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【レポート】神谷未穂 ヴァイオリン・リサイタル 珠玉のヴァイオリン・ソナタ ― ロマン派から印象派へ ―

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会場
サントミューゼ

神谷未穂 ヴァイオリン・リサイタル 珠玉のヴァイオリン・ソナタ ― ロマン派から印象派へ ―

12月2日(金) 19:00~ at サントミューゼ小ホール

 

国内外のオーケストラと多数共演し、ソリスト、室内楽奏者としても多彩な演奏で活躍するヴァイオリニストの神谷未穂さん。現在は仙台フィルハーモニー管弦楽団、千葉交響楽団(特任)と横浜シンフォニエッタでコンサートマスターを務めています。

 

この日のリサイタルは、ピアニストの望月優芽子さんと一緒に真っ白な衣装で登場。最初に演奏したのは、ロベルト・シューマンによる「3つのロマンスOp.94」です。

 

第1曲「速くなく」 は伸びやかに美しく、第2曲「素朴に、心より」は喜びや悲しみなどさまざまな感情を呼び起こす豊かな響き。第3曲「速くなく」は叙情的で、たなびく煙のように繊細な響きが印象的でした。

 

演奏後、挨拶をしたお二人。

 

「上田で演奏活動を行うのは4年ぶり3回目。オリンピックのようですね!(笑) 今日のリサイタルのテーマはロマンスです。1曲目はタイトルからロマンス、でしたね」(神谷さん)

 

 

続く「雨の歌」はブラームスの作品です。ヴァイオリンとピアノのハーモニーがしみじみと美しく、音に乗せて互いにロマンスを伝え合うかのよう。時にロマンチックに、時に緊張感を持って情緒豊かに響きました。

 

 

 

 

続いては、ロベルト・シューマンとブラームス、アルベルト・ディートリヒという3人の作曲家によって作られた「F.A.Eソナタ」からブラームスによるスケルツォを。「ブラームスは『自由に、けれど楽しく』という気持ちでこの曲を作っています」と神谷さんが話した言葉通り、ファンファーレのように明るく華やかなメロディー。季節が移ろうように表情を変えていく音色が心に残りました。

 

休憩を挟んで後半、華やかな衣装に着替えて登場したお二人。「前半も後半も新しいドレスなんです。私たちがどれだけ上田が好きか伝わりますよね!」と笑う神谷さん。

 

「ゴリウォッグのケークウォーク」は、ドビュッシーが娘が大切にしていた黒人の子供の人形「ゴリウォッグ」からイメージして作った曲です。実際に人形のイラストを描いたパネルで紹介してくれました。楽しく弾むようなリズム、甘やかなメロディーと、くるくると表情を変える曲調で楽しませます。

 

 

続いては、11月のアナリーゼワークショップでも取り上げたドビュッシーのヴァイオリン・ソナタの登場です。

 

「ドビュッシーの人生最後の作品であり、想いがこもった曲です。彼はフランス人の多くが最も尊敬する作曲家。この曲は印象派の絵画とも印象が重なります」(神谷さん、望月さん)

 

オリエンタルな表情や、張り詰めた美しさをイメージさせる第1楽章。スリリングなリズムが印象的な第2楽章。第3楽章は、不穏な空気と美しい表情がせめぎ合う様子が心を揺らしました。

 

最後はポーランドの作曲家、シマノフスキによる「夜想曲とタランテラOp.28」。タランテラはスペインの踊りで、「毒グモに刺されてのたうち回るような曲です」と神谷さん。

 

妖艶で美しいメロディー。美しく高音が響き、かと思えば低音がうごめくように響いてと、不思議な感覚で魅了します。多彩な音世界とリズムに心を奪われました。

 

すべての演奏を終えた後、やまない拍手に応えてステージに登場したお二人は、アンコールに「タイスの瞑想曲」を披露。美しい光を感じるような演奏に、拍手が鳴り止みません。さらにもう1曲、演奏してくれました。

 

「上田に来られて幸せです!最後はヴァイオリンで、鳥の声を披露したいと思います」(神谷さん)

 

そう話して演奏したのは「ひばり」。弓の細かな動きで、本物の鳥の声のような多彩で楽しい音色を存分に聴かせてくれました。美しく重なり合うヴァイオリンとピアノの音色で、心が温かになるひと夜でした。

 

 

【プログラム】

R.シューマン:3つのロマンスOp.94

J.ブラームス:ピアノとヴァイオリンのためのソナタ 第1番 ト長調 「雨の歌」Op.78

J.ブラームス:「F.A.Eソナタ」より第3楽章 スケルツォ

C.ドビュッシー:「子どもの領分」より “ゴリウォッグのケークウォーク”

C.ドビュッシー:ヴァイオリン・ソナタ

K.シマノフスキ:夜想曲とタランテラOp.28

 

〈アンコール〉

マスネ:タイスの瞑想曲

ディニク:ひばり