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【レポート】駒形克己講演会「本がうまれるプロセス」

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2020年12月13日(日)14:30-15:30  at サントミューゼ多目的ルーム

お話:駒形克己

 

 

開催中の駒形克己「え!ほん」展にあわせて、駒形克己さんが自身の経歴や、その中でも多数手がけられている「本」の仕事にまつわる想いなどをお話しいただきました。

 

 

 

■グラフィックデザイナーとして渡米

お話は、日本デザインセンターからはじまるデザイナー時代からはじまりました。駒形さんは、日本でデザイナーとしてスタートし、経験を積む間に渡米を決意されたそうです。資金を集めて渡米したものの、最初の滞在先のロサンゼルスではなかなか仕事が見つからず苦労した時期もあったとのこと。その後、ニューヨークのCBS本社などでグラフィックデザイナーとして活躍する機会を掴み、デザイナーとしてのキャリアを積まれたそうです。

そんな時代の失敗談などから、プレゼンテーションの重要性や、他の人と同じことをしていたのでは埋もれてしまうことなどを学びとり、チャンスは自分でつくり掴んできたと話されました。

 

その後帰国し、ニューヨークと日本の仕事のギャップを感じるなかで、どう自分の居場所を見つけていくかを試行錯誤されたこと、そのなかで出会っていく新たな縁、結婚など、お話はプライベートな内容にも及びました。そして娘さんの誕生をきっかけに、絵本づくりがはじまっていったそうです。

 

 

■絵本に込めた想い

赤ちゃんの習性や行動などからヒントを得てつくられた『Little Eyes』シリーズの絵本や、娘さんの成長に寄り添いながら制作されてきた『ごぶごぶ ごぼごぼ』、『ぼく、うまれるよ!』などの代表的な絵本が生み出された背景、そのための試行錯誤や工夫についてお話されました。

 

 

そして駒形さんの絵本制作は、のちに健常者だけではなく障がいのある人たちにも向けたものへと広がっていったことや、その間に駒形さん自身が患った大病のお話などもありました。 また、駒形さんが小学生のときの体験によって抱いた、色についてのコンプレックスから、それを補おうと工夫して描いた絵が評価され、それがデザインの道に入るきっかけとなった、という貴重なエピソードも伺いました。

そうした活動を続けていく中で、フランスのポンピドゥーセンターの学芸員の方からは、視覚障がいのある人たちと健常者の人たちが共有できる絵本をつくってほしい、という依頼がきたそうです。そのために制作した作品『折って ひらいて』では、「真ん中に四角い穴があいている。その横のものを広げるとふたつになる。ひとつだったものがふたつに変化する。その工程を触手で感じとってもらえたら…」という、作品に込めた想いを語られました。

 

 

■どんな格差があっても共有できるものを

また、九州大学病院小児医療センターの仕事では、子どもたちが安心できる環境づくりをと依頼され、手すりの色を変えたり、廊下の通りに名前をつけたりと、似たような景色が続く病院のなかで子どもたちが迷子にならないような配慮をしたそうです。併せて『森のお医者さん』という白衣のポケットに入るサイズの小さな絵本を制作し、絵本のなかに描かれた動物を病院の壁にも使用して、絵本の世界と子どもたちが暮らす場所とをリンクさせた取組みのお話など、プロジェクターに映し出された写真を見ながら伺いました。

 

 

駒形さんは、世界各地で展覧会を開催するなかで、自身の抽象的な作品を子どもたちが見てどう反応するか確認したい、そんな思いからワークショップをはじめ、展覧会場の半分をワークショップ会場としながら、世界各地で展覧会を実施してきたそうです。そのなかで、健常者と障がいのある人たち、富裕層と貧困層といった、色々な格差問題を目の当たりにし、私たちが気づかないうちに子ども時代から垣根をつくってきている大人社会に大きな疑問を持ったと話されました。そこでせめて自分ができることとして、みんなが共有できる絵本をつくることや、子どもたちや障がいのある人たち誰もが気軽に参加できるワークショップをしたい、との考えに至ったそうです。「どんな格差があっても共有できるものを、という思いで今もずっと制作しています。」というお話で講演会は終わりました。

 

 

そのあとの質疑応答では、参加者の方から、「今、打ちひしがれている子どもたちがたくさんいると思います。これからも子どもたちに向けて制作してください。」という声があり、駒形さんからは、「今の新型コロナウイルスは、私たちにいろんなことを考えさせているんじゃないかな?と思います。私たち大人は、子どもを見守ることはもちろん大切ですが、萎縮してしまったり抑制しすぎたりするのではなく、このなかでも行動していくことが大事だと思います。」というメッセージをいただきました。

 

「優しく静かななかに強い信念を感じるような駒形さんの絵本の印象は、駒形さんのお人柄がそのまま表れているのですね。」「このような状況下ながら、駒形さんご本人にお会いでき、直接貴重なお話を聞くことができてよかった」などの感想が寄せられました。