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【レポート】仲道郁代ピアノリサイタル

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仲道郁代ピアノリサイタル オール・シューマン・プログラム
2月16日(金) 19:00~ at サントミューゼ小ホール

 

 

この日はシューマンの作品ばかりを集めたプログラム。

登場した仲道さんは冒頭、
「今日は私の大好きな作曲家の曲を存分にお聴きいただけることを、とてもうれしく思います。
シューマンは私にとって青春の作曲家です。

彼の一音一音に夢をみて、自分が何者か分からない不安定な思いを重ねたりしていました」
と語りました。

 

 

1曲目は「アベッグ変奏曲 Op.1」。

「若きシューマンは、当時住み込みでピアノを学んでいた家の子どもたちに、眠る前に自分で作ったおとぎ話を聞かせていました。

そんな彼のファンタジーあふれる面を感じさせる曲です」

 

 

変化に富む音が心にさまざまな情景を描き出し、物語のゆくえに興味をかきたてられるように楽しませてくれました。

 

続く「交響的練習曲 Op.13」はその名からも分かるように、ピアノ曲でありながら管弦楽によるシンフォニックな響きを表現した曲です。

 

 

「ピアノの響きとテクニックの可能性を、シューマンなりに最大限に追求した作品ですが、曲の中には彼の折れやすい心やそれとの葛藤といったドラマが聞こえてきます」
と仲道さんが語るとおり、華やかななかに入り混じる悲しさが伝わってくるよう。

彼の思いに寄り添うかのような仲道さんの表情も印象的でした。

 

 

休憩の後、「幻想曲 ハ長調 Op.17」へ。

のちにシューマンの妻となるクララと苦しい恋愛をしている時に生み出されたこの曲。
ハ長調はCメジャー、つまりクララのイニシャルを表す調性でもあります。

音符の裏にある意味づけを大切にしたシューマンの感性が伝わってきます。

 

 

悲哀も愛情も伝わってくるような第1楽章。

最後の最後にようやくハ長調、つまりクララの調性にたどり着く構成は、不安な日々の後に訪れた小さな幸福を感じさせます。
そして強い光を放つようにドラマチックな第2楽章を経て、癒しを感じさせる第3楽章へ。
自分のなかにある恋人への切実な想いも、迷いや悩みもすべて受け止め、音楽という形に昇華させるシューマンの姿が見えたような気がしました。

 

 

プログラム最後は「3つのロマンスから 嬰ヘ長調 Op.28-2」。
結婚が決まったとき、クララへと贈ったこの曲。
優しくロマンチックな調べに、ここまでのプログラムで触れてきたシューマンの迷いや悲しみがすべて癒されたかのように感じ、温かな気持ちとともに幕は下りました。

 

アンコールでは、まさにこの日、平昌オリンピック フィギュアスケート男子シングル ショートプログラムで滑走した羽生結弦選手に敬意を表して、演技で使用されたショパンの「バラード第1番 ト短調」を披露。

 

 

さらに「私がシューマンに目覚めたきっかけの曲です」と演奏してくれたのが、「トロイメライ」です。

一つひとつの音が純粋で美しく、ここまで聴いてきたシューマンとはまた違う表情を見せてくれました。

 

 

終演後はロビーでサイン会を開催。

多くのお客様が集まり、CDや書籍にサインをもらったり、仲道さんと言葉を交わしたりと楽しんでいました。

 

 

訪れたお客様からは、
「音が立体になって絵で見えてくるかのようで、圧倒されました」
「シューマンはショパンなどに比べてマイナーな印象がありましたが、あまり知らなかった良い曲がたくさん聴けて良かった。

仲道さんの演奏はエネルギッシュなだけでなく、ふっと抜けるような音もあるのがすごく好きです」
などの声が聞かれました。

 

仲道さんにとって思い入れの深いシューマン・プログラムは、訪れた人にも多くの感動と発見をもたらしてくれたようです。