サントミューゼ(上田市交流文化芸術センター・上田市立美術館) おかげさまでサントミューゼは10周年

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【レポート】ハムレット

みる・きく
会場
サントミューゼ

『ハムレット』
2017年5月21日(日)開演13:00 at 大ホール


 

大ホールを満席にした『ハムレット』。

本作では、ロイヤル・シェイクスピア・カンパニー(イギリス)の名誉アソシエート・ディレクターとして現在までに数々のシェイクスピア作品を手がけたジョン・ケアードさんが演出を務めました。
主役のハムレット役の内野聖陽さんはこれまでケアードさん演出の3作品に出演。

プロダクションノートを読むと、ケアードさんが内野さんに「そろそろハムレットをやれば?」と勧めていたとか。

 

 

他にはホレイショー役の北村有起哉さん、父の亡霊とクローディアス役は國村隼さん、ガートルード役は浅野ゆう子さん、そしてオフィーリア役には貫地谷しほりさんらが出演。

 

撮影:引地信彦

 

本作でまず印象的なのは、舞台セットでしょう。

 

 

まるで日本の伝統芸能を連想させるかのような舞台の下手には客席があり、上手には出番を待つ俳優陣が待機するほか、尺八演奏家の藤原道山さんが隠れたもう1人の出演者のように舞台中の音楽を生演奏。

出演者の衣装もどこか袴のようで、随所に日本版ハムレットが散りばめられているように感じました。
さらには語り部であるホレイショー役の北村さん以外の俳優は複数の役を担っていたことも特徴的で、ゆえにホレイショーの視点から見るハムレットが描かれているのも見所でした。

 

 

また舞台上で瞬時に役を切り替えながらも1人ひとりの存在がぶれたり、薄れることなく進んでいくという秀逸さ。
主役のハムレットの独白からは、観客は自然と彼の心の様子を感じ取り、感情の波を自然と共有していきます。

ともに喜び、悲しみ、怒りにふるえながら、彼の人生に入り込んでいく……、

一瞬たりとも言葉を逃さぬよう演劇と対峙していくような時間が流れていきました。
“To be,or not to be:that is the question”
シェイクスピアに詳しくなくとも『ハムレット』の名台詞なら知っている人もいるはずでしょう。

“生きるかべき死ぬべきか、それが問題だ”と訳されることが多いこの言葉を本作は、“あるか、あらざるか、それが問題だ”ととてもシンプルな言葉にされているのも印象的でした。
それにしても本作の出演陣は豪華で、國村さんをはじめ村井國夫さん、壤晴彦さんらベテラン陣の存在感がやはりすばらしく、彼らの登場が各シーンで見事なスパイスとなっていました。

 

撮影:引地信彦

 

古典演劇でありながら新鮮な印象を残したジョン・ケアード版『ハムレット』は、スタンディングオベーションで幕を閉じました。

 

終演後の観客からは「言葉で頭がいっぱい」「圧倒された」などの声が上がり、観客の心にしっかりとその記憶が刻まれたのではないでしょうか。