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【レポート】北尾亘 コンテンポラリーダンス・ワークショップ&ダンス公演『ダブル・ビル』

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北尾亘 コンテンポラリーダンス ワークショップ&ダンス公演

2020年1月30日(木)・2月2日(日)

 

上田では初となる北尾亘さんのダンス公演を、2月2日に開催しました。

北尾さんは幼少時のミュージカルを皮切りに舞台芸術に携わり、クラシックバレエからストリートダンス、コンテンポラリーダンスまで多彩なジャンルを経験してきました。
俳優、振付家としても活躍しており、さまざまな表現に挑戦し続けている気鋭のアーティストです。

今回は、公演に先立って行われた市民参加のワークショップと、ダンス公演の模様をレポートします。

 

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北尾亘 コンテンポラリーダンス ワークショップ

2020年1月30日(木) 18:30~20:30 サントミューゼ大スタジオ

 

北尾亘さんのワークショップは、参加者は16名で、高校生から50代まで幅広い年齢の方がお越しになりました。ダンス経験の有無もさまざまです。

今回の公演でデュオ作品をともに踊る、振付家でダンサーの中村蓉さんがアシスタントとして入ります。

まずは、北尾さんが「ゆったり楽しめたらと思っています。楽しい身体との出合いにしましょう」とあいさつします。

北尾さんがコンテンポラリーダンスと出会ったのは、今から14年ほど前のこと。さまざまなジャンルを幅広く経験し、ちょうどダンスの型にこだわっていた時期だったそうです。

最初に見た時は「何かがはじまりそうではじまらない、何も起きないとても退屈なダンス」と感じました。

しかし、いざ踊ってみたらまったく違う感触を覚え、そこからのめり込んでいったそうです。

「新しいダンスとの出合いを楽しんでください」と参加者に呼びかけ、ワークショップがはじまりました。

 

 

まずは、じっくりと身体をほぐしていきます。

ストレッチやヨガのような動きを織り交ぜながら、上下に弾んだり、全身をポンポン叩いたりして、自分の身体をひとつずつ確かめるように念入りに行います。

今度は、参加者全員で空間を“お散歩”します。

北尾さんが「空間を共有する」と表現したように、空間の隙間を見つけてランダムに歩いていきます。

 

「今の自分の身体の感触を確かめながらやりましょう」と声をかけて、皆で一斉に歩き始めます。

途中、ストップモーションを入れ、速度や歩幅を変え、時に足音を立てないように歩き、後ろ歩きも。

自分の身体の感触を探ると同時に、周りの人の気配も感じるワークです。

 

次は、「ハイタッチゲーム」です。

音楽に合わせて歩いて、北尾さんのカウントで、その場で相手を見つけてジャンプ、ハイタッチするというものです。

最初はタイミングが合わず、あちこちで笑いが起きます。

一気に雰囲気がほぐれ、参加者は顔をほころばせながらゲームを楽しんでいました。

 

 

いい調子でゲームができているので、さらに左足同士のタッチも加えることに。難しくなりましたが、その分さらに盛り上がります。

ゲームのあとは、ペアでストレッチをします。相手の力を借りてストレッチすると、ひとりでやるより深めていくことができます。中村さんが手助けをして、コツをつかんでいくペアの姿も。

再度“お散歩”をして、前と身体の感覚がどう変わったかを味わいます。

 

休憩を取り、いよいよコンビネーション(振り付け)に進みます。

 

今回は、日常動作をダンスに繋げる振り付けで、気持ちの良い朝に寝ているところからスタートします。

北尾さんが「カーテンを開けて、窓を開けて、風を浴びましょう」という具合に即興で動きを作っていきます。
イメージはどんどん膨らんで、次の動きへと数珠つなぎのように繋がっていきました。

北尾さんはこれを「身体のひと筆書き」と表現し、動きを止めずに続けていきます。

周りとペースを合わそうとせず、またカウントにも落とし込まないという、コンテンポラリーダンスならではの語法で、日常動作をダンスにしていきます。

 

参加者からは、それぞれに自分の身体をじっくり味わいながら、北尾さんから繰り出されるシチュエーションを自分なりにかみ砕いている様子が見てとれます。

さらに続きを作っていくのに、参加者にシチュエーションやキーワードを出してほしいと呼びかけます。

参加者のひとりが「猫が起きてくる」というアイディアを出します。

ここからまた、北尾さんの即興の振り付けが展開され、猫と飼い主の立場を交互に入れ替えて、それぞれの動きを流れるように繋げていきました。

不思議な設定ではありますが、傍から見るとダンスとして成立しているのが面白いところです。

 

ダンスが完成したところで2チームに分かれます。
前のチームが終わる時の動きと、次のチームがスタートする時の動きを重ねて、そこにも連続性を持たせて全体でひとつのシークエンスになるように北尾さんがアレンジしていきます。

 

 

 

そしていざ、通しで踊ることに。

短い時間の中で、それぞれの個性が驚くほどにじみ出たダンスになっていて、バラバラなはずなのに、ひとつの作品として成立していました。

みんなが床に寝たところで、ダンスは終了。

リラックスした笑顔で、互いに拍手を送りあいます。

北尾さんは参加者のみなさんが踊る様子を「お客さんのように」見ていたそうで、
「みなさんの想像力とポテンシャルに助けられて、ダンスの魅力を再発見した豊かな時間になりました」と嬉しそうにコメントしていました。

北尾さんが思うコンテンポラリーダンスの魅力について、改めて話がありました。

「ダンサーのまなざしの先に何があるのか追いかけたくなる感覚は、他のダンスでは表現しにくい、コンテンポラリーならではの魅力です。また、題材を知らないと何をやっているのかまったく分かりません。それが余白を生み、その余白は見る側の想像力にゆだねられます。それも魅力だと思っています」

 

 

参加者のみなさんの顔には、達成感と、身体をじっくり動かした爽快感がにじみ出ます。

ワークショップが終わった後も、北尾さんや中村さんを交えて、参加者同士歓談に花を咲かせ、身体との楽しい出合いの余韻を味わっていました。

 

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北尾亘 ダンス公演

『ダブル・ビル』

2020年2月2日(日) 14:00開演 サントミューゼ大スタジオ

 

「ダブル・ビル」と名付けられた今回のダンス公演。「二本立て」の意味の通り、2つの作品が披露されます。

まず、中村蓉さんとのデュオ作品で、2018年の初演以来はじめての再演となる「あなたの足跡しか踏めない。」。

2本目は、北尾亘さんのソロ作品「UMU -うむ- 」です。

 

14時、開演。

中村さん、そして北尾さんが、キャリーバッグをひきながら登場しました。

北尾さんは新聞を広げてニュースを読み、中村さんはキャリーバッグに入れていた太く柔らかい棒のようなもの――新聞紙をねじって棒状にしたもの――を、舞台後方にある樹のオブジェに差し込んでいきます。

 

 

水の流れるような音と、鳥のさえずり。

シアトリカルな演出の中に、中村さんの足跡を北尾さんが踏んでいく踊りの断片が組み込まれます。

 

 

「あなたって言ってみてくれない?」「あなた」

「もうちょっと若々しく」「あなた」

「おくゆかしく」「あなた」

「友だちでもない」「会ったこともない」「身長も釣り合わない」……。

「でも、ふたりは同じところで……すやすや眠る」

「あなたの足跡しか踏めない」

越えられない距離のあるふたりの関係を、踊りで表現していきます。

 

 

 

お互いのプロフィールをモノローグするシーンは、具体的な地名やエピソードによって、それぞれのダンサーの人物像が生々しく立ち上ってきます。

北尾さんが中村さんをリフトするダイナミックな動き、振りを追いかけていくカノン。

音楽も、ジャンルを横断して次々に変わっていきます。

 

 

北尾さんが中村さんに、「こう」と動きを示してそれについてきてほしいという意思表示をしますが、中村さんの動きはまったく違うものに。

「こう!」「こう?」という、かみ合わない動きと叫びが続いていきます。

北尾さんは2階のバルコニーに駆け上がり、中村さんもステージを大きく使って、ふたりがすれ違うさまをより強調していきます。

 

 

 

ここで歌が流れます。

「ふたりはもっと遊びたい だけどもう時間だね

上手にもっと踊りたいけど うまくいかないからまだ」

tofubeatsの「ひとり」という曲です。

北尾さんと中村さんの感情を爆発させるようなダンスが、陽気なリズム、切ない歌詞とメロディで増幅され、ふたりの埋められない距離と、それでも求めたいという気持ちが切実に伝わってくるようです。

前半で出てきた動きが再現され、クライマックスへ。

最後、ふたりはそれぞれにキャリーバッグをひいて、舞台を立ち去ります。

 

 

暗転した舞台に、お客様の拍手が響き1部が終演です。

1部と2部の幕間に、おふたりのセッション・トークがありました。

中村さんの上田市のプロモーションビデオ撮影(まもなく公開予定!)の思い出や、ワークショップで上田のダンスポテンシャルの高さに驚いたこと、お蕎麦がおいしいことなど、いろんな話題が飛び出します。

ふたりは同世代で、中村さんが「ライバルです」と言う通り、切磋琢磨する間柄です。

ダンススタイルはまったく違っていて「息も合わないし、考え方も違う」と言います。

「気の合わないふたりが踊って何かを達成している。これはもう、世界平和ですね」と中村さんが笑いを誘っていました。

 

 

 

第二部は、「UMU -うむ- 」。

「うむ」という音に、「産む」「膿む」「有無」の3つの意味を持たせた作品です。

元々は、2019年5月に日本女子体育大学ダンス・プロデュース研究部24名とクリエーションした作品で、それを北尾さんにとって初の長編ソロ作品として構成し直したもの、2019年9月に北九州芸術劇場で世界初演を迎えた作品です。

北尾さんが、ステージ上のスタンドマイクで「うむ」の意味をジェスチャーつきで語りはじめます。

中西保志の「最後の雨」が流れ、サビで北尾さんが熱唱して、いきなりドラマティックな展開に。

 

 

 

いくつかのスポットライトが落ちる舞台と、舞台奥のスクリーンに投影される映像。

水滴のようなものが落ちていく映像が流れる中、「産む」を想起させるダンスが静かにはじまります。

動きはミニマムに見えますが、触れれば外にほとばしりそうな内圧を感じます。

 

 

スクリーンの水滴は徐々に数が増え、形も変わっていきます。水滴は宇宙空間のような映像に変わり、さらに北尾さんの動きと連動するように、拡散したり集まったりと変化していきます。

一連の映像は非常に抽象的で、生命が出現する過程のようにも見えます。

 

 

音楽が変わり、ビートの効いたEDMが流れます。

スクリーンにはデザインされた太いフォントでUMUという文字が投影され、ピンク、紫、青の強い照明がステージを照らします。

 

 

 

 

スクリーンには、踊る人のシルエットが浮かびます。

シルエットは赤ちゃんがハイハイするような動きへ。

体に響いてくる低音の中で、北尾さんは音に乗り、踊り続けています。

激しく明滅する映像が流れたあと、誰もいない舞台で、スクリーンには超高速で流れる車窓からの風景とグラフィックを合わせた映像が映し出されます。

「すみません、おおしま、しの」という女性の声が、スクラッチをかけるように途切れたり反復したりしながら映像に被さり、まるで音楽のように聴こえます。

映像は徐々に上下が狭まって1本の線になり、その線が水平から垂直に回転していきます。

 

 

重く情感のあるギターの音に合わせて、北尾さんが踊っています。

髪を束ねていたヘアゴムが飛び、長い髪を振り乱しながら激しい踊りが続きました。

動きのキレはそのままに、ラストへ。

 

北尾さんのダンスに音楽、映像、照明などすべてが統合された強固な世界は、圧巻の一言。

観る者の心に直接触れてくるような、「鑑賞」ではなく「体感」がふさわしい作品でした。

カーテンコールでは、中村さんも客席から登場して、大きな拍手を受けました。

 

 

公演を観たお客様の感想です。

サントミューゼのダンス公演は今までも観てきたという男性は、「過去にダンスのワークショップに参加したことがあったので、北尾さんの動きのすごさがよく分かりました。照明や音楽も気持ちよくて、攻めているなと感じましたね」と、満足そうでした。

ベリーダンスをやっているという女性は、コンテンポラリーダンスの公演は2回目でした。「音のとり方や身体の動かし方などまた違う動きで、発見がありました。コンテンポラリーダンスは自己表現するダンスですね」。

デュオ作品もソロ作品もそれぞれにまったく違う世界観を提示し、コンテンポラリーダンスの柔軟さと懐の深さを味わえる“ダブル・ビル”でした。

 


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