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【レポート】群馬交響楽団 上田定期演奏会 -2023春- 『ベートーヴェン~ガーシュウィン~武満 偉大な3人の作曲家たち』

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【レポート】群馬交響楽団 上田定期演奏会 -2023春- 『ベートーヴェン~ガーシュウィン~武満 偉大な3人の作曲家たち』

3月26日(日)15:00開演 サントミューゼ大ホール

 


 

 

春の訪れを告げる、群馬交響楽団の定期演奏会が今年も開催されました。今回はドイツ、アメリカ、日本を代表する作曲家の特徴的な作品を聴き比べる個性豊かなプログラムです。

 

指揮は、ハノーファー北ドイツ放送フィルハーモニー名誉指揮者の称号を持つ大植英次さん。そして注目は、日本のジャズピアニストの第一人者として国内外で活躍する小曽根真さんの登場です。3階まで多くのお客様で埋まった客席は、開演前から熱気に満ちていました。

 

1曲目は日本の作曲家、武満徹による『弦楽のためのレクイエム』です。1957年に完成したこの曲は、急逝した友人の作曲家、早坂文雄に捧げた作品。当時来日したロシアの作曲家、ストラヴィンスキーがこの曲を賞讃したことをきっかけに、世界に“武満徹”の名前が広がりました。

 

弦楽器のピュアな音色の美しさに、心が引き込まれます。哀しみをたたえる重く美しいメロディー。暗い海のようにさざめきながら、心の動きを描き出すようです。ストラヴィンスキーが「きびしい(インテンスな)音楽」と評したように、聴いていて心が研ぎ澄まされるような凛とした音色に魅了されました。

 

モノクロームを思わせる作品に続くのは、一転して彩り豊かな世界。ジャズとクラシック音楽の融合を試みた作曲家、ガーシュウィンの名曲「ラプソディ・イン・ブルー」です。ステージ中央には、グランドピアノが運び込まれました。

 

拍手に包まれて、ピアニストの小曽根真さんが登場。3階席まで見上げて、嬉しそうにお辞儀をする表情が印象的です。

 

クラリネットの有名なフレーズから、魅惑のひとときが始まります。重々しさも軽やかさもある独創的なメロディー。小曽根さんのピアノが、オーケストラの音に乗って生き生きと色を加えます。

 

 

ピアノ・ソロのカデンツァ(演奏者が自由に即興的な演奏をする部分)は圧巻。情熱的に、スピードを持って、かと思えば洒脱に、妖艶に、温かに。ラプソディ・イン・ブルーの世界を心地よく拡張し、別世界を見せてくれるかのようです。音のない「間」にも色が感じられ、次の音を引き立てる。沈黙も音楽の一部であることが伝わってきました。

 

弦楽器が弦の表面を叩く奏法は、目でも楽しませてくれました。その音の上でトランペットが軽妙なメロディーを奏でます。

 

一転して、しっとり「ブルーなメロディー」が登場する場面は、青い夜のとばりに包まれているかのようで、音の一体感に魅了されました。ピアノ・ソロが心地よい柔らかな雨音のように降り注ぎます。

 

ピアノ・ソロの間はオーケストラ奏者もにこやかに音を楽しんでいる様子で、体を揺らしている人もいました。今この瞬間しか味わえない即興のライブ感が楽しく、体温を持って伝わってきます。

 

 

演奏後、大植さんは満面の笑顔。感嘆の声をあげながら小曽根さんと堅い握手を交わしました。客席からは大きな拍手の雨が降り注ぎ、スタンディングオベーションをする方も。

 

 

鳴り止まない拍手に応え、小曽根さんがアンコールにオリジナル曲「Mo’s Nap」を演奏。タイトルは「モーツァルトの昼寝」という意味で、お父さんの夢を見ているモーツァルトをイメージした曲なのだそう。

 

温かなオーケストラのハーモニーに、優しく繊細なピアノ。家族の愛情が伝わってくるようでした。この曲にも長い長い拍手が送られます。客席のあらゆる方向、2階席と3階席にも何度も笑顔でお辞儀を繰り返す小曽根さん。この時間が過ぎるのを惜しんでいることが伝わってきます。最後、ピアノに残された「Mo’s Nap」の楽譜をさっと手に取り、大切そうに胸に抱いてステージを去る大植さんの姿が客席の笑いを誘っていました。

 

休憩を挟んで後半は、また違う世界へ。ベートーヴェンの交響曲 第3番「英雄」です。

凛とした気品と、勇壮さをたたえて始まった第1楽章。続く第2楽章は葬送行進曲で、何かを引きずっているかのように重く、暗いメロディーです。オーボエの主題の美しさが印象的でした。

 

 

壮大な第3楽章は、オーケストラの迫力に魅了されます。明るさと高揚感があり、心地よいリズムに心が沸き立つよう。フィナーレの第4楽章は、勢いとともに勇ましく、心を奮い立たせるようでした。和音が気持ちよく、大きな流れに体も心もゆだねたくなります。

 

演奏後、大きな大きな拍手に応えるように、客席を見上げて何度もお辞儀をする大植さん。個性豊かな3曲を通して、さまざまな色の世界を見せてくれました。

 

 

終演後、会場にお越しのお客様に感想を聞きました。長野市から来られた男性は「とても良かったです。小曽根さんはもちろん、指揮の大植さんも躍動感のある素敵な指揮で、感動しました。」と話してくれました。

 

〈プログラム〉

武満徹/弦楽のためのレクイエム

ガーシュウィン/ラプソディ・イン・ブルー

ベートーヴェン/交響曲 第3番 変ホ長調 作品55「英雄」

 

【アンコール】

▼ソリストアンコール(ピアノ:小曽根真)

小曽根 真/Mo’s Nap