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【レポート】仲道郁代 ピアノリサイタル

みる・きく
会場
サントミューゼ

仲道郁代 ピアノリサイタル
2017年2月27日(月)19:00開演

 

今年、ピアニストとして30周年記念を迎える仲道郁代さん。

記念すべき年のリサイタルとあって、「この日のプログラムには、ピアノを始めてから感じてきたことを反映しました」と登場とともに仲道郁代さんは語りました。

そして自身が「無条件で好き」だというグリークの作品から「抒情小曲集」よりアリエッタ、蝶々、ノクターンを披露。

2曲目に進む前には、中学時代の思い出をふり返りました。

 

 

 

「私は父の仕事の関係でアメリカ中西部のミシガン州に引っ越しました。そこにある日、ピアニストのウラディミール・ホロヴィッツがコンサートをすると知りました。超プレミアチケットでしたが家族で1枚だけ取れて、私が行かせてもらいました。そのアンコールで彼がポン、ポンと2音を弾いたのですが、それを聴いて私は涙がポロポロと流れました。たった1音のピアノだけでも人の心を動かすことが出来るのだと」

 

そう語ってから、思い出の曲・シューマンの子どもの情景より“トロイメライ”op.157へ。

3曲目には、たくさんの音を使わずシンプルな分難しいといわれるモーツァルトのピアノ・ソナタ 第15番 ハ長調 K.545と続きました。

ドイツ語で「夢見ごと」を意味するタイトルどおり、ゆっくりとくり返される短いメロディが、観客一人ひとりの記憶に訴いかけるようでした。

 

 

「私は小学校5年生の時に部屋にステレオを入れてもらいました。当時は箪笥のように大きな箱型のステレオで、眠る前にまっ暗な部屋の中で次に演奏するショパンのポロネーズを大音量で聴いていました。決して眠る前に聴くような曲ではないのですが、太くて、豊かで、甘やかなこの作品に『なんて神聖なんだろう』と夢中で聴いていました」

 

 

 

まさに仲道さんにとって「ピアノの音の原点」とも言えるショパンのポロネーズから、第1番 嬰ハ短調 op.26-1、第3番 イ長調 op.40-1「軍隊」を演奏。

第1部最後の曲にも同じくショパンでポロネーズ 変イ長調 op.53「英雄」を披露し、その前に演奏したモーツァルトとは対照的な力強く、堂々としたリズムとメロディが圧巻でした。

 

第2部はブラームスの「3つの間奏曲 op.117」からスタート。

 

 

「2016年1月にはブラームスとシューマンを題材にした音楽と演劇のコラボレーション作品を公演しましたが、今日いらっしゃる方で観た方は?」と仲道さんが問いかけると、手を挙げる人も。

 

この作品は南河内万歳一座の内藤裕敬さんが演出し、音楽監修とピアノ演奏を仲道さんが担当し、今年は全国公演が決定。

さらなる進化を遂げてお披露目となります(こちらもどうぞお楽しみに!)。

 

つづいてシューマンの歌曲をリストが編曲した歌曲集「ミルテの花」op.25-1より“献呈”S.566では、結婚前日にシューマンがクララに送ったこの曲をシューマンが気に入って編曲したが、その出来上がりはクララを怒らせてしまったという、思わずぷっと吹き出してしまうエピソードとともに披露。

 

同じくリストの愛の夢 第3番 変イ長調S.541、そして最後に選んだ曲はメフィスト・ワルツ 第1番「村の居酒屋での踊り」S.514でした。

 

 

「この曲に初挑戦したのが大学1年生の時でした。練習したけれど訳も分からずうまく弾くことが出来ませんでした。今ふり返れば、もっと賢く練習をすればもっと早く弾けるようになったかもしれないと思います。それでも無駄だと思えるような練習を積み重ねてきたからこそ、今につながっています。私はピアノの音、そして音楽から与えられたものがたくさんあります。こうしてずっと弾き続けていけたら幸せです」

 

その後は2回のアンコールを経て、たくさんの拍手に包まれながら、仲道さんのリサイタルは終了しました。

 

 

 

今回のプログラムには仲道さんの子ども時代に出合ったたくさんの音楽とそれにまつわる思い出、さらにはピアノの音にいかに魅せられてきたのかが分かる構成でした。

演奏を通じて仲道さんのピアノ愛を終始感じるような時間でした。

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【プログラム】
第1部
グリーグ:「叙情小曲集」より アリエッタ /蝶々/ノクターン

シューマン:「子供の情景」 op.15より トロイメライ

モーツァルト:ピアノ・ソナタ ハ長調 K.545

ショパン: ポロネーズ第1番 嬰ハ短調 op.26-1

ショパン:ポロネーズ第3番 イ長調 op.40-1 「軍隊」

 

第2部

ショパン:ポロネーズ第6番 変イ長調 op.53 「英雄」
ブラームス:3つの間奏曲 op.117より

シューマン / リスト:歌曲集 《ミルテの花》 op.25-1より 「献呈」 S.566

リスト:愛の夢 第3番 変イ長調 S.541

リスト:メフィスト・ワルツ 第1番 「村の居酒屋での踊り」 S.514

 

アンコール
ショパン:雨だれ
エルガー:愛の挨拶