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【レポート】田中靖人・白石光隆別所線車内ライブ

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サントミューゼ

2016年2月22日(月)

田中靖人&白石光隆 上田電鉄別所線車内ライブ

 

上田駅から別所温泉までをつなぐ別所線。約30分ほどの距離には、上田市街とは異なる、のどかで、生活の様子が垣間見える景色がぎゅっと詰まっています。

 

この日に開かれたサックス奏者の田中靖人さんと、ピアニスト白石光隆さんのライブは、この別所線が会場となりました。向かい合うように座って始まりを待つお客様たち。ふだん開かれるコンサートホールとは全く異なり、2両編成の「さなだどりーむ号」が舞台です。

 

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「揺れる車内で本当に演奏できるのかしら?」というわずかな不安と、それに勝る大きな期待を持って登場を待ちます。なかには、イベントを知らずに別所温泉へ向かう観光客の人もちらほら。偶然のサプライズに皆さんとてもうれしそう!

発車間近となって乗り込んだ田中さんと白石さん。

 

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動き出すと同時に、1曲目モンティ作曲「チャルダッシュ」を演奏。ハンガリー語で「酒場」を意味するチャールダに由来。哀愁を帯びた出だしから後半につれテンポが良くなり、踊り出したくなるような軽快さです。2曲目はビゼー作曲「アルルの女 第2組曲より 2間奏曲」と、一転して厳かさを感じる静かな曲へ。ふくよかなサックスの音色とピアノの響き、そして電車がガタンゴトンと進む音。外へ目を向ければ、住宅街や田んぼなどいつもと変わらぬ景色。だけれど、車内はいつもとは違う空間が生み出されている。このコントラストこそ、“特別な時間”を視覚的に演出しているよう。

 

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3曲目は小気味よいテンポがのどかな景色とマッチした、ガーシュウイン作曲・白石さん編曲「魅惑のリズム」へ。この時、予定では開くはずのなかったドアが開いてしまうなどのハプニングもありましたが、演奏する2人はそれすらも楽しんでしまう。この時間が楽しければOK! そんな雰囲気に包まれていきました。

 

4曲目は田中さんが大好きなジョン・レノンの「イマジン」へ。誰もが知る名曲ゆえ、口ずさむ人、のどかな自然にじっと目を向ける人、目を閉じてジョンの反戦に込めた想いをかみしめる人などさまざま。今見えている景色、ここで曲を聴ける幸せをあらためて噛み締める瞬間でした。ラストはガーシュウイン作曲・白石さん編曲「スラップ・ザット・バス」を演奏。心地よいジャズのリズムに合わせて身体をゆらしたり、手拍子を打つなど少しずつ会場全体が1つになっていくのが感じられます。なんとも心地よい雰囲気で満たされる中、アンコールとしてシークレット・ガーデンの「ユー・レイズ・ミー・アップ」を演奏。アイルランド民謡のメロディーをベースに、サックスの音色がドラマティックに響きます。

 

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まるでタイムキーパーでもいるのかと驚くほど、演奏終了と同時に別所温泉駅へと到着。電車のドアが開いた瞬間、夢のような心地よい空間とコンサートが終了しました。全員が同じ場所に降り立ち、楽しみの余韻に浸ったり、2人のサインをもらいに駆け寄る女子高校生がいたりとみんな名残惜しそう。それでもきっと、この余韻があるから次もまた聴きに出かけたくなるのでしょう。

 

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