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【レポート】gone girl 村上早展 アーティストトーク

みる・きく
会場
サントミューゼ

 

gone girl 村上早展 アーティストトーク

2019年1月19日(土)14:00~15:00 at上田市立美術館 企画展示室

 

今、最も注目されるアーティストの一人である銅版画家、村上早さん。

上田市立美術館では、1月12日(土)から3月17日(日)まで企画展「gone girl 村上早展」を開催しました。

 

1月19日(土)と3月10日(日)にはアーティストトークを開催。

村上早さんのお話を聞きながら作品を鑑賞できる機会ということで、さまざまな世代のお客様にご参加いただきました。

 

 

 

作品を1点ずつ丁寧に解説する村上さん。

《ふるえ》という作品は、村上さんの小学生の頃の記憶などがモチーフになっています。

 

 《ふるえ》2015年

 

 

「避難訓練で机の下に隠れたこと」、「小学生特有のこの線からはみ出したら死ぬという謎のルール」、「神社の鳥居は結界で、その中は神様に守られているという教え」など、作品のモチーフになったエピソードを聞きながら、参加者は「村上早ワールド」を体感。

 

最初の部屋の床には、村上さんがリフトグランドエッチング(ポスターカラーで描いた線をそのまま腐蝕させる技法)で描画した銅版を設置。

 

「ぜひ、この銅版の上を歩いてみてください」と村上さん。

 

村上さんの呼びかけに、恐る恐る銅版を踏む参加者。

 

「この銅版は展覧会が終わってから作品に使用する予定のものです。

銅版画というのは、版に傷をつけて描き出す技法です。展覧会中にたくさんの方に踏まれてついた傷が、どんな風に作品に影響するのか、どんな作品ができるのか楽しみです」

 

多くの人に踏まれた銅版は、どのような作品に変化するのか期待が膨らみます。

 

 

村上作品の特徴の一つとして、「大きさ」が挙げられます。

「銅版画」と聞くと、小さい作品を思い浮かべる方も多いと思います。

作業工程が複雑な銅版画は、サイズが大きくなればなるほど、お金や労力、時間がかかるなどの要因から比較的小さな作品が作られることが一般的です。

しかし、村上さんの作品は、ほとんどが縦横100cmを超える大型作品です。

 

 

 

銅版を複数枚組み合わせてひとつの作品をつくり出します。

2017年「群馬青年ビエンナーレ」で優秀賞を受賞した《すべての火》《ながれ》は、試行錯誤を積み重ね、約半年をかけて制作。

200×250cmは村上作品の最大サイズです。

(この作品に使った銅板はなんと20枚!)。

大画面の独特な世界観に、参加者はくぎ付けに。

 

 

 

今回の展覧会は、大型作品41点、小品107点で構成。

本展のメインビジュアルにもなっている《かくす》。

 

 《かくす》2016年

 

「この女の子は羽が欲しくて、鳥から奪ってしまったのをブルーシートで隠したんです」

 

鮮やかな水色のブルーシートから飛び出した鳥の足を見つけて「わっ」と声を漏らす参加者。

 

「ブルーシートは日本では“隠す”ことの象徴。このブルーシートを描きたくてインクを探して、この作品ではじめて色版(水色)を刷りました」

 

 

 

2016年以降、作品に色を取り入れるようになった村上さん。

苦心して大画面の色版を習得後、

2018年赤い幕を描いた作品も圧巻です。

 

 

 

展覧会の出口には、小品を壁いっぱいに展示。

村上さんが版画制作を始めた2012年から近年までの様々なモチーフが描かれています。

 

大学3年生の前半(2013年)までは絵柄が定まらず、自分の表現を模索していた村上さん。

小品ではそういった村上さんの制作過程が垣間見える、大型作品とはまた違った魅力があります。

 

お客様の中には、お互いに「私のお気に入りの1枚」を見つけておられる方もいらっしゃいました。

 

トークの最後には、「今日は1点ずつ自分のエピソードを話してしまいましたが、自由な発想で、それぞれに感じてほしいです」と話す村上さん。

 

 

 

 

トーク終了後の図録のサイン会では、お一人づつ言葉を交わす村上さん。

「これからもずっと応援しています」という励ましに、はにかんだような笑顔で答えていました。