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【レポート】群馬交響楽団 上田公演 -2019春-

みる・きく
会場
サントミューゼ

群馬交響楽団 上田公演 -2019春-

2019年3月21日(木・祝)15:00開演  大ホール

 

指揮 大友直人(群馬交響楽団音楽監督)

ヴァイオリン レジス・パスキエ

 

昨年10月に続く、群馬交響楽団のコンサート。今回は群響で6年間、音楽監督を務めた大友直人さんの任期最後の上田公演になりました。

 

前半はベートーヴェンの名曲「ヴァイオリン協奏曲 ニ長調 作品61」。
後半はベルリオーズの傑作「幻想交響曲 作品14」という、群馬交響楽団第546回定期演奏会プログラムです。

地方オーケストラの定演プログラムが、ここ上田で聴けるとあって、市内はもちろん、県外から来場したお客様もいるようです。

ソリストは大友さんと20年以上の交友があり、幾度となく共演してきたフランス・ヴァイオリン界の巨匠、レジス・パスキエさんです。

 

 

1曲目はベートーヴェンのヴァイオリン協奏曲の中で唯一、完成したといわれている曲で、演奏時間が50分近くあり、第1楽章だけで20分以上を要するという大作です。

第1楽章 アレグロ・マ・ノン・トロッポ。ティンパニが刻むリズムで始まるという斬新な手法がとられています。木管に金管楽器が加わり次第に迫力を増していくオーケストラ。
パスキエさんのソロヴァイオリンが登場し、楽章の中で何度も登場するモチーフが現れます。そしてオーケストラによる間奏とともに展開部へ。
ソロヴァイオリンが再び登場し、哀愁を帯びた憂いある音色を響かせます。オーケストラによるモチーフが帰ってきてカデンツァに突入します。

 

 

第2楽章 ラルゲット。管弦楽で静かに始まり、金管楽器と木管楽器がそれぞれ主題を担当。ヴァイオリンのソロが変奏を繰り返します。
決して技巧を披露する華やかな演奏ではありませんが、繰り返すごとその表情を変えていく繊細なソロヴァイオリン。
そしてオーケストラを伴い、切れ目なく第3楽章へと突入します。

第3楽章 ロンド アレグロ。ヴァイオリンがロンド形式で主題を奏でると、オーケストラがヴァイオリンに応えるかのように主題を繰り返します。
そしてオーケストラとともに徐々に力を増しクライマックスを迎えます。

 

演奏が終わると会場から大きな拍手が沸き起こりました。大友さんと抱き合うパスキエさん。ふたりの信頼関係が垣間みえるようです。
鳴り止まない拍手の中、肩を組んで再登場。その姿に会場からひときわ大きな拍手が贈られました。

 

 

 

後半はベルリオーズの代表作「幻想交響曲 作品14」です。今年は、ベルリオーズの没後150年ということもあり、彼の曲が演奏されることも多いことでしょう。
「幻想交響曲 作品14」は自身の失恋経験を描いた作品といわれ、楽章それぞれに表題が付いています。
一般的にシンフォニーは4楽章が多いですがこの曲は5楽章からできています。
大友さんもこの曲を「斬新で独創的で、革新的」と評しており、オーケストレーションに革命を起こした作品ともいわれています。
指揮者を挟み両翼にヴァイオリン。そして弦楽器パートの増員、2台のハープに管楽器、打楽器と、前半とは違う大編成になっています。

 

第1楽章「夢、情熱」。静かに、不安を表す音色で始まります。恋心を抱く女優への思いを時に激しく、時に優しく。
コントラバスのピチカートが心臓の鼓動を現しているかのようです。一瞬音が途切れ、主題に戻り、静かに楽章を閉じます。

 

 

第2楽章「舞踏会」。3拍子のワルツで進行し、2台のハープが華やかさを演出します。

第3楽章「野の風景」。芸術家がさまよう野に、羊飼いの笛のごとくイングリッシュホルンが鳴り響き、それに呼応するこだまのようにオーボエの音が聴こえてきます。
遠近感を出すため、舞台裏を使った斬新な演出です。そして日没になり再びイングリッシュホルンが響きますが、今度はオーボエとの掛け合いはありません。
孤独感を現すかのように4人の打楽器奏者が鳴らすティンパニが激しい雷鳴を暗示させます。

第4楽章「断頭台への行進」。夢の中で恋人を殺してしまい処刑場へと送られる行進曲。ティンパニや4管のファゴットの独特な響きが不気味さを増します。
そして楽章の終わりに繰り返し登場する主題が現れ、ファンファーレでフィナーレへと突入します。

 

 

第5楽章「魔女(サバ)の夜宴の夢~魔女のロンド」。魔女たちの饗宴を描く奇抜なオーケストレーション。一瞬、静まりかえり鐘の音が響きます。
そしてチューバによるレクイエム「怒りの日」が聞こえてきます。エンディングに向け、ピッコロからコントラバスまでオーケストラの音色が幾重にも重なり力強いフィナーレと同時に「ブラボー」という声が上がりました。

 

群響での6年間、弦楽器の響きを充実させることに重きを置いてきたという大友さん。
総決算となる演奏は各パートのソロはもちろんアンサンブルも美しく、大編成ならではの迫力ある演奏にいつまでも熱い拍手が鳴り止みませんでした。

 

 

 

 

【プログラム】

ベートーヴェン/ヴァイオリン協奏曲 ニ長調 作品61

ベルリオーズ/幻想交響曲 作品14