【レポート】椿三重奏団 リサイタル
読了目安時間: 5分
椿三重奏団 リサイタル
日時 2026年1月31日(土)14:00~
場所 サントミューゼ小ホール
出演 高橋多佳子(ピアノ)
礒絵里子(ヴァイオリン)
新倉瞳(チェロ)
満席のお客様に迎えられたピアノ・トリオ「椿三重奏団」のリサイタルは、心浮き立つ『ハンガリー舞曲 第6番』から始まりました。
さまざまな“愛”をテーマにした前半

トリオの仲の良さがにじむ息の合った挨拶に、上田滞在の締めくくりへの思いが感じられます。エディット・ピアフのシャンソンが聴こえてくるようなチェロとピアノの『愛の讃歌』、ヴァイオリンとピアノの歯切れ良い『愛の喜び』、そしてピアノソロの『愛の夢』と、愛を冠した曲を表情豊かに奏でます。毎年上田で公演している高橋さんの「移住するしかないと思うほど上田愛が溢れます」という言葉に、拍手が送られる場面もありました。再びトリオに戻ってシューベルトを2曲演奏します。新譜ジャケットをサントミューゼで撮影したというエピソードも明かされました。

ブラームスの傑作ピアノ・トリオ
後半は4楽章からなるブラームスの『ピアノ三重奏曲 第1番』。12月5日のアナリーゼワークショップの内容にも触れます。ブラームスの世界へ客席を熱く巻き込む約40分の演奏が終わると、割れんばかりの拍手が鳴り響きました。お三方とも言葉に詰まり、目に光るものが輝きます。“上田マジック”にかかったリサイタルは、エモーショナルで温もりに包まれたひとときになりました。

アンコールは、客席もハミングでこたえた『見上げてごらん夜の星を』と、鮮やかな余韻を残す『チャルダーシュ』の2曲でした。

お客様の感想です。ヴァイオリン経験のある長野市から来た小3の男の子は「前半のシューベルトが好きでした」と話してくれました。「愛の讃歌もよかったし、アンコールのチャルダーシュも心に残りました」と話してくれたのは、丸子での地域ふれあいコンサートも行ったお父さんと女の子でした。アナリーゼにも参加した上田市の女性は、「演奏家の方がみな大好きと言ってくれるサントミューゼは上田の宝物です」と、感無量の表情でした。

【プログラム】
ブラームス:ハンガリー舞曲 第6番
モノー:愛の讃歌
クライスラー:愛の喜び
リスト:愛の夢
シューベルト:アヴェ・マリア
シューベルト:ピアノ三重奏曲 第2番より第1楽章
ブラームス:ピアノ三重奏曲 第1番 ロ長調 作品8
【アンコール】
いずみたく:見上げてごらん夜の星を
モンティ:チャルダーシュ
取材・文:くりもときょうこ
撮影:金井真一
椿三重奏団 クラスコンサート
日時 2025年11月21日(金)
場所 上田市立神科小学校
高橋多佳子(ピアノ)
礒絵里子(ヴァイオリン)
新倉瞳(チェロ)
2025年度のレジデント・アーティスト「椿三重奏団」は、ピアニスト高橋多佳子さん、ヴァイオリニスト礒絵里子さん、チェリスト新倉瞳さんのトリオ。神科小学校5年4組のクラスコンサートの模様です。
3つの楽器をじっくり知る機会に
エルガーの『愛の挨拶』から始まりました。よく知られた曲ですが、トリオで聴く機会は貴重です。2つの弦楽器の掛け合いと音の厚みが、トリオの醍醐味を雄弁に語ります。

最初の曲が終わると、楽器の解説へ。ヴァイオリンとチェロを比較しながら礒さんが、木でできていること、「魂柱」という大事なパーツのこと、弦をこする振動が音になることなどを伝えます。500年前にはこの形だったというと、子どもたちは驚いていました。正確な音程を出す難しさはありますが、「人の声でできることは何でもできる」表現の多彩さが魅力です。ヴァイオリンの高い音を生かして鳥のさえずりや飛び回る様子を表現している『ひばり』を挟み、今度は弓の話です。意外なことにヴァイオリンのほうが、弓が長いのでした。

続いてはチェロが、とある鳥のいる風景を表現します。曲が終わると3択クイズが出され、正解は『白鳥』。「他の選択肢が間違いというわけではなくて、演奏は毎日違うので受ける印象も変わります。感じたことが正解です」と新倉さんが伝えます。

そして次は高橋さんのピアノのお話へ。弦が響いて音が鳴ることやペダルの種類について、実演しながら伝えます。今度はピアノ・ソロで『小犬のワルツ』。「途中で『キャン!』という子犬の鳴き声が聴こえるかもしれません」。

5曲目は、ピチカートだけの曲を礒さんと新倉さんのデュオで、曲名を伝えずに演奏をします。演奏後、子どもたちは受けた印象を「夜」「静か」「時計」と言葉にします。

3人でひとつの音楽をつくりあげる
6・7曲目は再び三重奏です。ショスタコーヴィチの『ピアノ三重奏曲』は、「一見明るいけれど心の中のいろんな思いが隠れている曲」と新倉さんが説明します。『ハンガリー舞曲 第6番』は、「びっくり箱のような」という表現通りの、緩急とダイナミクスの幅に心揺さぶられる演奏でした。
最後は子どもたちから質問と感想が寄せられました。「なぜ音楽家になったの?」「ヴァイオリンの人がチェロを弾くと音痴になっちゃいますか?」「楽器のつくりや役割を知れてよかった」「音楽の心地良さを知ることができて、音楽に興味を持ちました」「また聴きたいです」と、子どもたちの好奇心と素直な感動が表れていました。

【プログラム】
エルガー:愛の挨拶(三重奏)
ディニク:ひばり(ヴァイオリン、ピアノ)
サン=サーンス:白鳥(チェロ、ピアノ)
ショパン:小犬のワルツ(ピアノ)
シベリウス:水滴(ヴァイオリン、チェロ)
ショスタコーヴィチ:ピアノ三重奏 第2番 第2楽章(三重奏)
ブラームス:ハンガリー舞曲 第6番(三重奏)
取材・文:くりもときょうこ
アナリーゼワークショップ Vol.81~椿三重奏団(ピアノ・トリオ)
日時 2025年12月5日(金)19:00~
場所 サントミューゼ小ホール
お話 高橋多佳子(ピアノ)
礒絵里子(ヴァイオリン)
新倉瞳(チェロ)
2026年1月31日のリサイタルに向けて開催されたアナリーゼワークショップは、約30名のお客様が参加しました。
ブラームスのピアノ・トリオを深掘り
『愛の挨拶』の演奏を経て、まずはブラームスの紹介から。21歳で作曲した『ピアノ三重奏曲 第1番 ロ長調 作品8』を56歳で改訂したという、自分に厳しい人となりが語られます。

ソナタ形式の第1楽章には、たたみ掛ける4音の「運命の動機」や下降する音形「クララのテーマ」が出てきます。三部形式の第2楽章は、ベートーヴェンの交響曲や子守歌などいろんな作品とリンクしています。第3楽章はピアノとチェロの会話が聴きどころ。第4楽章の第1主題はブラームスの“雨の歌”こと『ヴァイオリン・ソナタ第1番』と似た感覚があると言い、礒さんと高橋さんが少し演奏してくれました。そして激しいコーダから短調のまま、崩れ落ちるがごとく終わります。

最後は、「楽章と楽章の間の取り方は?」「お三方が出会ったきっかけは?」といったお客様からの質問に答えます。お三方の仲の良さと絶妙なコンビネーションが伝わってきて、リサイタル本番への期待が高まりました。

取材・文:くりもときょうこ