サントミューゼ(上田市交流文化芸術センター・上田市立美術館) おかげさまでサントミューゼは10周年

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【レポート】生で聴く のだめカンタービレの音楽会 オーケストラ版vol.5

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会場
サントミューゼ

生で聴く のだめカンタービレの音楽会 オーケストラ版vol.5

指揮者:茂木大輔 ピアノ:高橋多佳子 管弦楽:群馬交響楽団

2021年12月3日(金)18:30~ サントミューゼ 大ホール

 

サントミューゼでは5年目となる「のだめカンタービレの音楽会」。ベストセラー漫画『のだめカンタービレ』の執筆にあたり取材協力を行うとともに、ドラマ・映画のクラシック音楽監修を手掛けた指揮者の茂木大輔さんが企画する音楽会です。

 

今回は、のだめがミルヒー(シュトレーゼマン)の指揮で世界デビューを果たした際のショパン「ピアノ協奏曲第1番」とブラームスの「交響曲第4番」を再現。ともにロマン派でありながら、テイストの違うふたりの作曲家の大曲です。

 

コロナ対策のために1席ずつ座席を空けた上で、大ホールは満席に。また、ホワイエには、のだめファンにはおなじみのマングースの着ぐるみが登場。一緒に写真を撮ろうと、お客さまの長い列ができました。

 

©二ノ宮知子/講談社

 

 

 

照明が落ちると、まずは大型スクリーンの映像による導入です。マングースが登場し、映画『スターウォーズ』のオープニングのようにテロップが流れ、ミルヒーが“のだめ”をデビューへと誘う漫画のシーンへ。

 

1曲目はショパンの「ピアノ協奏曲 第1番」。演奏するのは、今年の「のだめカンタービレの音楽会 ピアノ版」にも登場した高橋多佳子さんです。この曲は、高橋さんがショパン国際ピアノコンクールで5位入賞を果たした際に弾いたコンチェルト。今年の同コンクールでは、反田恭平さんと小林愛実さんも弾き、大いに話題になりました。

 

演奏が始まると、そのタイミングに合わせスクリーンに「序奏部」、「主題提示部」・・・と文字が浮かびます。クラシック音楽に詳しくない人にも楽曲をより深く楽しんでもらえる仕掛けです。

 

 

ショパンが20歳で書いたこの曲は、彼自身がポーランドを発つ前の「告別演奏会」で初演しています。マズルカやポロネーズを取り入れた堂々たる第1楽章、“理想の女性”コンスタンツィアを音楽で肖像画化したと言われるロマンティックな第2楽章、そして弦楽器の太い音に軽やかなピアノが弾ける華やかな第3楽章と、故郷への愛と国外演奏旅行への意気込みが感じられる、規模の大きい作品です。

 

高橋さんの丁寧で熱のこもったピアノで、その規模の大きさとショパンのエッセンスがホールに響き渡ります。群馬交響楽団の演奏も素晴らしく、高橋さんは演奏後、「最初のオーケストラパートで感動して震えていました」と心からの称賛の言葉を送りました。また、「ワルシャワのお客様は、上田のお客様同様、とても温かかったです」と、ショパンコンクールの体験談を交えてステージを包む会場の空気を表現しました。

 

 

 

 

高橋さんのアンコールは、スクリーン上では「ワルツ 第6番」としか表示されません。弾きだして初めて「子犬のワルツ」であることが分かります。大曲と好対照のかわいらしい作品で、ショパンの軽やかさと優美さを高橋さんが余すことなく表現します。上田にもファンの多い高橋さん、長い拍手に送られてステージをあとにしました。

 

休憩をはさんで、群馬交響楽団によるブラームスの交響曲第4番です。シンプルな構成とコンパクトな規模ながら、ブラームスらしい緊張感と重厚さは第1楽章から存分に発揮されます。リヒャルト・シュトラウスが「どこからどこまでも本当のブラームス」「巨人のような作品」と言い表わしたのも納得です。

 

第2楽章は時間的・空間的な広がりを感じさせるホルンの響きで始まります。どこか懐かしさを覚える古い教会旋法を使っているのが特徴です。

 

第3楽章は陽気で爆発的なスケルツォ。ティンパニ以外で唯一の打楽器であるトライアングルが、トリルと16分音符を使い分ける繊細な演奏で入ってきます。華やかなまま終わって第4楽章は一転、荘厳で決然とした曲想に。冒頭8小節は「祈りの旋律」と呼ばれ、楽器や音域を変えて繰り返されます。どうにもならない苦しみの中でもがくような宗教的で切実な最終楽章は、聴く者の胸を打ちます。

 

曲は突然の幕切れのように終わり、大きく長い拍手が鳴り響きます。アンコールは、『のだめカンタービレ』を代表する曲であるベートーヴェンの交響曲第7番から第1楽章と第4楽章の抜粋。茂木さんが客席に手拍子を促し、スクリーンにはのだめと千秋の数々の思い出が映されます。

 

お客様に感想を伺いました。

母娘でいらしたおふたりは「ドラマも漫画も見るほどファンなのですが、コンサートは今回が初めてです。シーンが蘇りますね」と満足そうでした。

幼い息子さん2人と軽井沢から来たという男性は、「下の子が音楽をやっています。初めてのオーケストラコンサートを楽しんでいたようです」と笑顔で答えてくださり、上のお子さんも「楽しかった」と喜びの表情で応じてくれました。

 

 

【プログラム】

ショパン/ピアノ協奏曲 第1番 ホ短調 作品11

ブラームス/交響曲 第4番 ホ短調 作品98

 

【ソリストアンコール】

ショパン/ワルツ 第6番「子犬のワルツ」

 

【オーケストラアンコール】

ベートーヴェン/交響曲 第7番(抜粋)