【レポート】セレノグラフィカ 踊ってサントミューゼ
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ダンス経験皆無。
そんな状態で参加した、ダンスカンパニー「セレノグラフィカ」さんによるダンスワークショップ。
今回は参加者目線で、ダンスの楽しさをレポートします。
ダンスというと、基本ステップがあり、リズムに合わせて踊るイメージがある方もいるかと思います。
今回セレノグラフィカさんのワークショップでは、ダンスというより体を使った表現について、発表する楽しさ、鑑賞する楽しさを教えて頂きました。
セレノグラフィカさんは関西で結成した隅地茉歩(すみじまほ)さんと阿比留修一(あびるしゅういち)さんによる男女二人のダンスユニット。小学生から大人まで、サントミューゼスタッフも一緒に楽しみました。
まずみんな裸足になって、隅地さんと阿比留さんを囲んで、準備運動。
手をひらひらさせたり、座りながら足を伸ばしてお尻で歩いたり。
「男子もがんばって!」 と隅地さん。
こんな少しの運動でも汗がでてきます・・・。
複数人でダンスを演じるとき、完全にランダムな動きより何かの制約(ルール)を設けたほうが 綺麗に見えるとのこと。
『お互いがぶつからないように』というルールで大スタジオを歩き回ります。
なーんだ、これなら簡単!と思っていると、合図したところでその体勢で止まって!とだるまさんが転んだ方式 。
皆さん急に止まれず体勢を崩して苦笑い。ここからルールはさらに難易度を上げていきます。
今度は歩くスペースが大スタジオの半分のスペースに制限されました。
少し歩いたら今度は1/4のスペース。1/8のスペース。
最後は2m四方程度のスペースに11人(!!)が詰め込まれてぶつからないように歩きます。
みなさんぶつからないように集中しながらですが、顔はとっても楽しそう。
限られた空間と、そこにランダムに動く人を意識しながら歩く。
たったそれだけなのに街で人とすれ違うのとは違った、
お互いを意識し、気遣いあう気持ちが参加者みんなの中で感じられたことと思います。
一旦一息ついてから、もう一度大スタジオ全体を使って歩き回ります。
ここでセレノさんから歩いている途中、次の指示の通りの形で動きを止めてと、
「両手を挙げてストップ!」 「片足上げてストップ!」
参加者のみなさん慣れてきたのか、止まった瞬間の姿は彫刻のようにとても綺麗。
とおもっていたら、「両足上げてストップ!」って、思わずジャンプしてしましまいた。
瞬間的に寝転がって仰向けで両足上げていた女性参加者の方に拍手です。
自分の体なのに頭で思うことと体の反応はなかなか思うように一致しません。
今度は、「近くにいる人と二人で決めポーズでストップ!」あわててペアになる人を探すみなさん。
さらに、「ペアのお互いが相手の背中にあごでタッチ!」とか
「お互い相手のひざに頭でタッチ」などと参加者から
「えー!!」と笑いが出るようなアクロバティックな体勢を
要求されることも多かったです。
しかし、この頃には最初の恥じらいのようなぎこちなさもなく、
ただポーズを決めるだけでなく、
自然と、体を使って何かを表現しようという気持ちが伝わってきました。
少し休憩を入れて後半戦。音楽も入れてダンスのエッセンスがたくさん含まれていきます。
まずペアになり、音楽に合わせて『指先を合わせ、鏡のように相手の動きを真似する』というもの。
これ、文字にしてしまうと非常に単純ですが、相手がどこにどのように動いていくかがわからない動きについていくだけで非常に体力の要るものでした。
あまり場所を動かずに指だけグルグル回したり横に振ってみたり・・・
走り回って相手を翻弄したり、立ったり座ったり・・・
観客から見ると、二人の同じ動きがワンターンだけ遅れて見えるのが、
昔の無声喜劇映画を見ているようでとっても愉快。
相手を翻弄したり順番変わったときにやり返されたり。
発表が終わったらみんなでカーテンコール!
もうこのときは汗びっしょりの状態。予想外の運動量ですが、とにかくみんな笑顔が絶えません。
続いて行うプログラムは、またペアになりひとりは相手の体の一部に手で触れ、そこで体を硬直させます。
触れられたもう一人は相手の手から体を抜いて、今度は自分が相手の体に触れます。それを繰り返すだけ。
これがダンス?と思うかもしれませんが、それがセレノさんのうまいところ。
2グループに分かれて、1グループのワークショップをもう1グループは鑑賞します。
最初は堅い動きでしたが、ゆっくりとした音楽が流れてくると、それにあわせて自然と滑らかな動きになってきます。
簡単なルールだからこそみなさん、
音楽を感じ、
相手を感じ、
観客の視線を感じながら『演じる』ということに
集中していくのがわかります。
ただ相手の手から体を抜くのでなく、
それまで固まっていた石膏が解けて生身の体に変わり
また石膏像のように固まる。
この繰り返しがとても美しく、感動を覚えるものでした。
最後は、小さな振り付けを練習してみんなで踊りました。
もう体を目いっぱい動かしてきた参加者には恥ずかしさなどかけらもありません。
大きな動きでこころからダンスを楽しんでいました。
このダンスには(あまりにも参加者のダンスが楽しそうだったから?) サントミューゼの
スタッフも加わって全員でダンスを楽しみました。
ワークショップ終了後は電気を消して、今まで踊っていたステージに寝転がり、ゆっくりとした、癒されるような音楽の中でワークショップをそれぞれが振り返っていたことでしょう。
子どものころは特別なことと感じませんでしたが、
今日合ったばかりの人と手を握ったり、背中にあごをつけたり、
人の体温を感じる経験を忘れてしまっていたこの頃。
ダンスワークショップを通じて、
みんなと何かを作る楽しさや人のふれあいの温かさを取り戻せたような気がしました。
また、自分で演じるだけでなく、誰かが体の動きだけで伝えようとする何かを感じたとき、
ひとのからだはこんなに綺麗なものなのだと思いました。
そしてこれが自分が知らなかったダンスの世界であるなら、
ダンスって本当に楽しい、と心から思えるものでした。
サントミューゼでは9月23日(水・祝)13:00~ 大スタジオにて
セレノグラフィカさんと、一般参加者によるダンス発表公演「魔法のおしゃべり」が開催されます。
体を使って何かを伝えるということの楽しさと美しさが感じられます。
ダンスをご覧になったことのないみなさんも、ぜひご来場ください。