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【レポート】大萩康司 クラスコンサート at 南小学校

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サントミューゼ

10月4日(月)

大萩康司 クラスコンサート at 南小学校

 

ギターの国際コンクールとして世界最高峰と言われる「ハバナ国際ギター・コンクール」に弱冠二十歳で第2位入賞を果たし、現在も国内外で熱狂的な支持を得続けているギタリストの大萩康司(やすじ)さん。11月19日にはサントミューゼで初めてとなる公演が行われますが、チケットは早々に完売。期待の高さがうかがえます。

 

リサイタルに先がけて、市内の小学校や公民館でコンサートを行っている大萩さん。この日は南小学校5年生の授業に登場し、ギターの音色と興味深いお話を聞かせてくれました。

 

 

拍手で迎えられた大萩さん、優しい笑顔であいさつします。

「みなさん、こんにちは。今日はクラシックギターという楽器を演奏します。このギターは僕が30年近く使っているから、皆さんの3倍ぐらい生きていますね! たくさん思い出が詰まった楽器です」

 

 

拍手で迎えられた大萩さん、優しい笑顔であいさつします。

「みなさん、こんにちは。今日はクラシックギターという楽器を演奏します。このギターは僕が30年近く使っているから、皆さんの3倍ぐらい生きていますね! たくさん思い出が詰まった楽器です」

 

最初に演奏したのは「サウダージ第3番」。フランス人作曲家がブラジルをイメージして作った美しい曲です。手の繊細な動きによって細やかな強弱や音のゆらぎが生まれ、頭の中に風景が浮かんでくるよう。音の温かな余韻も味わい深く、聴き惚れてしまいます。演奏後、拍手をした児童たちからは「すごい・・・」とつぶやく声が。

 

「この曲は途中でダンスが出てきたり、獰猛な動物が襲ってきたり、いろんな場面があります。どんな場面か、思い浮かべてみるといいですね」

 

ここで楽器について解説。フォークギターやエレキギターの弦は鉄でできていますが、クラシックギターの弦はナイロン。ピックを使わず、指ではじいて弾くのも特徴です。大萩さんが見せてくれた右手は、左手よりも爪が少し長めに整えられていました。

 

小学校3年生か4年生のときにギターを弾き始めたという大萩さん。ちょうど南小の児童たちと同じ年頃です。その頃によく弾いていたのが、フェルナンド・ソルによる19世紀の曲「ワルツ」。美しい和音がやさしく、物悲しく響きます。演奏する大萩さんの手元にじっと見入る児童たち。

 

 

 

 

「アルハンブラの想い出」という曲では、宮殿の噴水の水が流れる様子をトレモロ(同じ音または同じ和音を、決まった長さの音符で連続して演奏すること)で表現。手の動きはとても速いのですが音色は静かで美しく、水辺の情景が浮かんでくるようでした。

 

その後、大萩さんの子ども時代の話をしてくれました。中学校ではハンドボール部でキーパーをしていたこと。一方で、ギターを弾き続けることで自分の思いをすべて音に吐き出せる気がして、とてもよかったこと。「皆さんもやりたいことや、これだと思えることがこれから見つかるかもしれません」と、笑顔で話してくれました。さらに高校卒業後、単身パリに留学し、パリ国立高等音楽院で音楽を学んだ話も。

 

「海外では、食事の支度から何からすべて自分一人でやらなければなりません。それまで当たり前だと思っていたことを家族に感謝するようになったし、自分にも向き合えるようになりました。それに、留学して日本のよさを再発見しましたね。音楽についてもそう。日本の曲は独特なんです」

 

そう言ってあるフレーズを演奏すると、「あっ、『さくら』!」と児童たち。始まったのは「さくらの主題による変奏曲」です。シンプルな旋律から美しいハーモニーまで、一本のギターで「さくら」の多様なアレンジを聴かせてくれました。時にはギターを抱え込むように、時には体を大きく反らせて。まるでギターが歌うように、厚みのある密度の高い音色を響かせます。

 

最後の曲は、フランスの作曲家がアルゼンチンのタンゴを真似て作った「タンゴ・アン・スカイ(なめし皮のタンゴ)」。粋で色っぽいコード、タンゴだけれどアンニュイな曲調。物悲しさも妖艶さも感じられ、盛り上がってからのフィニッシュは感動的でした。演奏後、「すごかった!」と素直に声をあげる児童たち。

 

 

質問コーナーでは、たくさんの児童たちが手を挙げてくれました。

「ギターを弾く時に弦を強く押さえると指が痛くなってしまうんですが、慣れますか?」という質問には、「半年ぐらいで慣れるかな」と言いながら、自分の指先を見せてくれた大萩さん。それを見た児童は「うわっ、すごい!」と驚いた表情。「このポスターに写っているのはあなたですか?」という質問には、全員が大爆笑。「そうです!」と大萩さんがマスクとメガネを外してポスターの横に立つと「同じだ!」と大盛り上がり。

 

 

「どうしてギターだけでなく、ハンドボールも始めたんですか?」という質問に、「やりたいことは全部やりたかったから、ギターもハンドボールも、児童会長もやりました!」と答えると、児童たちは「すごい!」と拍手。さらに「弾ける曲は何曲?」と聞かれると「数えたことない!」、「演奏中に爪が割れたことは?」との質問には「コンサート中に割れてしまって、瞬間接着剤で固めて弾き続けたことがあります!」と笑い飛ばす大萩さん、さすがです。

 

間近で聴く世界レベルのギター演奏はもちろんのこと、子ども時代の話にも興味を感じていた児童たち。音楽にもトークにも元気をもらえた時間でした。