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【レポート】Co.山田うん 市民参加型創造公演 レプリゼント

みる・きく

Co.山田うん 市民参加型創造公演「レプリゼント」
2023年10月15日(日)14:00開演
サントミューゼ 大スタジオ

9月のダンスカンパニー「Co.山田うん」ワークショップから約1か月後、秋深まる上田でコンテンポラリーダンスの市民参加型創造公演『レプリゼント』が開催されました。

振付・演出・出演は山口将太朗さん、ダンサーとして河内優太郎さん、田中朝子さん、山崎眞結さんがカンパニーから出演します。6名の一般参加者とともに、10日かけてダンスクリエイションを行いました。

客席は小学校でのワークショップに参加した小学生、参加者の知人や家族、ダンスに関心のある一般のお客様が集まっています。ステージの上には、上田市内で障害者福祉事業や文化事業を展開している「NPO法人リベルテ」のメンバーが制作した、ツリーや窓のようなオブジェが吊り下がっています。

暗転した空間に音楽が流れ始めます。両腕を魚の口のように動かしている女性が登場しました。続いて、それぞれ特徴的な動きをする女性が舞台に現れます。円陣を組み、ツリーをゆっくり見上げる参加者の姿は、今回のテーマ「レプリゼント(~を象徴する、~を代表する)」の通り、ぞれぞれの人や土地の垣根を超えて絆を結び、上田という場所を代表するかのような強い思いを感じます。

円が崩れて波のように動く途中から、Co.山田うんのダンサー4名も合流しました。河内さんと薄緑のブラウスを着た女性がそれぞれソロを踊り、その間に他の人たちはイモムシのような隊列を組んで小刻みに移動。先頭の女性は、手を大きく優雅に羽ばたかせています。

ソロを踊っていた女性と隊列が向き合います。緊張感のある音楽に変わり、ワークショップで取り上げた変則的な鬼ごっこを想起させる動きへ。途中で人が入れ替わりながらイモムシは回転し、最後尾に人がぶつかることで分裂して、回りながらバラバラになっていきます。

ユニゾンで回転、立位から側臥位、ふたたび立位へと変化し、ステージの両端に置いてあったイスや机を移動させながら次のシーンへ移ります。

イスや机を使いながら目まぐるしく変わる動きに注視していると、4つの机を一列に並べたところに水色のワンピースを着た女性が乗っていました。道のようになった机を、4人で息を合わせて回転させると、客席に対して垂直に伸びるランウェイが出現。机の上の女性は浮遊感のある動きで、この世ならざる雰囲気を醸し出します。

ノイズとピアノの音楽にのせて、机の上にいた女性と河内さんの、人形と操る人を連想させるどこかユーモラスなデュエットが繰り広げられます。大机には動かずに座っているふたり、その前には大きな窓枠のようなオブジェを支えるふたりがいます。ポーズをつくらせても崩れることを繰り返す人形への苛立ちがピークに達したところで、演劇的なシーンへ移っていきます。

ひとり残ったロングヘアの女性が、机に体を叩きつけんばかりにソロを踊り、こと切れるように突っ伏します。ピアノ曲が流れ、弔いの天使のような隊列が登場し、田中さんと山崎さんのデュエットへ。ふたりの鍛錬された体から繰り出される踊りが、空気を一変させます。

机に突っ伏した女性が起き上がって歩きはじめると、4人のダンサーがステージを縦横無尽に駆け巡って踊ります。歩く人が3人に増えて、静と動のコントラストが一層際立ってきます。

ユニゾンから石のように固まっていく一群と対照的に、白いパンツスタイルの女性が踊ります。そして希望を感じる力強い旋律に切り替わって次のシーンへ。ひとりずつ床に倒れていき、ひとり残された女性が踊ります。

ワークショップで行ったペアのムーブで徐々に動きを戻し、1か所に集まっていきます。ひとつの生命体のように見えたと思ったらさらに形を変え、縦一列の流れるようなカノンから全員が手を繋ぎます。端の人の動きが連続して波及していく様は大波のよう。両端の人が手を繋いだ円は、柔らかく形を変えながらツリーのもとへ。冒頭のシーンのように全員が視線を上に移したところで暗転し、終幕となりました。

10名全員でカーテンコールを受けます。山口さんがクリエイションの中で繰り返し伝えていた「攻めの優しさで」「自分を飽きさせないように」という言葉が参加者ひとりひとりの動きに力を与え、見る人の心を動かすダンスに結実しました。