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【レポート】市民参加演劇公演『尼ヶ淵スケッチ』

みる・きく
会場
サントミューゼ

 

市民参加演劇公演『尼ヶ淵スケッチ』

2018年9月23日(日)・24日(月)

大スタジオ

 

 

 

 

 

京都を拠点に全国で活動する劇団『MONO』の代表で劇作家・演出家の土田英生さんが演出する、市民参加型演劇公演『尼ヶ淵スケッチ』を開催しました。

 

この公演の出演募集に応募したのは、9人の市民。そこにMONOの立川茜さんも出演者として参加することになりました。

8月25日、26日には事前ワークショップが開かれ、土田さんが戯曲を書くポイントなどを話しました。

そして9月15日からのわずか1週間で稽古し、本番の日を迎えました。

 

※稽古(台本読み)の様子。

 

 

『尼ヶ淵スケッチ』の舞台は上田市。

とある喫茶店を舞台に、そこに集う9人の男女と喫茶店の女性店員の日常がくり広げられていきます。

大スタジオのステージの真ん中には、まるで木のようにすくっと伸びたカウンターがあり、それを囲むように配された4つのテーブル席。

そこに3組の登場人物が登場し、1つのテーブルごとにドラマが生まれ、それぞれのストーリーが重なり合って進んでいきます。

 

 

とある2組の夫婦は、浮気を問いただすシーンから始まりました。

最初こそシラを切っていた2人もやがてその罪を認めたものの、問いただす側の準備万端さに疑問を感じて反旗を翻すように詰め寄ったらまさかのダブル不倫だった! というストーリー。

夫婦間にしか分からない小さな不満を時にシリアスに、時にコミカルに表現。テンポ良い掛け合いに思わず引き込まれていきました。

 

 

別の席では離婚して上田市を離れる母親と最後の時間を過ごす2人の兄弟が登場。

兄は離婚して自分たちを置いて行く母親に不満をぶつける一方で、弟はそんな兄や母親を大切に思いながらも感情をうまく表現できずに静かに葛藤している様子が見受けられます。

母親はどうにか最後に会う時間を楽しもうと明るくふる舞うものの、空回り。

家族には無関心の父親との思い出をふり返る中に、上田城南側の「尼ヶ淵」での出来事が語られました。

 

 

 

3人の顔がほころび、楽しそうに語る様子が、バラバラになりそうな家族にとってその思い出は大切なものだったであろうことを想像させます。

 

 

残りの1席では妊娠したかもしれない孫と、その話を聞いてあげるおじいちゃんのシーンがくり広げられています。

 

 

おじいちゃんは喫茶店の店員さんに好意を寄せ、毎日その店に立ち寄っています。

この日は困っている孫の話を「うんうん」と相づちを打ちながら、なんでも優しく聞いてあげていました。しかし、おじいちゃんは誰にも話していなかった病気を抱えていました。

残された時間をこれから生まれるかもしれない命、そしてかわいい孫のために使おうと決意。

しかし会話の途中で容態が急変し、救急車で運ばれることに。

 

これら3つのストーリーには、県外から木彫りを学ぶために上田に来たのに、喫茶店でくすぶっている女性店員が加わります。

それぞれ独立して物語は進むものの、店内に差し込む美しい夕日がモチーフになって、別々に展開する物語はひとつに繋がります。

 

 

登場人物はそれぞれの人生の岐路に立ち、失われるものと生まれるものの両面が描かれていた『尼ヶ淵スケッチ』。

どこにでもありそうな喫茶店と日常の物語に、観た人はさまざまな感情を呼び起こされたのではないでしょうか