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【レポート】アナリーゼワークショップ Vol.65~アーバン サクソフォン カルテット(サクソフォン四重奏)

アナリーゼワークショップ

アナリーゼワークショップ Vol.65~アーバン サクソフォン カルテット(サクソフォン四重奏)

2023年7月6日(木) 19:00~20:00 サントミューゼ大スタジオ

 

 

今年度のレジデント・アーティスト「アーバン サクソフォン カルテット」が、7月22日のリサイタル曲目を扱うアナリーゼ・ワークショップをサントミューゼ大スタジオで開催しました。

 

短い演奏の後にまずはメンバー紹介から。中村優香さん(ソプラノ)、椿義治さん(テナー)、中村賢太郎さん(バリトン)、そして小林浩子さん(アルト)の男女混成カルテットです。

 

 

プレゼンテーション資料が画面に映され、まずは楽器としてのサクソフォンについてレクチャーから。日本でいうと江戸時代の終わり、1840年代にアドルフ・サックスというベルギー人が発明した木管楽器。クラリネットやオーボエと同じ葦の仲間からつくるリードを震わせて音を出します。

 

 

賢太郎さんが、リードに模した厚紙をマウスピースに添えて実演してくれました。息を吹き込むだけで細かく振動することが分かります。比較的歴史が浅いにも関わらず広く普及しているのは、金管楽器の伝達性の高さと木管楽器の操作性を兼ね備えた“いいとこどり”の楽器だからと言えそうです。

 

 

小林さんにバトンタッチして、リサイタルのメインプログラムであるデイヴィッド・マスランカの『マウンテン・ロード』の楽曲分析に入っていきます。マスランカは、特に吹奏楽の世界で著名なアメリカ人作曲家です。歴史、心理学、人類学などの本を好む読書家で、寡黙な人だったそうです。

 

 

そんなマスランカの『マウンテン・ロード』には、2つの特徴があると言います。「ひとつは無意識(潜在意識)の世界、もうひとつはバッハのコラール(讃美歌)です」。

 

心理学に関心が高く、とりわけ「アクティブ・イマジネーション」というユング派の心理療法の手法を使って、無意識から湧き上がってくるものを曲にしていました。この曲も、山道にいる夢を見たことが端緒になっています。

 

そして、バッハのコラールの4つの声部を、順番に歌ってから作曲に入っていました。マスランカにとってコラールは潜在意識にアクセスするための“扉”だったのです。6つの楽章からなるこの曲には、コラール前奏曲「人はみな死すべきもの」と「我は何処にか逃れ行くべき」から、マスランカ流に引用されています。

プロジェクターで楽譜を映し出しながら、椿さんがバッハのコラールがどのように引用されているか、解説してくれます。第1楽章の序曲は躍動感あるメロディの中に、コラールが1音ずつ断片的に散りばめられています。「コラールが聞こえましたか?」と尋ねると、数人のお客様が手を挙げました。

 

 

第3楽章の「アリア」は、バリトンはお休み。「休んでいる間、何を考えているのか聞いてみましょう」と話を振られた賢太郎さんは、「次の第4楽章はバリトンがアルトとともに大事な役割を担うので、そのことを考えながら音楽に身を浸しています」と答えてくれました。

 

第4楽章「コラール」は、バリトンとアルトの鋭く重いユニゾンではじまり、ppp(ピアニッシシモ)で「人はみな死すべきもの」を短調にしたテナーのメロディが入ってきます。そして、“quiet dance”と指示されているソプラノのメロディで異世界へ。

 

「アリア」の第5楽章はソプラノが“alone on a mountain”を表現し、アルト、テナー、バリトンは息継ぎが分からないように吹く循環呼吸法によるロングトーンを奏でます。第6楽章「終章」は前半、疾走感のある導入から4人がひとつの音にたどり着き、最後はコラールが4回出てきて、マスランカの言う“扉”へ。

 

死生観や精神世界との共鳴が色濃く反映された曲は、死は終わりではなく変化であり、次の世界への移行を予感させて終わります。『マウンテン・ロード』という、ともするとのんびりしたイメージを喚起するタイトルからは想像もつかない、深い精神性と楽曲としての面白さに目を見開かされました。

 

4人の美しいハーモニーに、リサイタルへの期待が高まります。