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【レポート】多田淳之介「演劇LOVEワークショップ in 上田」

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【レポート】多田淳之介(東京デスロック)

「演劇LOVEワークショップ in 上田」at 犀の角

2017年3月2日(木)
会場:犀の角
劇団「東京デスロック」主宰として国内外で活躍し、埼玉県の「富士見市民文化会館キラリ☆ふじみ」の芸術監督も務める多田淳之介さん。

既存の演劇の枠組みを越え、俳優の身体や観客、時間、劇場空間を含め、その場での現象にフォーカスした演出が特徴で、古典から現代口語演劇、パフォーマンス作品まで幅広く手がけています。
また「演劇LOVE」を合言葉に、地域や教育機関でのアウトリーチ活動も積極的に行い、演劇を専門としない人にも演劇がもつ対話力や協同力を広く伝えています。

 

 

そんな多田さんによる、上田初となる「演劇LOVEワークショップ」が、2016年11月に上田市海野町商店街にオープンした劇場兼ゲストハウス「犀の角」で行われました。

 

 

参加者は、普段、サントミューゼで市民参加型公演に出演している市民と、「犀の角」で演劇活動に参加している市民の合計21名。

高校生から中年層の社会人まで幅広い世代の市民が集まり、2劇場間の交流と世代間交流が進むようにとの期待も込められたワークショップです。

 

最初に、多田さんから「演劇LOVEワークショップ」の趣旨が説明されました。
「『演劇LOVE』とは、『相手が幸せなら自分も幸せ』という_“愛”の感情を演劇に対して抱けたらいい、演劇が幸せになったらうれしいということ」と多田さん。

そのうえで演劇のよさが広く知られるようになり、演劇によって幸せになる人が増えるといい、というのが、多田さんの思いです。

 

 

そして、「演劇が世の中に必要とされている理由のひとつに『コミュニケーション』がある」と多田さん。

そこで、今回は「コミュニケーション」をキーワードに、さまざまなアプローチから演劇とコミュニケーションの関係を探っていくワークショップが展開されました。

 

 

 

そのアプローチのひとつが「一人ひとり座ってみようゲーム」というもの。

これは、ほかの人とタイミングがかぶらないよう、合図や声かけをすることなく1人ずつ順番にしゃがむゲームです。

 

 

これを通じ「私たちは人の身体を見て、次にどのように動こうとしているかを察知していると気付きます」と多田さん。

つまり、私たちは、普段のコミュニケーションから、言葉だけでなく表情や手振りなどいろいろなやりとりをしていると気付くことができます。

そして、演劇ではこうした単純な動作でも観客にわかりやすく演じることが大事だと多田さん。

そのためには、日頃から言葉以外の動きや表現を意識していることが大切なのだと感じることができました。

 

 

また、参加者が5チームに分かれ、1分間しりとりをした後、そのしりとりがどのようなものだったかをチーム内で忠実に思い出しながら台本にしていくワークショップも行われました。

これによって、参加者は、普段、どのようなコミュニケーションをとっているのかを客観的に知ることができました。
そして、この台本を使い、しりとりの再現にも挑戦。

すると、参加者は互いに遠く離れたり違う方向を見ていても、しりとり自体が成立していれば、周囲からはコミュニケーションがとれているように見えることに気付きました。

 


多田さんの解説によると、これは「再現象」という状態なのだそう。

演劇は再現の芸術と言われますが、稽古でやったことをそのまま舞台上で再現するよりは、うれしいとか楽しいといった稽古のときの現象を再現することだと言います。

その状態を多田さんは「再現象」と呼んでいます。
特に舞台上では、俳優は照明や客席の関係で前方を見て話さなければいけないときがありますが、想像力を駆使し、聞こえてくるセリフだけのインプットでリアクションをして「再現象」の状態をつくる必要があります。

 

多田さんはそのリアクションを演技の技術ととらえているそうですが、だからこそ、「再現象」のためには、何らかの刺激に自分の身体を反応させ、コントロールすることが大事だと参加者に伝えていました。

 

このほか、言葉を使わずコミュニケーションを成立させるワークショップもやってみました。

言葉を全て手拍子に置き換えてみたり、シンプルに立つ・座るだけの動作でコミュニケーションをとってみたり。

このワークショップからは、言葉がなくても人間は意外と幅広い表現ができることに気付きます。

そして、こうした動きだけでもなんとなくコミュニケーションが成立しているように見えるから不思議です。

 

 

多田さん曰く、このワークショップは、相手が何を考えているかわからないところがポイントなのだそう。

そのうえで、参加者は相手の表情や手の叩き方からリアクションをすることはできます。

つまり、普段、私たちは言葉を使っていても相手の言っていることを本当に理解しているか怪しいところがありますが、

「コミュニケーションを成立させるためには、リアクションを続けることが大事」と多田さん。

演劇の場合、何らかの反応があると、そこから観客はいろいろなことを想像します。

このように観客のイマージネーションを掻き立てることもまた、演劇の手法のひとつだと多田さんは言います。

 

 

そして、最後に多田さんは「プライベートでもコミュニケーションで悩んだら『もともと人の本当のことはわからない』という構造を理解していれば、悩んだときも健全に悩めます」と話し、日常生活にも演劇の考え方が生かされることを教えてくれました。
多田さんの独自の世界観と演劇への深い愛を感じながら、演劇の多面的な魅力を感じることができたワークショップでした。

 

 

なお、今回のワークショップは、もともと現代口語演劇からどんどん抽象的な作品を創るようになった多田さん自身の演出の流れでもあったと多田さんは言います。

その背景には、今回の参加者が演劇経験者であったことから、このワークショップを通じて、今後、演劇における何らかの足しになれば、という思いもあったのだそう。
さまざまな演出方法に挑戦している多田さんのルーツを辿るようなワークショップを通じ、参加者たちはそれぞれの演劇に対する思いも深めたのではないでしょうか。