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【レポート】第1回 サントミューゼ新進演奏家リサイタル 優秀賞 小林公哉、小林純菜 ジョイント・リサイタル 

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第1回 サントミューゼ新進演奏家リサイタル 優秀賞 小林公哉、小林純菜 ジョイント・リサイタル

2023年1月22日(日) 14:00開演 サントミューゼ小ホール

2021年に第1回サントミューゼ新進演奏家リサイタル選考会が開催されました。優秀賞を受賞した、東信エリアにゆかりのある若きアーティスト・小林公哉さん(打楽器)と小林純菜さん(サクソフォン)によるジョイント・リサイタルがこのたび実現しました。

 

公哉さんは上田市真田町出身で現在東京藝術大学大学院修士に在学中、純菜さんは東御市出身で桐朋学園大学音楽学部研究科1年に在籍中です。ピアノは大嶋千暁さんです。

 

1曲目は、武満徹が編曲した「ギターのための12の歌」から、ビートルズの名曲「イエスタデイ」と「ヘイ・ジュード」です。ポピュラーソングを技巧的にアレンジしており、ヴィブラフォンの独特な響きと、鋭さも併せ持つソプラノサクソフォンの温かな音が、耳に親しんだメロディをまったく違う印象で届けてくれます。

 

 

ここからは純菜さんのソロへ。まずは「Fantaisie」です。アルトサックスに持ち替えた純菜さんは、「19世紀のフルート奏者であり作曲家でもあるドゥメルスマンは、サクソフォンを発明したアドルフ・サックスとも親交があったそうです」と解説します。スピード感ある華やかな演奏で一気に観客を引き込みます。

 

 

続いては、サクソフォン奏者ゴードン・トゥドールが2010年に書いた「Quarter Tone Waltz」。タイトル通り、一般的には気持ち悪く感じられる4分音(半音の2分の1の音)をうまく取り入れた意欲作で、純菜さんは「スラップタンギング、重音などサクソフォンのいろんな奏法が入っています」と言います。

 

純菜さんの3曲目は、サクソフォン奏者須川展也氏からの依頼で石川亮太が作曲した「日本民謡による狂詩曲」。ドラマティックな導入から、サクソフォンの音域の広さを生かしつつ日本民謡のフレーズが散りばめられていきます。トーンホール(音孔)を押さえる時に鳴る音はまるでハンドクラップのよう。「日本人に生まれてよかったと感じる、お気に入りの曲です」という純菜さんの心と共鳴するような演奏です。

 

 

20分の休憩をはさんで、今度は公哉さんのソロに替わります。

 

舞台にはスネアドラムと大きなスピーカーがセットされています。カナダのギタリスト・作曲家であるアンドリュー・スタニランドの「Orion Constellation Theory for snare drum and digital soundfiles」は、音声ファイルを流しながらスネアドラムを独奏する“ライブ・エレクトロニクス”というジャンルの曲です。ドラムスティック、毛糸を巻いたマレット、ロッド、ワイヤーブラシなど多彩なバチを使います。

 

ソロ2曲目は、公哉さんが大学3年生の時に同級生に依頼したヴィブラフォンのための委嘱作品です。「美しく、和声や調性のある作品です」と言う通り、ヴィブラフォンのあるきらきらとした魅力を引き出した佳作です。

 

 

続いては、こおろぎ社製の5オクターブ・マリンバでマリンバ奏者エリック・サミュの「Caméléon」を演奏します。タイトル通りくるくると変化していきます。

 

現代音楽作曲家・北爪道夫の「《サイド・バイ・サイド》打楽器ソロのための」は、使う楽器は“6つの膜鳴楽器とペダル付きバスドラム”とだけ指定されています。膜鳴楽器は張られた皮を打ち鳴らす楽器のことで、今回はボンゴ2つ、コンガ3つ、トムが並びます。等間隔で小さく打ち鳴らされるコンガは、不規則なリズムを差し挟みながら徐々に大きくなり、気がつくと心の奥を揺さぶられるようなビートの虜になっていました。

 

 

最後はふたりで「マリンバとアルト・サクソフォーンのためのディヴェルティメント」を演奏。“嬉遊曲”を意味するディヴェルティメントの通り、遊び心に満ちています。珍しい組み合わせながら、両者の魅力を存分に味わえます。

 

 

アンコールは武満徹「ギターのための12の歌より 星の世界」で、優しい響きが会場を包みます。「今後も長野でたくさん演奏会をやっていきたいです」というおふたりに、温かい拍手が送られました。

 

 

終演後のロビーでは多くのお客様がおふたりに声を掛けたり記念撮影をしたりと、晴れやかな空気が漂います。

息子さんが公哉さんの高校の同級生というご夫婦は、「打楽器だけでもバラエティに富んでいて面白かったです。電子音が入る曲も初めてでしたが、聞きやすかったです。若い人が活躍しているのは嬉しいですね」と演奏会を楽しまれたようです。吹奏楽部でサクソフォンを担当している中学生は、「すごかったです。特にハイトーンが素晴らしくて、力強かったです」と話してくれました。

 

【プログラム】

  • ヴィブラフォン&サクソフォン

武満徹/ギターのための12の歌より イエスタデイ(レノン/マッカートニー)、ヘイ・ジュード(レノン/マッカートニー)

  • サクソフォンソロ

ジュール・ドゥメルスマン/Fantaisie

ゴードン・トゥドール/Quarter Tone Waltz

石川亮太/日本民謡による狂詩曲

  • 打楽器ソロ

アンドリュー・スタニランド/Orion Constellation Theory for snare drum and digital soundfiles

中瀬絢音/TELEIDOSCOPE02 for Vibraphone

エリック・サミュ/Caméléon

北爪道夫/《サイド・バイ・サイド》打楽器ソロのための

  • マリンバ&サクソフォン

湯山昭/マリンバとアルト・サクソフォーンのためのディヴェルティメント

 

【アンコール】

  • ヴィブラフォン&サクソフォン

武満徹/ギターのための12の歌より「星の世界」