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【レポート】群馬交響楽団音楽監督・大友直人アナリーゼワークショップ

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サントミューゼ

4月2日(土)サントミューゼ大スタジオにて、2週間後の17日(日)に大ホールで開催される「群馬交響楽団 上田公演」で指揮を務める大友直人さんによるアナリーゼ(楽曲分析)ワークショップが行われました。

サントミューゼではこれまでに、2015年2月の「第九公演」と同年8月の「名曲コンサート」、

そして2016年2月の「真田丸コンサート」の3回、群馬交響楽団(群響)の公演を開催しています。

そのうち2公演が大友さんの指揮によるものでした。

 

また、大友さんのアナリーゼとしては、今回は2回目の開催です。

前回の「名曲コンサート」では誰もが耳にしたことがある名曲揃いのプログラムだったのに対し、

4月17日の公演では普段あまり聴き慣れない楽曲が並ぶため、会場を訪れた多くの音楽ファンは、このアナリーゼにより大きな期待を寄せているようでした。

 

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大きな拍手で迎えられた大友さん。「今日は4月17日に演奏する3つのプログラムすべての演奏曲目をプロジェクターとCDを使いながら説明します。これらは一見地味ですが、かなりカラフルな音の世界が繰り広げられます」と話し、まずは公演の最初のプログラムである渡辺浦人氏の交響組曲『野人』を紹介しました。

 

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渡辺氏は素晴らしいオーケストレーションの技術をもった作曲家にもかかわらず、その名は音楽の世界でほとんど知られていません。

名作『野人』も、かつては国内外で高く評価され、数多く演奏をされた記録があるのに、戦後はほとんど演奏されなくなってしまったのだそう。

 

そんな渡辺氏と、大友さんは小学生の頃に父の知人の紹介で出会ったことがあるそうで、渡辺氏本人からサインの入った『野人』の楽譜をもらい、楽曲も何度もLPで聴いたのだそうです。プロジェクターには、このときにもらった楽譜が映し出されました。

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そうした思い出深い『野人』の旋律を、大友さんは「オールドファッションでとても聴きやすく、一度聴いたら忘れられない魅力があり、変拍子も混じってワイルドな印象もあります」と分析。

一方で「単調な曲調とも言える」のですが、あるとき、大友さんは知人から「昔よく聴いていた渡辺浦人の『野人』を久しぶりに聴きたい」と言われて、改めてこの曲の魅力に気付いたのだとか。そんなことから、今回もこの『野人』を公演のプログラムに入れることにしたのだそうです。

 

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こうした経験も踏まえ、大友さんは「音楽で大切なのは知識人の評価よりも、聴いている人、演奏している人の心を本当に捉えられる“感動する”曲か、ということ」と話します。今回は長い間世間で忘れ去られていたものの、素晴らしい作品である『野人』を演奏することで、「戦前にこんな作曲家がいたことを知っていただけたら」というのが大友さんの思いです。

 

 

 

次に紹介したのが、2つめのプログラム、ドヴォルザーク『チェロ協奏曲ロ短調 作品104(B.191)』。数々の名曲を残した作曲家ですが、なかでもこの『チェロ協奏曲』は世の中のチェロ協奏曲のなかで最高傑作と評価する人が多い作品なのだとか。実際、大友さんもそう思っているそうです。

 

というのも、ヴァイオリンやピアノに比べて音域が低く大きな音が出ないチェロをオーケストラと混じり合わせたり独奏で響かせたりするのは、作曲家としてかなり高い技術が求められるのですが、この作品はその点が素晴らしいのだそう。

そんなチェロパートを、今回は日本で最も注目されている若手チェリスト・宮田大さんが演奏します。

 

大友さんはこれまでに何度も宮田さんと共演経験があるそうで、「実に素晴らしいドヴォルザークを弾く演奏家」と評価します。

相当なキャリアを積み数え切れない演奏を重ねているのに、毎回いろいろなことにチャレンジをしながら鮮やかな演奏を披露してくれるのだとか。

4月17日の公演ではどんな演奏を届けてくれるのでしょう。

 

続いて紹介したのが、3つめのプログラム、ストラヴィンスキーのバレエ組曲『ペトルーシュカ』。

20世紀に活躍した作曲家の中ではもっとも有名とされ、輝きに満ちた生涯を送ったストラヴィンスキーの生い立ちやバレエ音楽との出会い、『ペトルーシュカ』が生まれた背景などを紹介されました。

 

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『ペトルーシュカ』は悲哀を描いたバレエ作品ですが、「音楽は鮮やか」と大友さん。

それに、ストラヴィンスキーの作品がおもしろいのは、すべてがロシア民謡を基調としているので聴きやすい旋律とリズムであることだそうです。

ただし楽譜は極めて複雑で、大友さんは指揮者としてデビュー間もない20代の頃にこの『ペトルーシュカ』を指揮し、

あまりの難しさに全くうまく演奏できなかった悔しい思い出があるのだとか(プロジェクターには譜面が映し出されました)。

 

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以来、この『ペトルーシュカ』を演奏するのは避けてきたそうですが、当時から30年が経過し、「そろそろリベンジしよう」と思い立ったのが、なんと今回なのだそう。かなりの気合も入っているそうで、これまたどんな演奏が繰り広げられるのか楽しみです。

 

また、今回は自身で作曲も行うピアノの名手、長尾_洋史さんが演奏します。大友さんは初共演だそうで、楽しみにしているのだそう。

 

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「今回の3つのプログラムはおもしろく刺激に満ちています」と大友さん。

そして、音楽と地域との結び付きも大切にしていると話す大友さんの一つひとつの言葉から、大友さんの音楽への情熱も感じられるワークショップでした。

4月17日の公演もどうぞお楽しみに。