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【レポート】金子三勇士 名古屋フィル名曲コンサート関連企画 アナリーゼシリーズvol.12

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サントミューゼ

名古屋フィルハーモニー交響楽団 名曲コンサート
関連企画 アナリーゼシリーズvol.12

2017年2月25日(土)14:00~
at 小ホール

 

 

3月26日(日)に開催される『名古屋フィルハーモニー交響楽団 名曲コンサート』。

ワーグナーやチャイコフスキーの名曲をはじめ、ピアニスト金子三勇士さんを迎えてバルトークのピアノ協奏曲第3番を披露する予定です。
12回目となるアナリーゼでは金子さんがバルトークに焦点をあてて音楽を取り巻く文化や時代にも話題を広げながら解説するとあって、当日は始まる前から多くの客様がお並びになりました。

 

 

金子さんが登場し、バルトークが生まれた国についてホワイトボードにヨーロッパの地図を描きながらバルトークが生まれた時代背景の説明を始めました。

 

「バルトークは1881年3月25日に誕生しました。かつてはハンガリー王国として今よりはるかに大きな国土を有していましたが、第1次、第2次世界大戦などを経て、その国土は1/9に減少し現在に至ります。そういった歴史もあって、彼が生まれた村は当時はハンガリーでしたが、現在はルーマニアに位置します」

 

 

そんな激動の時代に、バルトークは早くから音楽の才能を開花させて自ら作曲をしたり、演奏会をするように。

その後母親の仕事の関係でプラハに引っ越し、音楽家のドホナーニに才能を認められてブダペシュト王立音楽院(現リスト音楽院)に入学。

次第に民俗音楽に興味を抱くようになり、民族音楽の収集活動をするようになりました。

 

「バルトークの作品にはリズムなどに民族音楽の要素が反映されています。それが次第に彼の音を確立させていきました」と金子さん。
つづいて話題は、彼の作品に対する評価について広がりました。

 

 

「そもそもバルトークの作品を苦手という人が多いんです。その理由の1つには、彼自身がガチガチの理数系で譜面を並べるとシステムを見ているようです。しかし親しみやすい曲もたくさんあるので、今回の『名曲コンサート』で思い切って選びました」

 

今回披露するピアノ協奏曲は第1番から第3番まであります。

こういった作品の多くは、全体を通して同じ作曲家が作ったものだと分かるのですが、この作品に関してはどれも全て異なった雰囲気に構成されています。

 

「第1番は難しくて、私も演奏したくない。第2番は民族音楽の音がたくさん入って、リズムが多くて楽しい。そして今回演奏する第3番は優しい雰囲気です」

 

 

 

この作品はバルトークが亡命し、アメリカに渡ってから作られました。

しかしそこでの生活は苦労が多く、健康状態も悪化していき白血病を患ってしまいました。

そこでピアニストである妻に残そうと作られたのがピアノ協奏曲第3番です。

 

「バルトークは病院でも作品を書き続けましたが、妻が見舞いに来た時にはそれを隠すために『ヴィオラ協奏曲』も同時に書いていたそうです。最終的にはオーケストラパート17小節を残したまま亡くなりました」

 

バルトークの半生を聞いた後は、実際に『ピアノ協奏曲第3番』を聴きながら、金子さんがどういった点に注目するとより楽しめるのかを解説していきました。

 

彼の作品のラストはどのような音だったのかクイズをしました。

1日数時間しか意識が無い人が作ったものとは到底思えない、まるで連続して打ち上げ花火が上がっているような華やかなクライマックスとなっています。

また、当時流行っていたグリッサンド奏法を金子さんが披露した後には会場から拍手がわき起こりました。

 

 

「オーケストラパートを最後まで書き終えなかったにも関わらず、楽譜の最後にハンガリー語で書かれていた言葉がありました。そこにはバルトークらしく、ただ『終わり』と書いてあるんです。僕はこの曲を弾き終えるたびに『終わり』とつい言ってしまうんです。それと同時に涙が出てきます。同じ音楽家として、1人の男として、こういう風に生涯を終えられることはかっこいいことだと心から尊敬しています」

 

 

今回のアナリーゼではバルトークについてはもちろん、演奏する側がどのように彼に敬意を払っているのかを感じ取れました。
そうそう、実は『名曲コンサート』はバルトークの誕生日の翌日に開催されます。

 

「彼の生誕祭も兼ねて演奏できたらいいですね」と金子さん。

 

バルトークの楽曲を改めて見直す、素晴らしい作品をはじめ、長野県内の高校生も出演し、ワーグナーの歌劇『ニュルンベルクのマイスタージンガー』より第1幕への前奏曲を披露します。

またメインはオーケストラ演奏曲で人気が最も高い演奏曲の一つ、チャイコフスキーの交響曲第五番が演奏されます。

さまざまな視点でお届けする名曲の数々を、どうぞお楽しみに!