上の音楽のように美しいのですが、中間部が激しいという共通点があります」と言います。モーツァルトの「ピアノ協奏曲 ニ短調」から第2楽章「ロマンツェ」は、下田さんがオーケストラパートを弾いて2台で共演します。ショパンの「ピアノ協奏曲 第2番 へ短調」から第2楽章「ラルゲット」は、ショパン19歳の時の“初恋の曲”。当時、熱を上げていたコンスタンツィア・グワトコフスカへの思いを込めたコンチェルトです。

 

 

演奏が終わると、お二人は互いに拍手をし合い、客席の温かな笑い声を誘っていました。高橋さんは「モーツァルトもショパンもコンチェルトはとても難しいんです。特に単音を保つのが大変で、むしろオクターヴや和音のほうが、安定感があります」と分析します。

 

モーツァルトについて、ショパンは「今日ではモーツァルトを弾けるのはひとりしかいない。(カミーユ・)プレイエル氏(注:プレイエルはフランスのピアノメーカー)だけだ。一緒に弾くとまるでこちらがレッスンしてもらっているようだ」という言葉も残していると下田さんは言います。

 

下田さんが退場し、最後の曲へ。ショパンの「アンダンテ・スピアナートと華麗なる大ポロネーズ」です。元々は管弦楽とピアノによる作品ですが、ピアノ独奏で演奏される機会が多い曲です。前半の“滑らかなアンダンテ”は、美しいアルペジオが印象的。途中マズルカが挿入され、後半は非常に華やかです。高橋さんがかつてショパン・コンクールで弾いた曲でもあり、これまで幾度も演奏を重ねてきたことが伺える熱のこもった演奏でした。

 

大きな拍手はアンコールを求める手拍子に変わります。再度下田さんも登場し、ショパンのお父さんと同じフランス人フォーレの組曲「ドリー」から「ドリーの庭」を連弾して公演は終了となりました。

 

 

お客様の感想です。

サントミューゼにたびたび足を運んでいるという男性は、「素晴らしかったです。お二人のお話がとても明快だったのもよかったです。すっかり高橋さんのファンになりました」と笑顔で答えてくれました。

女性のお二人組は、昨年も聴きに来られたそうです。「特に今年は良かったです。ご夫婦の雰囲気と、上田を気に入ってくれているのも嬉しいです。高橋さんにはレギュラーで上田に来てほしいです。私もレギュラーで聴きに来ます!」と、来年へのリクエストが飛び出しました。

 

 

【プログラム】

モーツァルト:ピアノ・ソナタ イ長調 K.331より第3楽章「トルコ行進曲」

モーツァルト:ピアノ協奏曲 ニ短調 K.466より第2楽章「ロマンツェ」

ショパン:ピアノ協奏曲 第2番 ヘ短調 作品21より第2楽章「ラルゲット」

ショパン:アンダンテ・スピアナートと華麗なる大ポロネーズ 作品22

 

【アンコール】

フォーレ:組曲「ドリー」より「ドリーの庭」(連弾)