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【レポート】小野明子~アーティスト・イン・レジデンス

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小野明子~アーティスト・イン・レジデンス~

2019年12月18日(水)・20日(金)

 

2019年度のレジデント・アーティストをつとめるヴァイオリニストの小野明子さん。

お住まいのイギリスから帰国され、12月に5日間上田に滞在し、アウトリーチプログラムにアナリーゼワークショップ、そしてリサイタルと、美しいヴァイオリンの調べを多くのお客様に届けました。

12月18日午前の小学校でのクラスコンサート、夜のアナリーゼワークショップ、そして20日夜のリサイタルの模様をレポートします。

 

今回はいずれも、ピアニスト高橋多佳子さんとの共演でお届けしました。

 

 

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クラスコンサート in 上田市立東塩田小学校

2019年12月18日(水)

 

この日の午前中は東塩田小学校の5年1組、29名の子どもたちを対象に、クラスコンサートを行いました。

子どもたちは音楽室で小野さんと高橋さんを待ちます。

 

登場したお二人は、1曲目の「愛のあいさつ」を披露します。

演奏が終わると自己紹介し、「今演奏した曲は、誰が作ったか知っていますか?」と子どもたちに問いかけます。

おそらく、だれもが一度はどこかで聴いたことがあるメロディですが、なかなか答えが出てきません。

 

正解はエルガーで、小野さんが暮らすイギリス出身の作曲家でした。

小野さんは、ちょうど子どもたちと同じ年頃に初めてヨーロッパに演奏旅行に出かけた思い出を話します。

小学校を卒業して12歳でイギリスのメニューイン音楽院に入学し、以降、ヨーロッパで音楽を学び続け今に至ります。

 

2曲目はヴァイオリン・ソロによるバッハのパルティータ第3番より「ガヴォット」。

音楽室の後方には、歴史を感じさせる作曲家の肖像画が貼られています。

「バッハはどこにいるかな?」という小野さんの言葉に、子どもたちが間髪入れず「あそこ!」と指さします。

曲のイメージを尋ねると、男の子が「お城の中で演奏されているみたいな曲」と答えました。

「ガヴォット」は約300年前に書かれた2拍子の軽やかな曲で、たしかにお城が似合う優雅な雰囲気に満ちています。

 

 

そして、ヴァイオリンという楽器がどういうものなのか、説明していきます。

バッハの「ガヴォット」が書かれるより前、16世紀頃ヨーロッパに広まった楽器です。

「お手伝いしてくれる人いるかな?」という小野さんの言葉に応えて、ふたりの男の子が前に出て、ひとりはヴァイオリンを、もうひとりは弓を持ちます。

 

ヴァイオリンを持った男の子に、f字孔の中がどうなっているか、小野さんが尋ねました。

「ヴァイオリンの中は空洞になっていて、ここで弦の音が共鳴することで、大きなホールでも隅々まで音が届くほどの大きな音が出るんです」

と、ヴァイオリンの音が鳴る仕組みを説明します。

 

 

 

弓を持った男の子に「これは何でしょう?」と尋ねると、「棒」と答えます。

偶然ですが、弓は英語で「bow(ボウ)」なので、ちょっとしたダジャレになって笑いが起きます。

 

ヴァイオリンと弓を子どもたちに回して、実際に触ってもらいます。

 

そして、高橋さんも加わって、ピアノとヴァイオリンの違いについても子どもたちとやりとりしました。

それぞれの楽器の特徴を知ったところで、3曲目に移ります。

 

曲名を告げずに演奏に入り、終わってから「どんな気分で書かれた曲でしょうか?」「曲を書いた季節はいつだと思う?」と問いかけます。

事前の情報がないにも関わらず、「春」「楽しくて愉快な感じ」という感想が、子どもたちから挙がります。

これには小野さんも驚き、200年前に書かれた音楽が現代の子どもたちにも伝わっていることに喜んでいました。

曲はシューベルトの「ヴァイオリン・ソナタ ニ長調」で、1816年の春、3月に書かれたとのことでした。

 

 

4曲目は、クライスラーの「ウィーン風小行進曲」です。

クライスラーはオーストリアの首都ウィーン生まれ。ウィーン繋がりで、小野さんはウィーンの音楽大学で学んだことに触れました。

 

ヴァイオリンには、多彩な奏法があります。

小野さんが、弦を指で弾く「ピチカート」、2つ以上の音を同時に弾く「重音」、弦の上で弓を飛ばす「スピッカート」、弓の木の部分で弦を叩く「コル・レーニョン」など、さまざまな表現方法を実演してみせました。

そのさまざまな表現方法を堪能できるのが、ハチャトゥリアンの「剣の舞」です。おなじみのメロディが、ヴァイオリンの多彩な表現方法によって奏でられます。

 

ここで、子どもたちから質問を受け付けます。

「弓を上から下へ、下から上へ動かしたときに音が違うのはなぜですか?」「二人はずっと一緒にやっていらっしゃるのですか?」と、なかなかに鋭い質問が飛びます。

 

最後は、華やかなモンティ「チャルダッシュ」で締めくくりました。

ピアノとヴァイオリンの音をたっぷり浴びる貴重な経験をした子どもたちは、とても満足そうな表情をしていました。

 

 

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アナリーゼ(楽曲解析)ワークショップ vol.35

2019年12月18日(水)19:00~20:00 サントミューゼ小ホール

 

今回の小野さんのリサイタルは、2つのヴァイオリン・ソナタと、ヴァラエティ豊かな舞曲の小品で構成されたプログラムです。

演奏活動の傍らイギリスの音楽院で教授として後進の指導をしている小野さん。作曲者の写真や楽譜を映写したり、貴重な動画を流したりしながら、実際の演奏も挟みつつアナリーゼを進めました。

 

 

まずは、シューベルト「ヴァイオリン・ソナタ第1番 ニ長調」から。

小野さんがウィーンに留学中だった1997年は、シューベルト生誕200周年でした。

小野さんにとってシューベルトはいまひとつつかみきれない作曲家だったのが、ウィーンでたくさんの演奏会に通い、シューベルトの作品にたくさんふれることで理解が深まったという思い出を語ってくれました。

 

 

シューベルトは19歳の時に、このソナタを含む3曲のヴァイオリン・ソナタを書いています。

この3曲は、当初はアマチュアに楽しんでもらえるように「ソナチネ(注:小さいソナタの意)」として出版されていたそうです。

 

小野さんがウィーン国立大学で勉強していたとき、毎日通りかかっていた教会が実はシューベルトの葬儀を行った教会だったというエピソードも披露してくれました。

 

続いて、映画『2001年宇宙の旅』のオープニング・テーマでもある「ツァラトゥストラはかく語り」と、小野さんが大好きなオペラ「ばらの騎士」の音源が流れます。

どちらも、交響詩とオペラで名を馳せたリヒャルト・シュトラウスの作品です。

 

シュトラウスの「ヴァイオリン・ソナタ 変ホ長調」は、ピアノも非常に難度が高い曲としても知られています。

高橋さんは「私の経験では、ショパンやラフマニノフのチェロ・ソナタが非常に難しかったですが、この曲はそれと同じかそれ以上に難しいです」と、笑顔で打ち明けてくれました。

 

 

父親の影響もあって、かなり保守的な作曲家だったシュトラウス。この曲を書いた20代中盤は、保守性から脱却して自分らしさを追求していく時期でした。

小野さんが「壮大でハイパーロマンティックな曲」「弾いていてワクワクします」と紹介したように、青年期のシュトラウスの若さがほとばしる、フレッシュで華々しい作品です。

また、第2楽章は過去の偉大な作曲家たちへのオマージュがあちこちに顔を出し、自分の音楽を模索している様子が浮かぶようでもあります。

 

ここから、リサイタル後半に演奏される舞曲のアナリーゼに移ります。

 

まずは、バッハ「無伴奏パルティータ第3番」から「ガヴォット」。

バッハと交流のあったヴァイオリニスト、ヨハン・ゲオルグ・ピセンデルの影響が濃いヴァイオリン独奏曲と言われています。

クラシック音楽家にとってバッハの音楽は“聖書”のようなもので、小野さんも教える時は「一生をとおしていつでも弾けるように」と伝えているそうです。

 

続いては、ドヴォルザークの「スラブ舞曲 第2番」とブラームス「ハンガリアン舞曲 第5番」。

ブラームスは演奏旅行の中でロマ音楽に興味を持って採譜し、「ハンガリアン舞曲集」として出版、大成功を収めます。

その後、才能を高く評価していたドヴォルザークにもこうした舞曲集の作曲をすすめて「スラブ舞曲集」が生まれ、ドヴォルザークは作曲家として名声を得たという経緯があります。

どちらも最初はピアノ連弾用として作曲され、その後、さまざまな楽器向けに編曲され広まっていきました。

 

次は、フォーレの劇附随音楽「ペアレスとメリザンド」より「シシリアーノ」。フォーレといえばレクイエムが有名です。

 

 

シシリアーノというのは、イタリアはシチリア起源の舞曲で、抒情的な味わいがあります。

フォーレの組曲「ペレアスとメリザンド」の間奏曲として使われて人気が出て、今もいろんなところで耳にする機会の多い曲です。

そして、ハチャトゥリアンの「剣の舞」。バレエ音楽「ガイーヌ」の中の1曲です。

ここで、1964年にハチャトゥリアン本人の指揮で、ボリショイ・バレエが踊る「剣の舞」のモノクロ映像が流れます。

黒海南方に住むクルド族の出陣前の舞曲で、オリエンタルなニュアンスと戦いへと鼓舞する雰囲気がよく伝わってきます。

 

同じくバレエ「ライモンダ」(グラズノフ)から“グランド・アダージョ”は、主人公ライモンダが夢の中で婚約者と踊るというロマンティックなシーンを表現した曲です。

こちらもその場面のバレエの映像が流れ、曲のイメージを伝えていました。

 

最後は、チャイコフスキーの「ワルツ・スケルツォ」。ワルツが流行していた19世紀後半、この曲はチャイコフスキーと親密な仲だったヴァイオリニスト、イオシフ・コテックにせがまれて書いたとされています。

「私は、この曲がヴァイオリン・ヴァージョンの『くるみ割り人形』じゃないかなと感じています」と小野さんが話すように、バレエへの愛情が垣間見える作品です。

 

「実は、今回が私にとって初めてのアナリーゼでした。緊張して不安でしたが、おかげさまで最後までやり遂げられました」と告白すると、お客様からはねぎらうような拍手と笑顔が送られました。

 

「みなさん、お時間だいじょうぶですか?」と尋ねてから、「今回のリサイタル・プログラムには入れていない曲を1曲だけ」ということで、「チャルダッシュ」を披露。小野さんと高橋さんのドラマティックな演奏で、アナリーゼは終了となりました。

 

 

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小野明子 ヴァイオリン・リサイタル

「ソナタの系譜~受け継がれた輝き~ ふたつのソナタと小品舞曲集」

2019年12月20日(金) 19:00開演 サントミューゼ小ホール

 

小野さんの5日間の上田滞在は、この夜のリサイタルで締めくくりとなりました。

 

拍手に迎えられて登場した小野さんと高橋さんは、「まずは会場の皆様にご挨拶の意味を込めて」ということで、プログラムに記載のないエルガーの「愛のあいさつ」から演奏をはじめました。

 

前半は、まずシューベルト「ヴァイオリン・ソナタ ニ長調」からはじまります。

小学校のクラスコンサートで、演奏だけで子どもたちにもこの曲想や季節感が伝わったことに音楽の力を改めて感じたというエピソードを、嬉しそうに話してくれました。

 

2曲目のソナタはリヒャルト・シュトラウスの「ヴァイオリン・ソナタ 変ホ長調」。

アナリーゼでもお話があったように、ピアノも非常に難しい曲です。今回、小野さんと息の合ったピアノを演奏する高橋さんとは、昨年共演したのが初めてだったのだとか。

「初めてなのに、まるでぴったり合う手袋をはめた時のような感覚に嬉しくなってしまいまして。今回のお話をいただいた時に、ぜひ高橋さんとご一緒したいと思って声を掛けさせてもらいました」

と、高橋さんとの共演の経緯を話してくれました。

 

 

スケール感のある第1楽章、過去の作曲家たちへのリスペクトが感じられる第2楽章、そして、複雑で輝かしい第3楽章と、大作で名声を得たシュトラウスの若い才気を堪能できる、ヴァイオリンとピアノの競演でした。

 

熱のこもった素晴らしい演奏に、長く大きな拍手が送られます。

小野さんと高橋さんは握手とハグを交わし、舞台袖に下がりました。

 

休憩を挟み、第2部が開演。小野さんが舞台に登場し、バッハの「無伴奏パルティータ 第3番」より「ガヴォット」を披露します。

「ガヴォット」とはフランスの一地方ガヴォ(Gavot)に由来する踊りです。

小野さんが初めてこの曲を弾いたのは小学校低学年の時で、以来ずっと弾き続けている大切なレパートリーのひとつだそうです。

 

高橋さんも登場し、ドヴォルザーク「スラブ舞曲 第2番 ホ短調」と、ブラームス「ハンガリアン舞曲 第5番」と続きます。

どちらも民族的な色彩が濃い曲で、緩急のある展開にぐっと心をつかまれました。

 

 

小野さんが一旦下がり、今度は高橋さんのピアノ・ソロでショパンの「ノクターン 第8番 変二長調」が演奏されます。

高橋さんは、2019年1月にサントミューゼで群馬交響楽団と共演し、そして今回の小野さんとの共演で師走の上田に来ることになり、「上田ではじまり、上田で終わる1年でした」と話してくれました。

 

 

高橋さんが得意のひとつとするショパンだけあって、会場がショパン一色に染まるような、しみじみとした演奏でした。

 

 

小野さんが再び登場し、フォーレの「シシリアーノ」、ハチャトゥリアンのバレエ「ガイーヌ」より“剣の舞”、グラズノフのバレエ「ライモンダ」より“グランド・アダージョ”と続きます。

 

今回の上田滞在は、「胸の底から喜びを感じる出会いがたくさんありました」と語る通り、音楽の力を感じる5日間だったそうです。

前夜には公民館でのアウトリーチコンサートがあり、お客様の熱気は最高潮に達し、最後にはスタンディングオベーションで幕を閉じました。

 

最後はチャイコフスキーの「ワルツ・スケルツォ」です。

小野さんが「ミニチュアのヴァイオリン・コンチェルト」と表現するように、中間部に華やかなカデンツァが配されています。

 

客席のそこここからたくさんの「ブラヴォー!」の声が上がり、盛大な拍手が会場を満たします。

小野さんは「ありがとうございます。こんなにたくさん拍手をいただけて嬉しいです」と笑顔をみせます。

 

熱烈な拍手に、小野さんが「2020年が皆様にとって健康で幸せいっぱいの年になりますように」というメッセージで応え、アンコール曲、サラサーテ「ツィゴイネルワイゼン」を演奏します。

 

さらなる拍手に応え、アンコール2曲目はモンティ作曲の「チャルダッシュ」。熱気が残る中、リサイタルは幕を閉じました。

 

 

終演後は小野さんと高橋さんのサイン会が行われました。

お客様との交流を楽しみ、中には高橋さんにピアノを弾くときの手首の使い方を熱心に尋ねる女の子も。

 

漫画『のだめカンタービレ』からクラシック音楽の世界にはまったという男性は、「すごくよかったです。盛り上がりましたね。時間が経つのも忘れて聴いていました」と笑顔で感想を語ってくれました。

シュトラウスの「ヴァイオリン・ソナタ」第3楽章と「シシリアーノ」がとりわけ印象に残ったという女性は、「お二人のお人柄と、相性の良さが演奏を通して伝わってきました」と、リサイタルの余韻を味わっていました。

 

 

【プログラム】

シューベルト:ヴァイオリン・ソナタ ニ長調 D.384

R.シュトラウス:ヴァイオリン・ソナタ 変ホ長調 Op.18

バッハ:無伴奏パルティータ 第3番より「ガヴォット」(ヴァイオリン・ソロ)

ドヴォルザーク(クライスラー編):スラブ舞曲 第2番 ホ短調 Op.72-2

ブラームス:ハンガリアン舞曲 第5番

ショパン:ノクターン 第8番 変ニ長調(ピアノ・ソロ)

フォーレ:シシリアーノ

ハチャトゥリアン:バレエ「ガイーヌ」より“剣の舞”

グラズノフ:バレエ「ライモンダ」より“グランド・アダージョ”

チャイコフスキー:ワルツ・スケルツォ Op.34

 

〈アンコール〉

サラサーテ:ツィゴイネルワイゼン

モンティ:チャルダッシュ

 


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