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【レポート】長谷川陽子 クラスコンサート at 上田市立川西小学校

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会場
サントミューゼ

サントミューゼクラスコンサート @上田市立川西小学校

チェロ:長谷川陽子 ピアノ:田中英明

2022年11月17日(木)

 

今年度のレジデント・アーティスト、チェリストの長谷川陽子さん。この日の午前、ピアニスト田中英明さんとともに、川西小学校の5年生を対象にクラスコンサートを行いました。

 

先生方と32名の子どもたちが待つ音楽室におふたりが登場し、まず長谷川さんのソロでバッハの「無伴奏チェロ組曲 第1番」が披露されます。チェロの名曲中の名曲に、部屋の空気が一変しました。

 

 

 

 

 

演奏が終わると、「こんにちは! 今日は楽しんでいってくださいね」と笑顔で挨拶をする長谷川さんと田中さん。続いて、スペインの作曲家・カサドの「親愛なる言葉」を演奏します。情熱的で深い陰影を感じる音色が印象的です。

 

演奏が終わると長谷川さんは、問いかけを交えながらチェロについて説明します。

 

 

「この楽器は何歳くらいだと思いますか?」と聞くと、「300歳?」という声が。

長谷川さんは「すごい! 私のネタ帳見た?」と笑いを誘います。「1700年ぴったりにイタリアのクレモナという町でつくられたチェロで、多くのチェリストが弾いてきて今、私が弾いています」と答えると、子どもたちは想像以上に長生きしている楽器であることに驚いた様子です。

 

そして、子どもたちも授業で聴いたことがあるという、サン=サーンスの組曲「動物の謝肉祭」の中から「白鳥」。「チェロの小品の女王様」という長谷川さんの言葉通り、田中さんのピアノが表現する水面を長谷川さんのチェロが優雅に泳ぐようでした。

 

 

 

 

 

ここまで3曲、キャラクターの違う音楽が続いたところで、「チェロの魅力はどんなところだと思う?」と長谷川さんが問いかけます。子どもたちのいろんな感想が飛び出します。「(楽器が)でかいところ!」。「そうだね! 私がチェロをやるきっかけも、この大きさがかっこいいなと思ったからです」。「指、痛くないの?」。「しばらくおさぼりして弾くと痛くなることがあります」。

 

続いてはさらに毛色の違う、しかし誰もが一度は聴いたことのある「情熱大陸」のテーマです。同じフレーズが低音と高音で何度も繰り返されているのが特徴。田中さんに88弦あるピアノの最低音と最高音を弾いてもらいます。「みんな、せっかくだから近くで見てみてね」とピアノの周りに子どもたちを誘います。そして、チェロの最低音と最高音を弾いてみると、4弦しかないチェロのほうがピアノよりも高音を出せることが分かりました。

 

演奏後、改めてチェロの3つの音域のどれが好きか、子どもたちにたずねます。「高音域は華やかでキラキラ、中音域は人の声に近く、低音域はどっしりとした安定感が感じられます」という長谷川さんの言葉に、子どもたちはうなづいています。

 

 

 

5曲目は、文部省唱歌として有名な「ふるさと」です。川西小の5年生にとっては、「金管バンドで演奏した」ことのあるなじみある曲。今回は、長谷川さんが大好きな作曲家に編曲を依頼した特別バージョンです。「何もない大地に一粒の種をまきます。待っていたら、大きな木に成長している。そんな光景をイメージしてください」と伝えて、チェロを構えます。たゆたうようなピアノの旋律からはじまり、やがておなじみのメロディを奏でると、そこへ伸びやかなチェロの音色が絡んでいきます。

 

最後はポッパーの「ハンガリアン・ラプソディ」。さまざまな情景や人物が登場する、色彩豊かな曲です。ピアノと息の合った演奏、そして圧巻の速弾きに、子どもたちは釘付けになっていました。

 

質問コーナーでは「チェロを弾いていて怖いことは?」。「(長谷川さんの足元にある)黒いものは何ですか?」(答えはタブレットの楽譜をめくるための道具)。「いつから弾いているんですか?」と、次々と手が挙がって質問が飛び出します。

 

 

 

最後、各クラスの代表が感想を述べます。間近で体感するチェロとピアノの、時に繊細で時に迫力ある音色にすっかり魅了されたようでした。

 

【プログラム】

J.S.バッハ:無伴奏チェロ組曲 第1番よりプレリュード

カサド:親愛なる言葉

サン=サーンス:組曲「動物の謝肉祭」より「白鳥」

葉加瀬太郎:情熱大陸

吉松隆:ふるさと

ポッパー:ハンガリアン・ラプソディ