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【レポート】上田地域定住自立圏連携事業 ~Dual KOTO×KOTO(箏)コンサート in 立科町

みる・きく
会場
サントミューゼ

上田地域定住自立圏連携事業

Dual KOTO×KOTO(箏)コンサートin立科町

 

2018年12月12日(水)19:00開演 at 立科町中央公民館

 

プログラム>

Dual KOTO×KOTO:春の海ラプソディ

山田耕筰(田口和行編):あわてことやのあわてとこや

沢井忠夫:二つの変奏曲より さくら

沢井忠夫:鳥のように

多東康孝:夏休み~冒険、夕焼け

沢井比河流:凛

 

アンコール

ふるさと

 

上田市をはじめ周辺地域の市町村が連携・協力し、人口の定住促進に向けた取り組み「上田地域定住自立圏連携事業」の一環で開かれたコンサート。
この日は沢井忠夫、沢井一恵両氏に指事し、現在は国内外問わず活躍している箏奏者、梶ヶ野亜生さんと山野安珠美さんによるユニット「Dual KOTO×KOTO」が出演しました。

 

上品な色合いの着物に身を包んだ2人が登場し、箏曲「春の海」をアレンジした「春の海ラプソディ」を演奏。
ひと足先に正月を感じる音色でした。

 

 

その後、2人は20年前に箏曲家の沢井忠夫氏の出稽古で出会い、大学卒業後には沢井氏の内弟子として勉強を重ねてきた話しや、現在はユニットとしても活動し、海外でもコンサートを開催しているなど自己紹介。
海外へ行くときには長さがある箏3台をはじめ必要な道具を自分たちで持ち運び移動していることや、肌襦袢を忘れてしまったというエピソードも披露。
「あわてんぼうの私たちの気持ちを反映しているような曲です」という紹介をふまえて演奏した「あわてことやのあわてとこや」は北原白秋作詞、山田耕筰作曲の「あわて床屋」をアレンジして、コンサートのたびに何かしら慌てふためくことが多い梶ヶ野さんと山野さんをテーマに「あわてことや(慌てんぼうの箏屋)のあわてとこや」とタイトルを付けたのだとか。

そんな説明から音楽を聞くと、軽快なリズムの中にもハプニングが生じてドタバタ解決していくようなストーリーが思い浮かぶようでした。

「私たちの旅をご想像いただけましたでしょうか?」という山野さんの言葉に会場からはどっと笑いがこぼれる中、今度は箏の楽器について紹介していきました。
箏は13本の弦があり、可動できる柱(じ)という駒で音の高さを調整していきます。ギターで言うピックのように右指には義甲というつけ爪のようなものをはめて、弦を弾くように演奏したり、左手は押したり引いたりして音に変化を与えていくなどいくつかの特徴を教えてくれました。

 

 

 

つづいて梶ヶ野さんの独奏で「二つの変奏曲より さくら」を演奏。左手で弦を押すと音階が上がったり、離すと下がるなど左手の動きによって滑らかに音が変化する様子を手元から伺い知ることができました。

この左手の動きを体験してもらいたいと客席から町内にお住まいの男性1人をステージに上げました。

実際に弦を押すと音にどのような変化が生まれるのか、右手を山野さん、左手をその男性が担当して童謡「チューリップ」を演奏しました。
最初こそ強く押しすぎて音が急坂を登るように上がりすぎたりしていましたが、途中からは少しコツを掴んだ様子。
それでも「やはり難しかったです」とポツリ。あらためてプロの演奏者の技術力を垣間見た体験になりました。

 

 

 

4曲目は山野さんの独走で「鳥のように」を演奏。

曲紹介を担当した梶ヶ野さんは「小さい頃に初めてこの曲を聴いた時に衝撃を受けました。それまでに聴いていた箏曲は古典的なものが多く、そういった中で新しい風を感じるような曲でした。そのためこの曲はいろんな場所で演奏しています」と語りました。
大空を渡る鳥の力強さ、自由さを感じ取れるような印象深い曲でした。

お二人がアウトリーチ活動で小学校や地域住民に向けてこの曲を披露する時にはタイトルを伏せたまま演奏することがあるそうで、「~のように」とタイトルをイメージするなら何が入るか尋ねてみると「風」や「馬」、さらには「人間のように」「嵐の中に立つ男のように」という言葉なども出てきて、音楽を感じ取る力や発想の面白さに驚いたエピソードを披露しました。

 

続いてはポップスのアレンジャーを手がける作曲家、多東康孝氏による「夏休み~冒険、夕焼け」を演奏。

夕暮れに「もうじき夏休みが終わってしまうな」というイメージを曲にしていて、メロディーがある聴きやすい作品です。
合間には梶ヶ野さんの即興パートもあり、予想外な音のリズムや音階の躍動感に圧倒されました。最後は師匠の息子である沢井比河流氏が作曲した「凛」を演奏。
ハリがある箏の音色がタイトルとリンクする作品でした。

 

すべての曲を演奏した後は、地元の子どもから花束のプレゼントがあり、それを受けてアンコールでは、多くの人に馴染みがある唱歌から「ふるさと」を演奏。
そっと口ずさむ女性の姿や目を閉じて音楽に集中する人など思い思いに曲を楽しんでいました。

終演後には「初めて箏を間近に聴いたけれど、これまでの古典的なイメージとはまた違って聴きやすかったです」「二人のトークも最高でした」と演奏だけではなく、2人の人柄にも触れる人が多かったのが印象的でした。