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【レポート】金子三勇士 ピアノ・リサイタル ~日本とハンガリーのピアノ作品が織り成す世界

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金子三勇士ピアノ・リサイタル ~日本とハンガリーのピアノ作品が織り成す世界~

7月13日(土) 14:00~16:00  サントミューゼ小ホール

 

昨年に続いて、ピアニスト・金子三勇士さんのリサイタルを開催しました。

ご本人が「帰ってきました、という不思議な感覚です」と言う通り、何度も上田を訪れ、コンサートやアウトリーチ活動を行っています。

 

今回は、日本・ハンガリー外交関係開設150周年にちなんで、ハンガリーと日本の作曲家作品だけで構成した特色あるプログラムでした。

 

ステージに登場した金子さんは、まずリストの「ハンガリー狂詩曲 第6番」を披露します。

この曲は後半、演奏者にお任せのパート「カデンツァ」が配され、いわば金子さんとリストのコラボレーションになります。

金子さんは、超絶技巧を惜しげもなく散りばめ、豪華絢爛な音色で曲をまとめました。

 

 

今日は、駐日ハンガリー大使から「上田の皆様にくれぐれもよろしくお伝えください」とメッセージを預かってきたという金子さん。

習得の難しさで3本の指に入るといわれるハンガリー語で挨拶をしてから、日本とハンガリーの共通点を入り口に、バルトークの「3つのチーク県の歌」へ話を進めます。

 

 

この曲は、ハンガリーの民謡が元になっており、抒情的でどこか日本の民謡にも通じる響きがあります。

その理由は、日本もハンガリーも民族音楽は「5音階(ペンタトーン)」でできているからなのだとか。

 

そして、本日1曲目の日本人作曲家の作品へ。

世界に広く知られた現代音楽の作曲家である武満徹の「雨の樹 素描・Ⅱ」です。

「現代音楽は、ずっとは聞いていられないという人もいます」と金子さんが言う通り、非常に斬新でモダンな曲です。

しかし、かのモーツァルトの音楽も当時は歓迎されなかったというエピソードや、武満の音楽は子どもが興味を示しやすいことを挙げ、「未来を見越した音楽かもしれません」と違った見方も示してくれました。

この曲は、武満が最も尊敬していたフランス人作曲家メシアンが亡くなった時に捧げられました。

“フランス的な響き”があり、透明感と独特の「間」が心に沁み入ります。

 

 

フランス的な響きをキーワードに、コダーイの「セーケイ族の民謡」に続きます。

コダーイが研究で採集した民謡をベースにしているためか、メロディに歌を感じ、ラストの長い残響が印象的でした。

 

弾いた音を長く保つダンパーペダルを半分もしくは三分の一だけ踏むことで、残るか残らないかという絶妙な響きが生まれます。

さらに音を重ねると独特のモワーンとした音になり、フランス的な響きが実現できるのだそうです。

 

前半の最後は、リストの「メフィストワルツ 第1番」です。

メフィストフェレスという悪魔と契約したファウストの伝説にかねてより惹かれていたリストは、詩人ニコラウス・レーナウが書いた叙事詩『ファウスト』にインスピレーションを得てこの曲を作りました。

天国と地獄を行き来するような構成で、後半に進むにつれて、激しく入れ替わっていきます。

「10分間の短い映画を観るようなつもりでお聴きください」と言い添えて、金子さんは演奏に移ります。

 

激しく熱い演奏に、客席から「ブラヴォー!」の声が飛びました。

 

そして後半は、ウェイネルの「変奏曲」からはじまります。

ウェイネルは日本ではあまり知られていない20世紀ハンガリーの作曲家です。

金子さんは、ウェイネルとの運命的な出会いについて語ってくれました。

 

 

金子さんがハンガリーでリスト音楽院に通っていた時、専用図書館に入り浸るのが楽しみでした。

ある時、書庫から手違いで持ってこられたのがウェイネルの楽譜。金子少年は、これも何かの縁と感じて曲を覚えたそうです。

また、金子さんが12、13歳で一人暮らしをしていたアパートの真上の部屋に、偶然にもかつてウェイネルが住んでいたという縁もあったのだとか。

 

ウェイネルは遊び心にあふれた人で、聴きやすくかわいらしい作品を多く世に送り出しました。

この変奏曲も最後にジャズを思わせる響きがあり、非常に聴きやすい小品です。

金子さんの演奏も、音に合わせてピョコッと横を向いたり、座ったまま飛び上がったりと、茶目っ気たっぷりでした。

 

続いては、同じく20世紀に生まれて今も活躍している日本人作曲家・吉松隆の「平清盛」メインテーマです。

この曲は、大河ドラマ「平清盛」のために書かれたものです。

劇中でも繰り返し出てきた「遊びをせんとや生まれけむ」の静かなメロディではじまって、途中から大河ドラマらしい勇壮な曲調に変わり、再び主題が顔を出します。

 

 

ここまでは、ふだんなかなか聴けない曲が続きました。

「最後のコーナーはクラシックの王道でしめたいと思います」と切り出し、リストの「愛の夢」と、シューマンの歌曲をリストが編曲した「献呈」へ。

どちらも“愛”がテーマの、情感たっぷりで優しく美しい曲です。

 

最後は、「金子さんの演奏でまた聞きたい曲」アンケートのトップに輝くリストの「ラ・カンパネラ」です。

「上田市では何度も弾かせていただいています。音楽は、毎回違うものが生まれるところが面白い一期一会の“瞬間芸術”です。昨年とはまた全然違う『ラ・カンパネラ』をお楽しみください」

 

 

リストを敬愛する金子さんの面目躍如というべき燃えるような演奏で、割れんばかりの拍手が会場を席巻します。

 

アンコールは、2番目にリクエストの多い、同じくリストの「ハンガリー狂詩曲 第2番」。

 

すべてを出し切るように弾き終えた金子さん。「ありがとう」とねぎらうようにピアノに優しく触れながら、万雷の拍手を一身に受けていました。

 

終演後のサイン会にも、長い列が。

 

 

お客様に感想を伺いました。

「今日はバルコニー席で鑑賞しましたが、金子さんの指の動きがよく見えて、また発見がありました」と話してくれた女性は、来年もまた聴きたいと言っていました。

ピアノを聴くのも弾くのも好きだという男性と女性は、東御の湯楽里館でチラシを見て足を運んでくれました。女性は「雨の樹 素描・Ⅱ」、男性は「献呈」がとりわけ印象に残ったとのことです。

また、金子さんのアウトリーチにも参加した小学5年生の女の子は、「『ラ・カンパネラ』が特によかったです」と笑顔で話してくれました。

 

 

【プログラム】

〈前半〉

リスト=金子:ハンガリー狂詩曲 第6番

バルトーク:3つのチーク県の歌

武満徹:雨の樹 素描・Ⅱ

コダーイ:セーケイ族の民謡

リスト:メフィストワルツ 第1番

 

〈後半〉

ウェイネル:変奏曲

吉松隆:「平清盛」メインテーマ

リスト:愛の夢

シューマン=リスト:献呈

リスト:ラ・カンパネラ

 

〈アンコール〉

リスト:ハンガリー狂詩曲 第2番

 

 


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