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【レポート】MONO『その鉄塔に男たちはいるという+』

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劇団MONO第47回公演

「その鉄塔に男たちはいるという+」

2020年2月22日(土曜日)・23日(日曜日) 14:00開演 サントミューゼ大スタジオ

 

2018年度・2019年度の2年間、レジデント・カンパニーとして上田でさまざまな活動をしてきた劇団「MONO」と、代表である劇作家・演出家の土田英生さん。

今回はMONO第47回公演として、サントミューゼほか、全国4か所で上演します。

 

 

1998年の初演以降、さまざまな団体によって上演され続けている劇団代表作『その鉄塔に男たちはいるという』に書き下ろしの短編を加え、今回は『その鉄塔に男たちはいるという+(プラス)』として上演されます。

初演と同じ場面も、メンバーの今の年齢に合わせて多少手を加えているといいます。

多くの期待を集めて当日を迎えました。

 

サントミューゼ大スタジオには、錆びた鉄塔の途中に設けられたテラスのセットが建てられています。

バリケードのように積み上げられた椅子、数えきれない弾痕がうがたれたカウンターのようなもの、そして階段の手すりにはつる状の植物が絡んでいて、鉄塔が非常に古いものであることがわかります。

 

前半は、観光旅行で外国に訪れた日本人4人が登場します。

吉村充と志織夫婦、充の妹・円香を、円香の年上の友人でこの国に住んでいる柚月が案内しています。

充と志織には陽乃介(はるのすけ)という息子がいますが、日本に置いてきています。

 

この鉄塔で過去に起きた出来事について話したのをきっかけに吉村夫妻は口論になり、ついには志織の口から「離婚するから」という言葉が飛び出します。

 

 

一気に剣呑な空気が場を支配し、誰かが口を開くごとに「嫁から見た吉村家のどうしようもない居心地の悪さ」「久しぶりに再会した友人との温度差」といった、抑えていた不満が次々に飛び出してきます。

 

結託して充を責めていた志織と円香が激しい口論をはじめたり、吉村家の3人が柚月に無礼なことを言ってみたりと、立場や関係性が目まぐるしく変わっていきます。

その様子を第三者として眺めることになる観客は、誰しもが心当たりのある言動に笑わせられながらも、その身勝手さにどこか笑えない気分にもさせられます。

 

 

 

志織が冒頭に触れた、この鉄塔はかつて民族間の内戦に反対する人たちがこっそり人形劇を行っていた場所で、最終的にその人たちは殺されてしまったということが、4人の会話にぞっとするリアリティをもたらしました。

 

後半は、子どもだった吉村陽乃介が中年男性として登場します。

時を経てさらに朽ちた鉄塔に雑魚寝する4人の男たち。「おーい、もう寝たか?」「寝ろ!」「眠れないんだよ」という、これまた修学旅行の様なやりとりの明朝、今度はTシャツを巡って揉めています。不毛な会話の中で、彼らは鉄塔近くの日本人兵士たちの駐屯地に慰問に訪れた売れないパントマイム・カンパニーであり、戦意高揚のための出し物をやらされたことに嫌気がさして、リーダーを置いたまま逃げてここにたどり着いたことが自然と語られました。

立てこもる身ながら、1週間後に決行と噂されている大規模なゲリラ一掃作戦が終われば帰国できるという楽観が漂っています。

 

 

 

「地図をつくろう」「水を汲んでこよう」「交代で見張りをしよう」とテキパキ動いて、秩序をつくろうとする上岡。「それぞれが好きにしていてほしいんだよ」と言って、上岡に反発する笹倉。Tシャツの所有者について食い下がる小暮。すぐに怖がり、面倒くさがる吉村。戦地のすぐそばという不安や緊張感がずっとつきまとう中、それぞれの感じ方がぶつかって起こるいさかいは、前半と相通じるものがあります。

 

そこに、駐屯地を脱走してきた兵士・城之内が合流します。

兵隊の生活が耐えられない城之内は押しの弱いタイプで、いつの間にか4人のペースに巻き込まれていきます。随所にユーモアが散りばめられて、非常時であってもシリアス一色にはなり得ない人の営みにも気づかされます。

 

 

 

そのうち、今までは聞こえなかった銃声が聞こえるようになり、5人を不安が覆います。

万が一に備えるべきだと考える上岡と小暮は「アリチーム」、それについていけない笹岡と吉村は「キリギリスチーム」と分かれ、城之内が仲介役となり激論を戦わせることに。

 

 

そこで笹岡がこう言います。

「こんな状況だからこそ、殺伐としたところから遠い存在でいたいよ」。

 

城之内が、吉村の持ちネタである「階段コント」の新作を思いついて、みんなの前でやってみせます。

素人だからと恐縮していた城之内のコントが思いのほか面白く、日本に帰ったら城之内を加えた5人でやり直そうと盛り上がり、希望が見えてきます。

 

いよいよ、ゲリラ一掃作戦結構前夜。冒頭と同じように5人が雑魚寝しています。

明日が終われば、日本へ帰れる。

みんなでまた、パントマイムのライブをやろうよ。

 

明朝、ヘリコプターの音で5人は目覚めます。

鉄塔の下に12~13人の日本人兵士がいて、こちらに銃口を向けています。

 

城之内が、脱走した自分が鉄塔を降りて矢面に立つと言い出しますが、それではライブができないと4人は引き止めました。

 

駐屯地に置いてきたリーダーが木の陰から様子を見させられていることに気づきます。

自分たちも殺されるであろうことを悟った4人は、「このまま殺されるのは悔しいから、新メンバーお披露目をしよう」と言って兵士たちに向かってテラスの端に立ちます。

「はじめてですね、野外ライブ」「曇っているけど」。

軽口をたたいて、お決まりのオープニングを5人ではじめます。

 

 

暗転して機関銃の音が鳴り響きます。

 

 

1998年、北朝鮮のミサイル「テポドン」騒動の時に、「戦争すればいい」と発言する人の存在に衝撃と恐怖を覚えて土田さんが書いたこの作品。

苦い結末は、世界の状況が大きく変わった22年後の今、また違った切実さをもって観る者に迫ってきます。

愚かで間抜けな人間たちがバカバカしい会話をテンポよく交わす様子に笑っているうちに、気づけば喉元に匕首を突きつけられている――そんな舞台でした。

 

お客様に感想を伺いました。

友人と一緒に来ていた10代の女性は「戦争の話だからすごく重たい感じだと思っていましたが、日常の中のささいな問題や人間関係のことを描いていると気づいて、すごく面白かったです」と話してくれました。

劇団MONOの舞台を東京まで観に行くという女性の感想です。「上田に来てくれて嬉しいです。20年前に別の劇団の公演で観ましたが、時代背景もあって見え方がずいぶん変わりました」。

 

 


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