サントミューゼ(上田市交流文化芸術センター・上田市立美術館) おかげさまでサントミューゼは10周年

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【レポート】上田地域定住自立圏連携事業 岩崎洵奈ピアノコンサートin嬬恋村

みる・きく
会場
サントミューゼ

上田地域定住自立圏連携事業 岩崎洵奈ピアノコンサートin嬬恋村
2018年6月6日(水)19:00~ at 嬬恋会館大ホール

 

【プログラム】

バッハ:プレリュード BWV933

ショパン:幻想即興曲

ツェルニー:ウィーンのテーマによる変奏曲

シュトラウス=グリュンフェルド:こうもりのテーマによるパラフレーズ

ショパン:バラード 第2番

ショパン:黒鍵のエチュード

ショパン:バラード 第1番

アンコール

ショパン:ノクターン 第2番

ショパン:ノクターン 遺作

 

 

上田市と隣接する群馬県の嬬恋村で開かれたこの日のコンサート。上田市と地域の6市町村が、人口定住促進に向けて連携し協力する「上田地域定住自立圏」の取り組みの一つとして開催されました。

 

 

 

子どもから大人まで幅広い年代の方が会場を埋め尽くす中、バッハの軽やかなプレリュードで幕が上がります。 嬬恋で演奏するのは初めて、と話す岩崎さん。「今日は嬬恋名物のキャベツをいただいて、感激しました」と笑顔で語ってくれました。 続いてはショパンの「幻想即興曲」。

「初めてこの曲の楽譜を見た時は驚きました。左手が3つの音を引く間に右手は4つの音を弾くというように、右手と左手がずっとずれているんです。では、もし右手と左手が同じ音の数だったらどうなるか。試しに弾いてみますね」

と岩崎さんが弾くと、聴こえてきたのはなんとも奇妙なリズムの曲です。

 

「ずらすことで素敵なハーモニーとメロディーが生まれて、200年以上経った今も世界中で愛されているんですね」 そして演奏した「幻想即興曲」は、その強いメロディーの中に、いつもの聴く「幻想即興曲」とは一味違った思いの深さを感じました。

 


ここで小さなオルゴールを取り出した岩崎さん。手で回すと、かわいらしい音色が聴こえてきます。ところがこれをピアノの中に置いて回すと、さっきとは比べものにならないほど大きな音に。これには参加者の皆さんも「すごい」と驚きの表情を浮かべていました。 「ピアノ内部の『響板』の上に置いて鳴らすと、こんなにも大きく響きます。響板は、ピアノの心臓と言える場所なんです」 。

 

 

そしてプログラムにないサプライズとして聴かせてくれたのは、「子犬のワルツ」「ワルツ・フォー・デビイ」など誰もが知っている曲を集めたメドレー。客席のみなさんも、頷きながら聴き入っていました。現在、ウィーンに住んでいる岩崎さん。続いての「こうもりのテーマによるパラフレーズ」は、ウィーンの街のリラックスした空気を思わせるゆったりしたリズムが特徴です。華やかで表情豊かな曲を、時に笑顔を浮かべながら演奏しました。

 

ここからはショパンの楽曲を2曲続けて。

「対照的な2つのパートで構成されている曲です。ショパン自身の恋愛や性格が表れているのかもしれません」と解説したのは「バラード 第2番」。

 

 

モノトーンの静かな世界から一転、嵐のような激しいパートへと移り変わるドラマチックな展開に引き込まれます。 「黒鍵のエチュード」はピアノの屋根を外し、参加者がピアノの周りに集まって鑑賞する特別バージョンで演奏してくれました。

 

 

普段は見えない内部のハンマーが見え、音の出る仕組みが目で感じられます。何より、プロのピアニストの指の動きを間近で見られるのは滅多にないこと。子どもたちは演奏する岩崎さんの傍らで、真剣な表情で手を見つめていました。 「次の曲は、どなたかお一人お手伝いしてください」と岩崎さん。指名されたのは最前列に座っていた男性です。曲は「花は咲く」「パッヘルベルのカノン」などのメドレー。男性は岩崎さんの隣に座り、最初から最後まで一つの音を弾いて演奏に参加します。

 

 

最後は客席も手拍子で参加して盛り上がり、演奏後は大きな拍手が贈られました。参加した男性は、「素晴らしい体験をさせてもらいました」と話してくれました。 最後の曲はショパンのバラード。ショパンの故郷への思いがこめられた曲ですが、岩崎さんの奏でる音の根底には、寄り添うような優しさが感じられました。 鳴り止まない拍手に応えて、アンコールで2曲も披露してくれた岩崎さん。終演後は、ピアノを習っている子どもたちに囲まれていました。「どうやったら上手に弾けるようになりますか?」との質問に、「集中して音を聴いて、毎日一生懸命練習してください」と真剣かつ温かな眼差しで答える姿が印象的でした。