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【レポート】礒絵里子 アナリーゼワークショップ

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アナリーゼ(楽曲解析)ワークショップVol.17 礒絵里子ヴァイオリンリサイタル関連プログラム
10月25日(水) 19:00~ at サントミューゼ小ホール

 

11月18日(土)、小ホールでリサイタルを行うヴァイオリニストの礒絵里子さん。

公演に先駆け、リサイタルで演奏するブラームスの「ヴァイオリン・ソナタ」の特徴や楽曲の背景を解説するアナリーゼ(楽曲解析)ワークショップをピアニストの中川賢一さんとともに開催しました。

 

 

まずは第1番の解説から。

この曲の解説に欠かせないのが、ブラームスが恋したクララ・シューマンの存在です。

クララはこのソナタを、『天国に持っていきたい』と言うほど愛したそう。
「第2楽章冒頭の24小節は、クララの子どもが病気になった時にお見舞いとして手紙に書きつけ、贈ったと言われています」
解説とともにスクリーンに映し出されたのは当時の自筆原稿。

実際の演奏を聴くと、切なさの中に思いやる気持ちを感じさせるような優美な音色でした。

 

 

ここからはさらに、他の楽章や楽曲の旋律との関連を紐解いていきます。

第3楽章はブラームスの歌曲『雨の歌』と『名残り』のメロディーが使われていますが、
「リズムが『葬送行進曲』に似ているとも感じるんですよね」
と礒さん。

クララの子、フィリップスがこの時期に亡くなっており、それが少なからず影響を与えているのかもしれない、と話します。

 

 

さらに、第3楽章の中に第2楽章の旋律が出てきたり、第2楽章に「雨の歌」の旋律が出てきたり。

スクリーンに映される楽譜を見て演奏を聴きながらの解説に、参加者は身を乗り出して聴き入っていました。

 

 

続いて第2番。第1楽章の冒頭はワーグナーの歌曲に似ていると言われていますが、
「実はブラームスはワーグナーと仲が悪かったんですよね。『似ている』と指摘されると、ブラームスは『馬鹿にはそう聴こえるんだ』と言ったとか」
との解説に笑いが起こりました。

 

 

第2楽章は、冒頭部分にブラームスの「ヴァイオリン協奏曲」の第2楽章も入っています。

意図して関連させたのかは不明ですが、
「ブラームスが遺したソナタは3曲だけ。

それ以前にも5曲のソナタを作ったのに、破棄したと言われています。

彼は思いを言葉に残さずすべて音楽に閉じ込めたから、私たちは残された楽曲から読み解くしかない」

 

そして、曲の印象を決める「楽譜の解釈」の重要性についても解説したお二人。

 

 

第3楽章は、冒頭を2通りの演奏で披露してくれました。「どちらが好きでしたか?」と参加者に聴くと、答えは半々に。
「1回目はヴァイオリンで一番低いG線のみで弾いたので、音色が統一された印象。

2回目はすべて第1ポジションで弾いていて、いろいろな弦が響くため華やかな印象です」
と礒さん。
「同じ譜面でも、演奏者の解釈が変わるとテンポや印象が変わります。

だから、解釈はとても大切なんです」
と中川さんが話します。

 

 

第3番第1楽章の冒頭は、礒さん・中川さんの解釈と、ブラームスの譜面を強調した解釈、名付けて「巨匠風解釈」の2パターンで弾き比べてくれました。

「巨匠風」はよりスローでフラットな印象ですが、
「ブラームスが天才だからこそ、ある程度どんなテンポでも成り立つんです」
と中川さん。

さらに礒さんは、
「なんとブラームスのソナタでは、ヴァイオリンもピアノもテヌート(音符の長さを保って演奏する指示記号)を一切使っていないんです。

でもテヌートっぽく聴こえる部分では、『スタッカート』と『スラー』がついているんです」
と、実際に楽譜の記号を指しながら解説。

同じ旋律をスタッカートを強調して弾いたり、逆にスタッカートがないと仮定して弾いてみたりと試してみると、どれも違う印象です。

中には非常にせわしない演奏もあり、客席から驚きの声が漏れる場面も。

 

 

「彼の曲に込めた思いを自分たちで読み解いて演奏するしかないから、私たちも譜面を読み解く力が必要なんです」(礒さん)
「ブラームスの暗号というか譜面という一枚の紙に込められたメッセージを、我々が考え、解釈するわけですね」(中川さん)

 

 

曲の背景、さらにそれを弾く演奏者の思いを聴いていっそう楽しみになった礒さんのヴァイオリンリサイタル。

11月18日(土)14時から、小ホールで開演です。お楽しみに。