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【レポート】酒井有彩 クラスコンサート at 上田市立傍陽小学校

アーティスト・イン・レジデンス

【レポート】酒井有彩 クラスコンサート at 上田市立傍陽小学校

6月13日(月)

 

今年度のレジデント・アーティストとして、地域ふれあいコンサートや7月にはサントミューゼでのリサイタルを予定しているピアニストの酒井有彩さん。この日は傍陽(そえひ)小学校を訪れ、5年生の子どもたちの前でクラスコンサートを行いました。

 

拍手に迎えられ、にこにこと登場した酒井さん。最初に弾いたのは「トルコ行進曲」です。

 

 

軽やかに響くなじみのあるメロディーに、「知ってる!」という表情で顔を見合わせる生徒も。

 

演奏後は自己紹介をしてくれました。現在は東京と奈良を行き来しながら演奏活動を行う酒井さん、今年は上田にもよく訪れていて「今日もとても楽しみに来ました」と話してくれました。

 

「モーツァルトはオーストリア出身なのに、なぜこの曲に『トルコ』という名前をつけたんでしょう? 実は曲ができた当時、ウィーンで“トルコブーム”が起きていたんです」

 

打楽器が活躍するトルコ楽隊のブームを取り入れて作られたこの曲。もう一度弾きながら、「この部分が大太鼓」「この部分が小太鼓」「ここから太鼓やシンバルが一斉に合奏します」と、フレーズを分解して解説してくれました。なるほど、まるで小さな楽団が音を奏でているかのようです。

 

続いて、ピアノの仕組みについて。鍵盤を押すと内部にあるハンマーが押し上げられて弦に当たり、音が出る……という普段はなかなか目にしないメカニズムを、アクション模型を使って分かりやすく解説してくれました。

 

 

 

さらに「ピアノは自然界の素材を使って美しい響きを作っているんです」と、素材を当てるクイズも。弦に当たるハンマーには羊毛、ローラーにはシカの革、接着剤にも牛や馬の脂、ゼラチンが使われているのだそう。

「羊の毛を使うから、まろやかな音になるんですね。1台のピアノに羊3匹分の毛が使われているんですよ」

そう話すと、子どもたちも先生もびっくりした表情に!

 

次の曲の演奏前、「目をつむって聴いてください」と話した酒井さん。

「想像してください。今、みなさんは公園にいます。季節は?天気は?時間は何時ごろ?想像しながら聴いてみてください」

 

弾き始めたのは、ショパン作曲「エオリアン・ハープ」。清らかなせせらぎのような、風で梢が揺れているかのような、優しい音の波に包まれます。窓の外から聴こえる本物の鳥の声と響き合って、とても心地の良いひとときでした。

 

 

 

弾き終えた酒井さんが子どもたちに「どうだった?」と問いかけると、思い思いの答えが返って来ました。「春から夏の変わり目」「青空が広がっている感じ」「明るい光が入っている感じ」……。それぞれ、違う感じ方をしていることが分かります。

 

「私もいつも音を出す前、この曲はどんな景色だろう、どんな物語があるんだろうとイメージを膨らませてから最初の音を出します」

 

作曲者のショパンは20歳で祖国ポーランドを離れ、亡くなるまで戻ることはありませんでしたが、いつも母国を想っていました。そんなショパンの音楽は「感情がダイレクトに伝わってくる気がして、大好きな作曲家です」と酒井さん。

 

そんなショパンの「ノクターン 第13番」は、大きく分けて3つの部分から成り立つ曲。まずは最初のフレーズだけ弾いてみせます。

 

「悲しみがあふれる美しいメロディーから始まって、楽しかった記憶を思い出しているかのような幸せなメロディーへ。その気持ちが膨らんで、また悲しいメロディーが戻ってきます。そこに重なる和音が心臓の鼓動のようで、気持ちの揺れを表現している気がする。皆さんも毎日、楽しいだけでなくつらいこと、悲しいこともありますよね。色々な気持ちを想像して聴いてください」

 

「夜想曲」というタイトル通り、夜を思わせるきれいなメロディー。ダイナミックに盛り上がっていく部分は、気持ちが自然と高まります。「たった5分間の曲なのに、すごくドラマチックですよね」と話す酒井さんに、「心を奪われました」と感動を伝える生徒も。

 

最後に、酒井さんの出身地“奈良の音楽”という意味の「ムジカ・ナラ」という曲を。演奏前に登場したのは、酒井さん自身が撮影した奈良・東大寺の4枚の写真です。除夜の鐘やお地蔵様、金剛力士像など、どれも現地の雰囲気が生き生きと伝わるものばかり。

 

「この写真と曲で奈良を旅しているような気持ちになって、風景を自由に想像してみてください」

 

イメージを膨らませて聴く曲は、雅な雰囲気を感じさせたかと思うとコンテンポラリーな要素があったりジャジーな表情も見せたりと、多彩に変化する曲調で楽しませてくれました。アップテンポな部分では、体を揺らしてリズムに乗る子も。鮮やかなストーリーが脳内に浮かんでくるような楽しさがあります。

 

演奏後、子どもたちからは「シカが飛び跳ねている感じ」「低い音のところは、鐘が鳴っているみたいだった」など自由な感想が飛び出しました。写真のビジュアルが想像を膨らませて、いっそうイメージが広がったのでしょう。

 

 

 

音楽を聴いて自然を感じたり、気持ちを想像したり、シーンを思い描いたり。酒井さんの提案する楽しみ方が音楽の扉を開く一つのきっかけになり、子どもたちの心に残ったのではないでしょうか。

 

【プログラム】

モーツァルト:トルコ行進曲

ショパン:エチュード 変イ長調 Op.25-1 《エオリアン・ハープ》

ショパン:ノクターン 第13番 ハ短調 Op.48-1

徳山美奈子:ムジカ・ナラ