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【レポート】加藤文枝~アーティスト・イン・レイデンス~武石・中央地域

みる・きく
会場
サントミューゼ

加藤文枝~アーティスト・イン・レジデンス 武石・中央地域

上田市内の小学校や公民館を訪れ、コンサートを行ったチェロ奏者の加藤文枝さん。創造力をかきたてるプログラムで、チェロの魅力を伝えました。

11月の武石・中央地域での活動をレポートします。

 

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加藤文枝さんによるクラスコンサート in 上田市立北小学校

2018年11月16日(金)

 

チェリストの加藤文枝さんによるクラスコンサートが上田市立北小学校で行われました。

 

児童が拍手で迎えるなか、加藤さんと、ピアノ伴奏の小澤佳永(かえ)さんが、会場である音楽室に現れました。

自己紹介とともに加藤さんが子どもたちに語りかけます。

 

「今日は音楽を聴いて、美しいとか、楽しいとか、あるいは寒いとか、いろいろ感じてください。そして想像力をつかって、いつもの教室で、いつもとはちがう景色が見られるように、旅をしてください」

 

1曲目は、エルガーの「愛のあいさつ」が演奏されました。

続いての曲はサン=サーンスの「白鳥」ですが、演奏前に加藤さんが話します。

 

「人は音楽を聴くと、イメージすることができます。それはなぜでしょうか」

 

 

加藤さんによると「ヒントはピアノの伴奏にある」といいます。

ピアノの音は、水面がユラユラとゆらめく様子、あるいは光が反射してキラキラする様子を表しているのです。

 

そして「チェロの音は、白鳥が優雅に泳ぐ姿を表している」と加藤さんは言います。「白鳥は、どれくらいのスピードで泳いでいるのか。湖はどれくらいの大きさなのか。そんなことを想像しながら聴いてください」

 

 

演奏後に、加藤さんから「どうでしたか、いつもより具体的にイメージできましたか」と聞かれ、子どもたちはそれぞれにうなずいていました。

 

「さあ、これから二択のクイズをします。クイズといっても、正解はありません。今から弾く曲を聴いて思い浮かべる色は、赤か、黒か。聴き終わったあとに教えてください」

 

その曲は荒々しく、ときに弦を指で弾きながら、激しく演奏されました。聴き終えた子どもたちが連想したのは、赤が6割、黒が4割ほどでしょうか。「暗闇を走るような印象だから黒」「燃えるようだから赤」と、それぞれの感想を述べました。

 

 

次の二択は「昼の音楽か、夜の音楽か」。リズミカルな音楽に、昼と夜、それぞれに感想が分かれます。「スキップしているようだったから昼」。また「最初は昼で、最後は夜になって踊っていた」と、音楽から時間の経過を感じた子もいました。

 

 

最後のクイズは三択です。加藤さん自身は「はじめて聴いたとき、とても不思議な曲だと感じた」そうです。そこで、この曲のイメージに近い絵を探し、見つけた3枚のコピーを持参したとのこと。

 

「まずは音楽を聴いて、イメージしてみてください。そのあと絵をお見せしますから、観ながら音楽を聴いてください。そしてどの絵がみんなのイメージに近いかを教えてください」

 

1回目の演奏が終わると、子どもたちの前に3枚の絵が並べられました。ゴッホ「アルルの跳ね橋」、ミロ「カタルーニャの風景」、シャガール「日曜日」です。やはりそれぞれ選ぶ絵は分かれました。

 

 

 

「次に、チェロのことをお話ししましょう」と加藤さん。「チェロの重さはどれくらいでしょう」。チェロの中は空洞で、本体は5㎏ほど。実際に手にした子どもからは、思わぬ軽さに「あっ」と声が上がりました。

 

 

「オーケストラの演奏を聴いても、旋律を弾くヴァイオリンに比べて、チェロに注目する人はあまりいないと思いますが、チェロはハーモニーのベースラインを支えています。演奏にチェロが加わると曲に奥行きが増して、安定感が生まれます」と、加藤さんは説明します。

 

「チェロは4本の弦がありますが、そのうち一番高い音を出すA線(アーせん)だけを使って演奏します」。そしてパガニーニ作曲、「モーゼの主題による変奏曲」を第1弦だけで奏でました。

 

 

最後の曲は、ポッパーの「ハンガリー狂詩曲」です。この曲のために、お話を考えてきたという加藤さん。「ハンガリーでの旅」というストーリーをホワイトボードに示しながら、「みなさんそれぞれが主人公です」と前置きをして解説します。

 

「大きな教会のある美しい村にやってきました。ワクワクしながら歩いていると、怪しげな女の人が近づいてきて、こう言います。『日が暮れる前に村を出ないと、とんでもないことが起こるぞ』。あわてて帰り道をさがしますが、見つかりません」

 

「途方に暮れていると、誰かが『一緒にさがそう』と声をかけてくれます。いったい誰なのか、想像してください。歩き回るうちに、日が暮れてきました。『帰れなくなっちゃう。どうしよう、助けて!』 そう思った時、『あれ、あの道はなんだろう?』 そして出口を見つけます」

 

加藤さんが語った物語を想像しながら、7分ほどもある大作に子どもたちはじっくりと聴き入りました。

 

 

演奏後には質問タイムが設けられました。子どもたちの質問に「毎日、少なくとも2時間は練習したい」「演奏中は自分がどういう音を出しているか、常に気をつけている」「子どもの頃、家の近くにたまたま教室があったから3歳から習い始めた」など、次々と答えてくれました。

 

また、子どもたちは「『白鳥』の演奏が心に残った」「テレビで聴くより実際の音はきれいですごいと思った」「聴いた音楽を色や絵で表現するのがおもしろかった」など、それぞれの感想を述べました。

 

 

さて、クイズ形式で曲目を伏せて演奏された3曲ですが、順にショスタコーヴィチ「チェロ・ソナタ第2楽章」(赤か黒か)、ドビュッシー「ゴリオォーグのケークウォーク」(昼か夜か)、ナディア・ブーランジェ「チェロとピアノのための3つの小作品より第3曲」(どの絵か)でした。

 

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地域ふれあいコンサートvol.44
加藤文枝 チェロコンサート at 武石公民館

2018年11月17日(土)14:00開演
プログラム

エルガー:愛の挨拶

バッハ:無伴奏チェロ組曲

第1楽章 プレリュード

第3楽章 ブーレ

ラフマニノフ:ヴォカリーズ

ファリャ:火祭りの踊り

サン=サーンス:白鳥

パガニーニ:「モーゼ」の主題による変奏曲

ドビュッシー:月の光(ピアノソロ)

ピアソラ:忘却

ポッパー:ハンガリー狂詩曲

 

アンコール

ピアソラ:リベルタンゴ

 

武石公民館での地域ふれあいコンサートに登場したチェロ奏者の加藤文枝さんとピアニストの小澤佳永さん。秋晴れにふさわしい赤いドレスで登場した加藤さんが最初に演奏したのは、エルガー作曲の「愛の挨拶」。

 

 

「今日はこんなにたくさんの方にお越しいただき、ステージに出てきて瞬間に『うれしい』と思って感謝の気持ちでいっぱいです」と加藤さん。

 

「なかなかチェロとピアノだけの演奏会というのは少なくて、初めてという方もいらっしゃるかと思いますので、まずはチェロの楽器紹介も兼ねてこの曲を選びました」と、加藤さんが次に演奏したのはバッハ作曲の「無伴奏チェロ組曲」から第1楽章プレリュードと第3楽章ブーレ。
この曲は、廃墟のトイレの壁紙になっていたらしく、取り壊し業者が「もしかしてこれは貴重なものなのではないか」と専門家を呼び、きれいに剥がして調査したことによって発見された曲なんだとか。

 

続いてはラフマニノフ作曲の「ヴォカリーズ」。ヴォカリーズとは、歌詞のない一つの母音で唄う曲のことをいいます。

「言葉にできない想いというのはどういうものなのか、と弾く度に思います。みなさんも、ラフマニノフがどういう気持ちだったのかとイメージしながら聴いてください」と加藤さん。
チェロならではの音色が、表情豊かなこの曲の魅力をさらに惹きたてます。

 

 

後半では小学校のクラスコンサートでも演奏したサン=サーンス作曲の「白鳥」。

クラスコンサートでのエピソードも話します。クラスコンサートでは、曲名を伏せて演奏し、浮かんだイメージを出し合うというプログラムでしたが、加藤さん自身も毎回白鳥を思い浮かべながら演奏すると話します。

 

小澤佳永さんのピアノソロではドビュッシー作曲の「月の光」が演奏されました。

「加藤さんといんろな小学校で演奏させていただきましたが、子どもたちが加藤さんの演奏や話で想像力を膨らませてくれてたくさん話してくれたのが印象的でした。今日は、私の演奏で皆さん独自の月の光を想像しながら聴いてください」と小澤さん。

静かにしみ込んでくるような月の光が浮かんできます。

 

 

再び加藤さんが登場して演奏されたピアソラ作曲の忘却では、まるで楽器が泣いているかのような切なさを艶やかに演奏。

最後のプログラムはポッパー作曲の「ハンガリー狂詩曲」。

「ポッパーはチェロの名手として当時活躍した人です。親しみやすいメロディの中に、ヴィルトゥオーゾという超絶技巧を取り入れ、チェロの魅力を見せる曲を作った人です」と加藤さん。
「曲の場面転換がたくさん出てきて、私はには、まるでハンガリーを冒険しているような曲に聴こえます。今日は、皆さんの物語で一緒に楽しんで聴いてください」
と話しました。

 

 

加藤さんの圧倒的な演奏に、終演後の会場は大きな拍手で包まれました。

 

 

アンコールで演奏されたのは、ピアソラ作曲の「リベルタンゴ」。

終始、色彩豊かで情景が浮かぶプログラムで構成された1時間。晩秋の季節にふさわしいコンサートでした。

 

 

 

2019年1月26日には、サントミューゼの小ホールでチェロリサイタルを開催します。

この日に演奏された曲のほか、ショパンやシューベルト、シューマンなども演奏される予定です。
お楽しみに!

リサイタルの詳細はコチラ