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【レポート】群馬交響楽団 上田定期演奏会 ー2022春ー(第576回 群響定期演奏会プログラム)~オール・チャイコフスキー・プログラム~

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群馬交響楽団 上田定期演奏会 ー2022春ー(第576回 群響定期演奏会プログラム)~オール・チャイコフスキー・プログラム~

3月20日(日)15:00開演 サントミューゼ大ホール

 

群馬交響楽団の素晴らしい音楽が、今年もサントミューゼに響き渡りました。指揮は日本を代表する指揮者として82歳となった今も活躍を続ける炎のマエストロ、コバケンこと小林研一郎さん。この3月で群響ミュージック・アドバイザーの任期を終える小林さんと群響の集大成となるコンサートです。

 

注目のプログラムは、小林さんが得意とするチャイコフスキー作品。期待の高さを物語るように、大ホールは多くのお客様で埋め尽くされました。

 

前半の演目は「ロココの主題による変奏曲 イ長調 作品33」。ソリストに迎えるのは、人気・実力とも国内トップクラスのチェリスト、宮田大さん。小林さんとの共演歴も数多く、小林さんが最も信頼を寄せる演奏家の一人です。

 

 

 

 

オーケストラの皆さんが揃うステージに、笑顔で現れた小林さんと宮田さん。美しく穏やかなヴァイオリンと温かなホルンの調べで、曲が幕を開けました。宮田さんのチェロが存在感を表しながら、情感豊かに音を奏でます。

 

この作品は一般のチェロ協奏曲に比べて独奏チェロに演奏の比重が置かれ、音楽的にも技術的にも独奏の力量が問われます(群馬交響楽団事務局の解説より)。確かにソロパートは圧巻!5オクターブと3度に及ぶ音域を、歌うように、他の楽器と対話するようにいきいきと奏でます。

 

プログラムノートには「楽譜を見るとヴァイオリン協奏曲かと思うような難しい技巧があちこちで要求されている」とありますが、高いテクニックを存分に発揮しながらものびのびと歌うチェロの音は「こんなにも多彩な音が鳴らせるのか」と感動を覚えるほど。

 

小林マエストロの情熱的な指揮のもと、表情豊かに歌うチェロ。まばゆい光のように現れるヴァイオリンの音の輝き。民族的なリズムで響く音の重なりに魅了され、フルートの調べに心が躍る。終盤、宮田さんが全身全霊で奏でる起伏に富んだソロ、それを受け止めるオーケストラの華やかな音色が壮大なうねりを描き、フィナーレへと至ります。

 

タクトを降ろした小林さんが力強く拳を握る、その動きと充実した表情から思いの強さが伝わります。会場中を大きな拍手が包み、いつまでも鳴り止みません。宮田さんを、そしてホルンやフルート、ファゴットなど各パート奏者を讃える小林さん。

 

 

 

やまない拍手に応えて、宮田さんがアンコールのソロ演奏を聞かせてくれました。曲は宮沢賢治作曲「星めぐりの歌」。抒情的なメロディーが空間いっぱいに広がり、はかなく消えていく。胸に染み入る音色は、世界が混乱のなかにある今、音楽の深さや豊かさを改めて感じさせてくれました。

 

休憩を挟んで後半の演奏は、チャイコフスキーの代表作「交響曲 第5番 ホ短調 作品64」。オーケストラの名曲として名が挙がることの多い作品です。

 

2019年夏にサントミューゼで行われた「群馬交響楽団 上田定期演奏会」では、奇しくも小林さんの指揮で第4番が演奏されました。あれから3年。それに続く作品の演奏に期待が高まります。

 

重く暗い序奏から始まった第1楽章。そこから広がる美しいメロディー、心地よく響く低音の輝き、重く踏みしめるようなリズム。同じメロディーが表情を変えて何度も登場し、チャイコフスキーの豊かな音世界に魅せられます。

 

 

 

 

第2楽章。温かく、朗々と響くホルンのソロが印象的な始まりです。クラリネットやオーボエの凛とした音色が折り重なり、温かさと寂しさが同居したしみじみとしたハーモニーを奏でます。ラストは壮大なハーモニーから華やかなクライマックスへ。

 

交響曲の楽章にワルツを配置した珍しい第3楽章。プログラムノートには「バレエ『眠りの森の美女』を同時並行で作曲していたことと関係あるかもしれない」とあります。美しく、時に激しく、華麗なダンスを連想させるワルツの調べ。金管楽器の響きが印象的でした。

 

第4楽章は躍動感あふれる音の高まりに何度も心を掴まれました。ティンパニが威厳を持って打ち鳴らす鼓動のようなリズム。波のように押し寄せるヴァイオリンの響き。小林マエストロの気迫が伝わってきます。明るく堂々としたメロディーが情熱的な高まりを見せました。

 

多くの人が立ち上がり、頭上で、胸の前で、惜しみない拍手を送ります。客席に生まれた感動はいかばかりか。スタンディングオベーションと、降り注ぐ雨のように鳴り止まない拍手が、その大きさを物語ります。

 

 

 

 

各楽器の奏者を立ち上がらせ、讃える小林マエストロ。興奮冷めやらぬ中、こんな言葉を送ってくれました。

 

「今日は、ようこそおいでくださいました。今回、私たちの上田の演奏会の中では一番多くのお客様が入ったそうで、嬉しく思っています。

 

コロナの逆風に負けてはいられません。心のうちを出して、皆さんの心といつか、つながっていく必要があります。今日の皆様の大きな拍手、聴いていただいている時の息づかいが、私の背中にひしひしと突き刺さってまいりました。本当に感謝申し上げます。

 

お別れに。今はウクライナで色々なことがあり悲しいですが、いつかいい時が来ると信じております」

 

アンコールに演奏したのは、祈りの唄として知られるアイルランド民謡「ダニー・ボーイ」。温かで美しいメロディーが会場全体を優しく包みます。暗いニュースが世界を覆っても、音楽と共に平和を祈りたい。そんな強い気持ちを与えてくれました。

 

 

 

 

終演後、会場にお越しのお客様に感想を聞きました。小林マエストロが好きで、上田での演奏会は必ず足を運んでいるというお二人。「今回で小林さんが任期を終えるということもあり、感極まる思いでした」と話してくれました。

「小林さんの一番の得意のチャイコフスキーで、楽しみにしていました。チェロの宮田さんもとても素敵で、アンコールの『星めぐりの歌』も素晴らしかった」

「(3.11が近かったこともあり)東北の方へのエールでもあったのかなと思いました」

 

素晴らしい音楽を届けてくれた群馬交響楽団、小林マエストロ、宮田さん。そしてロシアが生んだチャイコフスキーの素晴らしい音楽。かの国の動向に世界が混乱を極める中、それでも音楽の輝きは普遍的であること、一つひとつの音の重なりが大きなうねりを作ることを教えてくれたコンサートでした。

 

〈プログラム〉

チャイコフスキー/ロココの主題による変奏曲 イ長調 作品33

チャイコフスキー/交響曲 第5番 ホ短調 作品64

 

【アンコール】

▼ソリストアンコール(チェロ:宮田大)

宮沢賢治/星めぐりの歌(宮田大アレンジ)

 

▼オーケストラアンコール

ダニー・ボーイ