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【レポート】石上真由子 クラスコンサート at 上田市立神科小学校

みる・きく

サントミューゼクラスコンサート at 上田市立神科小学校
ヴァイオリン:石上真由子
ピアノ:江崎萌子

2023年11月28日(火)

今年度のレジデント・アーティストであるヴァイオリニストの石上真由子さんは、ピアニストの江崎萌子さんとともに、上田市立神科小学校の5年生に向けてクラスコンサートを行いました。午後の5年2組の回をレポートします。

先生方と25名の子どもたちが拍手でおふたりを迎え、石上さんが挨拶します。「私たちは、“Mayu”と“Moeko”のデュオM&Mとして、3年ほど前からよく一緒に演奏しています。今日は、お話しを交えながらいろんな曲を聴いてください」。

1曲目のファリャの『スペイン舞曲』について、子どもたちに「舞曲とはどういう音楽でしょうか?」と尋ねます。「舞曲はダンスの曲です。どんな人が、どんな服を着て、どんなダンスを踊っているか、想像しながら聴いてください」と言い、曲へ。思わず足を踏み鳴らしたくなる演奏に、音楽室の空気も温まるようです。

続いては、それぞれの楽器の音をじっくり聞いてもらう趣向です。まずは石上さんのヴァイオリンで、弓の毛が何の毛か問うと、次々に答えがあがります。「正解は馬のしっぽの毛です。では、何本あるでしょうか?」と、今度は50本、150本、300本の三択です。正解は150本で、1か月から数か月に1回、張り替えるそうです。「みんなの反応がよかったら、毛が切れるかもしれません」と、笑いを誘います。

そしてヴァイオリンの多彩な奏法を、おなじみ『ハッピーバースデートゥーユー』の変奏曲で聴かせてくれました。ヴァイオリンの和音は2つまでですが、弓を激しく動かすことで3つ、4つの音が同時に鳴っているように聞かせることもできます。指で弦を弾くピチカート、弦を押さえる左手の力を半分にすると口笛みたいなヒューヒューという音に変わります。よく知った曲の表情がここまで変わることに、子どもたちは驚いている様子でした。

続いては、江崎さんからピアノについてのクイズです。「ティンパニ、リコーダー、ヴァイオリンの3つの楽器のうち、どの楽器がいちばんピアノに近いでしょうか?」。リコーダーやヴァイオリンに多く手が挙がります。が、正解はティンパ二でした。弦があるという点ではヴァイオリンも近いのですが、弦を下からハンマーで叩く構造は打楽器と同じ。さらにピアノには“楽器の王様”という異名があります。なぜ楽器の王様か? 「最低音から最高音まで、オーケストラの楽器すべての音域をカバーしているから」と江崎さんが教えてくれました。

そして、グリーグの『山の魔王の宮殿』へ。主人公ペール・ギュントを魔王の家来であるトロルたちが追いかけまわすシーンです。ピアノ1台で、まるで目の前で劇が繰り広げられているような表現力で、ピアノが楽器の王様と呼ばれる理由に納得の演奏でした。

「音楽はソロ、デュオ、アンサンブルと、演奏する人の数で変わります。一緒に演奏する時は、音色やテンポ、音の大きさをどうしたかをお互い話して方向性を決めていきます」と、石上さんが話します。次のチャイコフスキーの『メロディ』では、アンサンブルの妙を美しいメロディで味わってもらいました。

最後は、ベートーヴェンの『ピアノとヴァイオリンのためのソナタ 第10番』から第4楽章です。タイトル通り、どちらも主役というのがミソ。「私たちが大好きな曲です。どちらかが旋律を奏でている時、もう片方がどんな風に支えているか、聴いてみてください」と石上さんが話して、演奏へ。旋律を追いかけ合い、ピアノとヴァイオリンが会話しているよう。緩急も素晴らしく、心を揺さぶる演奏です。

最後は質問コーナーです。「どこに住んでいますか?」「なぜヴァイオリンをやろうと思ったのですか?」といった質問が出てきます。最後は、代表の女の子が「初めてこんな近くで聴いたので、演奏がとてもきれいでびっくりしました」と感想を伝えました。間近でピアノやヴァイオリンの音に触れて、心が動かされる貴重な体験となったようです。

【プログラム】

ファリャ/歌劇『はかなき人生』より「スペイン舞曲」
ハッピーバースデートゥーユー変奏曲(編曲:石上真由子)
グリーグ/劇音楽『ペール・ギュント』第1組曲より「山の魔王の宮殿」
チャイコフスキー/『なつかしい土地の思い出』より「メロディ」
ベートーヴェン/『ピアノとヴァイオリンのためのソナタ 第10番 ト長調』より第4楽章