サントミューゼ(上田市交流文化芸術センター・上田市立美術館) おかげさまでサントミューゼは10周年

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【レポート】ニューイヤーコンサート NHK交響楽団 上田公演

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サントミューゼ

【レポート】ニューイヤーコンサート NHK交響楽団 上田公演

1月9日(月・祝)15:00開演 サントミューゼ大ホール

 

2023年の幕が開いて間もない1月9日、国内最高峰のオーケストラとの呼び声も高いNHK交響楽団のニューイヤーコンサートがサントミューゼで開かれました。

 

この日のプログラムの中心は「2人のシュトラウス」。ドイツ出身のリヒャルト・シュトラウス、そしてオーストリア出身のヨハン・シュトラウス2世です。

指揮は、国内外で活躍する沼尻竜典さん。第二部ではソプラノの砂川涼子さんとテノールの宮里直樹さんを迎え、オペレッタの美しい世界で魅了しました。

 

ほぼ満席の客席には、開演前から期待と高揚の空気が満ちています。和服姿のお客様も見受けられました。

 

いよいよ開演。第一部の最初に演奏したのは、リヒャルト・シュトラウスが78歳の時に手がけた最後のオペラ「カプリッチョ」より「弦楽六重奏(弦楽合奏版)」です。弦楽合奏ならではのピュアな音色、透明感あふれるハーモニーの一体感に魅了されます。

 

 

 

管打楽器も加わり披露したのは、同じくリヒャルト・シュトラウスの歌劇「ばらの騎士」組曲です。この歌劇は、結婚前、男性が女性に使者を使って銀のばらを贈るフィクションの儀式「ばらの騎士」をもとに描かれた作品。

 

前奏曲は、若い貴族と不倫の関係にある元帥夫人の官能の夜を描きます。トランペットの勇壮な音色やティンパニの躍動に胸が高鳴り、華麗な金管楽器の音色も印象的でした。

第2幕は絢爛なワルツ。重厚な響きと華やかさで引きつけます。この時代はまだワルツが一般的ではありませんでしたが、シュトラウスはあえて取り入れたのだそう。

そして第3幕。繊細なハーモニー、躍動的な明るいワルツ。登場人物の思いが入り乱れる最後の三重唱は、シュトラウスが「自分の葬儀で演奏するように」と遺言を残した有名な部分です。

演奏後は、大きな拍手がステージを包みました。

 

休憩後の第二部は、ヨハン・シュトラウス2世によるオペレッタ2作品からスタート。シュトラウス2世の代表作である喜歌劇「こうもり」序曲は、喜歌劇全体の聴きどころをつなぎ合わせた名曲で、単独で演奏されることが多い作品です。

 

オーケストラの全奏による有名なフレーズから華々しくスタート。ヴァイオリンの優美な調べに続いて、舞踏会の様子が目に浮かぶような活気あるワルツへ。マエストロも体を揺らし、リズミカルに指揮をします。

 

 

軽やかでありながら品格を携えた、素晴らしい世界でした。

 

続いてテノールの宮里直樹さんを迎え、喜歌劇「ヴェネツィアの一夜」より「さあゴンドラにお乗り」。女好きのウルビーノ公爵に仕える理髪師カラメッロがゴンドラ漕ぎとなり、女性を船に乗せる舟唄です。

冒頭から、迫力の歌声でホールを包む宮里さん。オーケストラの音色と一体に、力強さと哀愁をあわせ持つ歌を響かせました。

 

 

喜歌劇 「ジュディッタ」より「私の唇は熱いキスをする」には、ソプラノの砂川涼子さんが登場しました。陸軍大尉と人妻ジュディッタの恋を描いた作品で、この曲はナイト・クラブの歌手となったジュディッタが歌います。

体一つで、こんなにも奥ゆきある美しい響きを生み出せるのかと驚くほど。歌だけでなく、豊かな表情、フラメンコのようなダンスを踊る仕草など、全身でジュディッタを表現します。

 

 

ワルツ「天体の音楽」はシュトラウス2世の弟、ヨーゼフ・シュトラウスの代表作の一つ。悠久の宇宙を思わせる、ゆったりとしたハーモニーが印象的でした。

 

喜歌劇「ほほえみの国」より「君こそわが心のすべて」は、宮里さんの雄大な歌声から深い愛情が伝わってきました。演奏後、オーケストラの皆さんからも大きな拍手が。砂川さんが歌うジーツィンスキの「ウィーン、わが夢の街」も、甘美な旋律で魅了します。

 

そして、言わずと知れたシュトラウス2世によるワルツの名曲「美しく青きドナウ」。美しく、清々しく、ドナウ川と森を思わせる雄大さをもって。力強さと優雅さが溶け合い、心が凛とするようです。新しい年の始まりにふさわしい世界を見せてくれました。
プログラムの最後は、レハールの喜歌劇「メリー・ウィドー」より二重唱「とざした唇に」。ステージには砂川さんと宮里さんが揃って登場し、愛の二重唱を情緒豊かに響かせました。二人の声とオーケストラが描き出す、壮大で美しい世界。ホール全体が煌めきに包まれるような感動のひとときでした。

 

 

演奏後は拍手が一向に鳴りやまず、何度もカーテンコールが行われました。砂川さんと宮里さんも腕を組んで登場し、満面の笑顔で客席に感謝を伝えます。

 

 

終演後、上田市内からお越しのお客様に感想を聞きました。「『ばらの騎士』が素晴らしかったですが、すべて良かったです。指揮者の方も楽しそうで、あんなふうに指揮をする方もいるんだなと思いましたね。2023年が良い1年になりそうです」と話してくれました。

 

〈プログラム〉

R.シュトラウス/歌劇「カプリッチョ」より 弦楽六重奏(弦楽合奏版)
R.シュトラウス/歌劇「ばらの騎士」組曲
〈休憩〉

J.シュトラウス2世/喜歌劇「こうもり」 序曲
J.シュトラウス2世/喜歌劇「ヴェネチアの一夜」―「さあゴンドラにお乗り」
レハール/喜歌劇 「ジュディッタ」-「私の唇は熱いキスをする」
ヨーゼフ・シュトラウス/ワルツ「天体の音楽」
レハール/喜歌劇「ほほえみの国」―「君こそわが心のすべて」
ジーツィンスキ/ウィーン、わが夢の街
J.シュトラウス2世/ワルツ「美しく青きドナウ」
レハール/喜歌劇「メリー・ウィドー」― 二重唱「とざした唇に」