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【レポート】塚越慎子 マリンバ・リサイタル~豊かな響き、心躍る、魅惑のマリンバ~

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【レポート】塚越慎子 マリンバ・リサイタル~豊かな響き、心躍る、魅惑のマリンバ~

1月15日(土)

 

マリンバの豊かな音世界を堪能するリサイタルが開催されました。演奏は現在最も注目を集めるマリンバ奏者の一人、塚越慎子さん。パリ国際マリンバコンクール第1位をはじめ国内外のコンクールで数々の賞を受賞し、ソロ活動の他に国内の名だたるオーケストラとの共演でも高い評価を得ています。

 

共演するピアニストの武本和大さんと笑顔で登場。最初の曲「剣の舞」は観ている側も息をするのを忘れてしまいそうなスピード感で、一気に気持ちを高めてくれます。疾走感の中でも二人ともにこにこと楽しそうな表情。息ぴったりの演奏を聴かせてくれました。

 

 

 

「不安な状況が続く中、こんなにたくさんの人に集まっていただいて、本当に嬉しく思います」

笑顔で挨拶した塚越さん。この日は久しぶりに座席収容率100%(座席の間隔なし)でチケットを販売し、ほぼ完売。期待の高さがうかがえます。

 

2曲目はサン=サーンスの「白鳥」。先ほどの曲とは打って変わって、波のような優しい調べを奏でます。一人で演奏しているとは思えないほど、厚みのある音色を聴かせてくれました。

 

前半の中盤で登場したのが、武本さんによるオリジナル曲「トランキュリティ」です。

「ジャズ奏者として引っ張りだこの武本さん。お忙しい中、今日のリサイタルのために年末年始の休みを返上して作曲してくれました!」

と塚越さん。できたばかりの新曲に、会場からも大きな拍手が。

 

「新しいジャンルに挑戦しました」と武本さんが語る曲のテーマは“静寂”。水面に雫が落ちて波紋が広がるような、静かな始まり。ピアノとマリンバの音が、一本の線を描くように美しく重なります。繊細さとダイナミックさがさまざまな感情を掻き立て、1本の映画を見ているかのようなひとときでした。

 

続いてはマリンバのソロで「サルサ・メキシカーナ」を。塚越さんはこの曲を「6本マレット」、つまりマレットを片手に3本ずつ持って演奏しました。

 

マリンバの演奏方法の主流は、2本マレット(片手に1本ずつ)か4本マレット(片手に2本ずつ)。6本マレットはピアノで言う白鍵と黒鍵を同時に叩くことが難しいため、プロ奏者でもあまり使わない方法です。しかし塚越さんは「演奏の幅を広げたい」と、ステイホーム期間を活用して6本マレットの演奏を勉強したそう。

 

 

 

躍動的なサルサのリズムに乗って両腕をのびやかに広げ、6本のマレットを使い尽くしながら繰り広げる音の世界。両足にも鈴と木の実の楽器をそれぞれ装着し、足踏みすることで華やかにリズムを刻んで、全身でダイナミックに音楽を奏でます。一人で生み出しているとは思えない、にぎやかで楽しい世界。和音はもちろん単音も繊細で美しく、6本のマレットをどのように操っているのか不思議になるほど。

 

演奏後、会場からは大きな拍手が贈られました。息が上がりながらも爽やかな笑顔の塚越さん、「けっこうな運動量でした」と笑います。

 

第一部の最後は、塚越さんと武本さんにとって思い入れのある曲「デルタ・リブラ」。作曲は世界で活躍するジャズ作曲家、挾間美帆さん。二人と同じ国立音楽大学出身で、塚越さんは学生時代から仲が良かったそう。塚越さんが初めて挾間さんに作曲を依頼して生まれた曲です。

 

「美帆さん自身もおっしゃっていますが、狂気的に難しい曲です(笑)。けれどすごく美しいメロディーと、まわりを引き込むパワフルさがある。クラシック音楽にはない、おしゃれな和音も楽しめます」

 

一音一音に存在感を感じる緻密な音の世界。静かに、丁寧に、そしてダイナミックなうねりで魅了します。マリンバとピアノの小気味よい掛け合い、展開が予想できない心地良い緊張感、流れるようなリズムに乗った美しいハーモニー。演奏する姿そのものも力強く、音と一体となって会場を包みます。挾間さんが塚越さんに抱く「大スター」「周りを引き込む(魅了するパワー)」というイメージから生まれた曲だという解説にも納得です。

 

第2部は、弾むようなリズムの「火祭りの踊り」でスタート。ベートーヴェン「悲愴」の第2楽章は「温かな雰囲気がマリンバと合う」と塚越さんが話す通り、曲の穏やかさ、優しさを最大限に引き出す演奏でした。続く「トルコ行進曲」はジャズの要素を取り入れたアレンジ。粋で軽やかで、音楽の楽しさを全身で表現する2人の姿に惹きつけられます。演奏後、思わず「楽しいですね!」と笑う塚越さんに、会場から大きな拍手が贈られました。

 

そして前半に続いてもう一曲、武本さんのオリジナル作品。ステイホーム期間中に生まれた「アズ・タイム・ゴーズ・オン」です。

「コロナ禍で今まで当たり前だったことが当たり前でなくなり、時間の残酷さを強く感じました。同じ24時間でも、楽しいことも悲しいことも起こる。そんなことを曲にしました」

と武本さん。この曲の楽譜が塚越さんに届いたのは、なんと今年の元旦。「最初に一人で演奏してみて、なんて美しいメロディーなんだろうと。一方で不気味な感じもあったんです」と塚越さん。けれど二人で音を合わせてみると、曲のイメージががらりと変わったのだそう。

 

地の底から響くようなピアノの低音から始まり、美しさと不穏さ、迷い、光、さまざまなことを想起させるメロディー。全編通して、時間を表すピアノの低音が同じリズムで鳴り続けているのが印象的です。それぞれのソロ演奏も素晴らしく、二人の心模様をのぞいているかのよう。ラストは場内が一瞬暗闇に包まれる演出で、時間の無常さを感じました。

 

続く「うさぎとかめ」は、一転して明るくジャジーな調べ。洒脱でグルーヴ感あふれるメロディーに、踊り出したくなります。「オブリビオン」は、タンゴの帝王・ピアソラの曲の中で塚越さんが一番好きな曲。悲哀を感じる美しいメロディーです。

 

最後を飾る曲は「チャルダッシュ」。哀愁漂う魅惑的なメロディーと軽やかなテンポ。複数のマレットを使い分けて音色を変化させ、マレットの柄の部分で演奏したときは客席にどよめきが起こりました。

 

鳴り止まない拍手に応えてアンコールで演奏したのは、丸子文化会館のコンサートで好評だった「ラプソディ-・イン・ブルー」!たった4本のマレットとは思えないほど複雑で重層的な音色、洒脱で色気のあるリズム、ピアノと語り合うようなドラマティックなやり取り。ラストは全身のエネルギーを使った渾身の演奏で大団円を迎え、この日一番の拍手が贈られました。

 

 

 

終演後、お客様に感想を聞きました。塚越さんと武本さんが小学校で行ったクラスコンサートや丸子文化会館でのコンサートをきっかけに心惹かれてこの日も来場したという小学生の女の子は、「『白鳥』の演奏にすごく癒された」と話してくれました。

千曲市から来場した女性2人は「ただただ感激しました。あれだけ多くのマレットを使い分けて演奏する激しい音や柔らかい音を、聴いているだけで涙が出そうでした」「『悲愴』はマリンバで初めて聴いたけれど、とても良かった。『剣の舞』は繊細さと豪快さの両方を感じることができました。ピアニストの方も素晴らしかったです」と喜びを持って話してくれました。

 

〈プログラム〉

ハチャトゥリアン / 剣の舞
C.サン=サーンス / 動物の謝肉祭より「白鳥」
武本和大 / トランキュリティ
ベートーヴェン(ブリューアー編曲) / エリーゼのために
ステンスガード / サルサ・メキシカーナ(マリンバ・ソロ)
挾間美帆 / デルタ・リブラ

ファリャ / 火祭りの踊り
ベートーヴェン / ピアノソナタ第8番より「悲愴」第2楽章
モーツァルト(サイ編曲) / トルコ行進曲
武本和大 / アズ・タイム・ゴーズ・オン
納所弁次郎(佐久間あすか編曲) / うさぎとかめ
ピアソラ / オブリビオン
モンティ / チャルダッシュ

 

【アンコール】

ガーシュイン / ラプソディ-・イン・ブルー(抜粋)