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【レポート】金子三勇士 ピアノ・リサイタル ~ピアニスト金子三勇士の「今」 原点 × 挑戦 ~サントミューゼ編

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金子三勇士 ピアノ・リサイタル ~ピアニスト金子三勇士の「今」 原点 × 挑戦 ~ サントミューゼ編

2022年5月14日(土)14:00~ サントミューゼ小ホール

 

 

ピアニスト金子三勇士さんの今年のリサイタルは、「原点」と「挑戦」がテーマ。バロックから近現代まで、幅広い楽曲が並びます。

 

当日は、バルコニー席も含め多くのお客様で埋めつくされました。照明が落とされて暗闇に包まれた会場にピアノの音色が。バッハの『G線上のアリア』です。聴覚が研ぎ澄まされ、いちばん後ろの席でも演奏者のタッチや息遣いまで聞こえそうなほどです。最後の一音が消え入るところでそっと明かりがつきました。

 

マイクをとった金子さんは、今回のテーマに決めたいきさつを教えてくれました。デビュー10周年という節目にコロナ禍が重なったこの2年、金子さんは一堂に会して時間を共有することの貴重さを改めて感じたそうです。困難な時間を乗り越えたあとには、きっと世界は原点回帰と挑戦に向かうだろうと思い至り、音楽を通してそのテーマを発信することにしました。

 

 

2曲目もバッハの『インヴェンション』です。幼少期に泣きながら練習したこともあるこの曲集に、コロナ下で再び触れた金子さん。「弾き切ったあとに見える風景があることに気づきました。プロである今、全15曲を弾き通したいと思い、選曲しました。」金子さんの事前のお話通り、何も考えずにただ音楽に身を委ねていると、この心地よい時間が無限に続くように感じられてきます。

 

次は、シューベルトの『アヴェ・マリア』をリストが編曲したものです。聖母マリアに捧げる祈りの曲は、ピアノ1台とは思えない広がりと色彩を感じさせます。特に低音の厚みが印象的です。

 

後半はリストからはじまります。リストといえば金子さんのルーツと同じ、ハンガリー。「『ハンガリー狂詩曲』は上田では10回以上演奏しています」とのことで、今回はあえて『スペイン狂詩曲』です。ハンガリーと同じフン族であるバスク民族の舞曲を取り入れたこの曲は、「ここまでやるかというくらい超絶技巧」なのだとか。「リストの時代のピアノは今よりもパワーがなく、今演奏すると当時の限界を感じます。そこで今日は、現代のピアノの限界まで挑む“金子アレンジ”でお届けします」。強いアタックではじまり、華やかで絢爛豪華な世界が広がります。かと思うと哀感たっぷりのフレーズもあり、再び火を噴くような演奏でたっぷりと聴かせます。

 

 

5曲目はシューマンの『献呈』。金子さんの十八番のひとつで、公式YouTubeでは16万5千回の再生回数を誇っています。シューマンが妻クララに捧げた歌曲をリストが編曲。終盤に『アヴェ・マリア』が隠れているこの編曲は、今回のプログラムの妙を感じさせます。

 

最後は、金子さん編曲のガーシュウィン『ラプソディ・イン・ブルー』です。「授業で作曲も学びましたが、超一流の作品に触れていると自分で作ろうという気がしなくなるんです。でも、コロナ禍で演奏の機会が失われ、ふと編曲をやってみようと思いました」と、編曲に挑戦したきっかけを話してくれました。いざ取りかかると、原曲をよく知った上で、ミリ単位で調整しなければならない編曲の難しさを痛感したそうです。

 

そうして格闘した曲のひとつが『ラプソディ・イン・ブルー』です。途中で入る即興は、ジャズピアニストならお手の物ですが、クラシックピアニストにとっては必ずしもそうではありません。金子さんは「即興に入る前に合図をします」と、左腕を掲げてみせました。大曲を前にチャーミングなところを見せる金子さんに、会場は笑顔で応えます。

 

 

いざ鍵盤に向かうと、間髪入れず演奏へ。ジャズの軽やかさに金子さんのクラシックピアノの流麗さが合わさり、唯一無二の音楽が立ち上ります。圧巻の即興から、華々しいラストへ。演奏が終わると、文字通り万雷の拍手が会場を埋め尽くし、スタンディングオベーションする方もいます。

金子さんは、今回の“挑戦”の相棒となったグランドピアノをねぎらうようにそっと撫でました。

 

 

 

アンコールは「初心を忘れてはいけない」と、バッハの『プレリュード』を。最後、鍵盤の蓋を閉めてステージを後にしました。

 

お客様に感想を伺いました。

女性と男性の3人グループは、開口一番「プログラムがとても素敵でした。前半は癒されて、『ラプソディ・イン・ブルー』は好きなので嬉しかったです。トークにも磨きがかかっていましたね」と笑顔で答えてくれました。

ピアノを習っている中1のお嬢さんはお母様と来場されました。「まさにインヴェンションを練習しているところで、金子さんは軽やかに弾いていてすごかったです」。「小ホールでは娘の発表会で聴いたことはありましたが、プロの演奏は初めてです。生で聴けるのはやはりいいですね」と話してくれました。

 

 

【プログラム】

バッハ:G線上のアリア

バッハ:インヴェンション(全15曲)

シューベルト=リスト:アヴェ・マリア

リスト=金子三勇士:スペイン狂詩曲

シューマン=リスト:献呈

ガーシュウィン=金子三勇士:ラプソディ・イン・ブルー

 

【アンコール】

バッハ:プレリュード