サントミューゼ(上田市交流文化芸術センター・上田市立美術館) おかげさまでサントミューゼは10周年

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仙台フィルコンサートマスターと若手音楽家による室内楽演奏会

みる・きく
会場
サントミューゼ

2016年3月4日(金) 小ホール
ヴァイオリン: 西本幸弘(にしもと ゆきひろ)
ヴァイオリン:斉藤澪緒(さいとう みお)
ヴィオラ:樹神有紀(こだま ゆき)
チェロ:田辺純一(たなべ じゅんいち)
ピアノ:鈴木慎崇(すずき よしたか)

 

3月20日(日)に大ホールでの公演を控える(→公演情報)

仙台フィルハーモニー管弦楽団のコンサートマスター

西本幸弘さんと、数多くの演奏家との共演経験がある

ピアニストの鈴木慎崇さん、そして、上田市出身の

期待のヴァイオリニスト斉藤澪緒さんをはじめとする

20代の演奏家3人による室内楽演奏会が開催されました。

 

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実はこの5人、東京藝術大学の同じ学び舎で学んだ先輩後輩関係にもあたります。
会場には小学生も含めて老若男女幅広い客層が集まり、3つのプログラムが演奏されました。

 

1曲目は、ショパンの『即興曲第1番変イ長調作品29』で、鈴木さんのソロです。4分ほどの短い演奏ながら、流れるような旋律と軽やかなテンポはまさに「ピアノの詩人」と言われるショパンの繊細さや華麗さを表現しているようでした。

 

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演奏のあと、鈴木さんからはショパンについての説明が。

 

シューマンやリスト、メンデルスゾーンといったロマン派の作曲家と同時代を生きたショパンは、ベートーヴェンに似た匂いがするものの、彼を嫌い、モーツアルトやバッハといった優美でしなやかな音楽を愛していたのだそうです。

 

そして、ショパンの作曲のほとんどはピアノ独奏曲なので、2曲目のプログラムである『ピアノ三重奏曲 ト短調 作品8』は貴重な作品なのだそう。この曲を書いていた18歳の頃は超絶技巧奏者として名高いイタリアのヴァイオリニスト・パガニーニに影響を受けたそうで、後期の有名な曲よりも古典派寄りのイメージがあることから「この曲からショパンのルーツはどこにあるか考えてみてください」と鈴木さん。

 

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また、この三重奏はヴァイオリンパートが低音で地味なことから「不遇のパート」と言われていて、「それを斉藤さんがどう演奏するかも注目です」と紹介されました。

 

こうして斉藤さんと若手チェリストの田辺純一さんがステージに登場。
経験豊富な鈴木さんの緩やかなリードによる4楽章、30分ほどの演奏は「いい意味で暗さや重厚感がある楽曲ながら、たまに出るヴァイオリンの高音が喜びや光を表現している」と鈴木さんが話していた通り、確かにメロディーを響かせるヴァイオリンの特徴は抑えられていましたが、チェロとヴァイオリンの重なりが中低音を支える重厚さがあり、そのなかで時折響くヴァイオリンの高音がアクセントとなって全体に明るさを差し込んでいるようでした。

 

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ちなみに、この演奏会のあと斉藤さんにお話を聞く機会があったのですが、鈴木さんの「斉藤さんはどう演奏するか」という言葉はプレッシャーになるので、バックステージで聞かないようにしていたのだとか。

 

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そして、いよいよステージには西本さんが登壇。
昨年10月の仙台フィルの提携公演の際に大ホールで演奏した時の印象を「とても良い響きで演奏が楽しめ、すばらしいスタッフが温かく迎えてくれるすばらしいホール」と話し、このホールは上田市民にとっても日本にとっても価値あるものになっていく手応えを感じていると語りました。

 

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また「今日は『仙台フィルコンサートマスターとの演奏会』と謳いながら全曲登場している鈴木さんが一番活躍しているので、僕はMCで貢献します」と、お昼に大盛りで知られる蕎麦屋にみんなで行った話などウィットに富んだトークを披露。

 

演奏に関しては、2日間のリハーサルでプログラムの3つ目にあたるブラームスの『ピアノ五重奏曲 ヘ短調 作品34』という大曲に臨み、5人でめまいがするくらいの苦しみや楽しみを経験したことなども話しました(ヘ短調はなかなか演奏しない調だそうです)。
加えて、一人ひとり違う楽器のパートがひとつの空間に集まる室内楽の意義や楽しさを語りつつ、「楽器の音には性格が表れる」ことから、西本さんが感じる一人ひとりの演奏家の印象を紹介。

 

 

こうして、若手ヴィオリストの樹神有紀さんも加わり、重厚さと緻密さに溢れた“いかにもブラームス”という感じの楽曲であるという『ピアノ五重奏曲 ヘ短調 作品34』が演奏されました。

 

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力強く情熱的で息の合った演奏と一人ひとりの表情からは、西本さんが話していたリハーサルでの苦労や喜びが伝わってくるようです。また「演奏家の性格は楽器の音に表れる」という話はとても興味深く、演奏からはそれぞれの個性が伝わってくるようでした。

 

 

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アンコールはドヴォルザークの『ピアノ五重奏曲第3楽章』。美しく溶けあうハーモニーが会場に満ち、観客の拍手からは満足感の高さが伝わってました。

 

 

 

3月20日(日)には、ショパンの『ピアノ協奏曲第2番 ヘ短調 Op.21』やブラームス『交響曲第3番 ヘ長調 Op.90』などが演奏されます。お楽しみに。