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【レポート】美輪明宏/ロマンティック音楽会

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美輪明宏『ロマンティック音楽会』
2017年2月26日(日)
大ホール

 

16歳の頃から歌手としてステージに立ち続ける美輪明宏さん。

音楽活動の集成として毎年各地で行っている「ロマンティック音楽会」が、サントミューゼで開催されました。
選曲・構成はもとより舞台美術や照明、衣装も自身で手がけた独自の美の世界には、

「”ロマンティック”とは、今こそ私たちが最も必要としている”心のビタミン”ともいうべきもの」

との思いが余すことなく表現されています。

 

 

二部構成の第一部は、美輪さん作詞作曲の5曲を披露。

登場するや「こんにちは。きゃりーぱみゅぱみゅです」と客席を笑わせ、「上田のみなさんは、きれいな街にお住まいで幸せですね」と語りかけます。

 

独自の人生観とユーモアが詰まったトークも、ロマンティック音楽会の醍醐味です。

幕開けのトークは日本文化の素晴らしさについて。

 

「十二単や能の衣装に見られるように、日本の色彩の豊かさは世界一。日本は言葉も綺麗ですね。たとえば『花』という言葉には香りや薄い花弁、そういったものが見事に表現されています。
日本が世界に肩を並べるには文化しかないんです。その文化の担い手の一人が、サラリーマンのみなさん。定年までつらい生活を戦うみなさんを讃える歌を作らねば、と思いました」

 

そして始まった曲は、中年男の哀愁を描いた「四十なんて嫌だよ」。

歩きながら身振り手振りを交え、語りかけるように歌いあげる様は勇ましいけれど哀しく滑稽で、一つの芝居を見ているかのよう。

 

サラリーマンのみならず、世の中の主婦も尊敬していると話す美輪さん。
「主婦の方は結婚したというだけで尊敬します。恋愛は夢と自由とロマンですが、結婚は現実だけでしょう。白いドレスは“死装束”ですね」
と、50年以上数々の人生相談に乗ってきたゆえの毒の効いたトーク。

 

 

主婦を讃える歌、その名も「昼メロ人生」は主婦の独白のような歌詞がシニカルで、客席からたびたび笑い声が起きました。

 

第一部最後の曲は「ヨイトマケの唄」。
冒頭のアカペラから、静かな気迫に心を持って行かれます。

一方で「母ちゃん」と呼びかける響きは優しく、生演奏の音と呼応するような豊かな歌声、表情はまるで演劇。

ラスト、暗転した闇の中で響く力強い歌声が、いつまでも耳に残っていました。

 

 

 

休憩を挟んで第二部は、シャンソンやラテンの名曲を中心にしたプログラムです。

美輪さんがかつて演奏旅行先のスペインで歌ったところ拍手がやまず、もう一度歌ったという思い出のラテン曲「ベサメ・ムーチョ」。
光の中で長い影を落としながらマンボのリズムで踊り、妖艶に歌う姿は、もはや人という枠組みを超えた「美輪明宏」という独自の存在感で強く心を揺さぶります。

 

美輪さん作詞作曲による「マダム・カチカチ」は、鋼の腕を持つ怪力の女プロレスラーの歌。

楽しくきらびやかなワルツのリズムに合わせ、舞台背景の星も4色の光に彩られます。

最後は「力が強くていい女、ハッ!」と力強く結び、なんだか観ているこちらも力をもらったよう。

 

波乱万丈の人生を送った女性が、長年連れ添った男性を見送るフランスの歌「ボン・ヴォワヤージュ(いいご旅行を)」。

やるせない思いに打ちのめされる切なさ、少しの滑稽さ、そうした一切の感情を、自身が体験したかのように全身全霊で表現する美輪さん。

絶望の隅に見せたほんの少しの優しさも見事でした。

 

役者として数々の舞台を踏み、そして多くの人の喜びや哀しみを見つめてきたからこその深みを感じます。

 

 

最後の曲「ミロール」は、楽しい旋律に客席から手拍子が起こります。
美輪さんの歌にはいつも豊かなストーリーがありますが、この曲は特に、セリフを挟むミュージカルのような構成が印象的。

寂しく笑う表情など、気だるい雰囲気をまとった女娼が、落ち込んだ男を無償の愛で勇気づけ、送り出すなど、細やかに女の悲しみを表現します

 

曲が終わり姿が見えなくなった後も、客席から「ブラボー!」の声や歓声があがっていました。

 

 

そしてアンコールへ。

「この歌の原詞は、無償の愛を歌っています。私は無償の愛こそ最上ランクの愛だと思い、そんな歌ばかり歌ってきました。みなさんの愛情豊かな人生をお祈りして、『愛の讃歌』」

 

誰もが知る歌ながら、ここにしかない圧倒的な存在感が心を揺さぶります。

歌声も音色も、そして舞台上にある何もかもが輝いて見えるよう。

会場はスタンディングオベーションに包まれ、「ブラボー!」の声とともに、幕は下りました。
【プログラム】
第1部
四十なんて嫌だよ
昼メロ人生
不倫
別れ話
ヨイトマケの唄

第2部
ベサメ・ムーチョ
マダム・カチカチ
ボン・ヴォワヤージュ
ミロール

アンコール
愛の讃歌