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【レポート】仲道郁代ピアノリサイタル~オール・ショパン・プログラム

みる・きく
会場
サントミューゼ

仲道郁代ピアノリサイタル オール・ショパン・プログラム

2月11日(月・祝) 14:00開演 小ホール

 

 

 

日本を代表するピアニスト仲道郁代さんによるオール・ショパン・プログラム。満席のホールに登場した仲道さんは、

「今日はショパンを全方位的に、さまざまなエッセンスをお聴きいただけるプログラムです」

とあいさつしました。

 

 

最初は、ショパンの故郷ポーランドの民族舞踊であるマズルカの曲。

メロディーが歌うように重なり紡ぎ出す美しい音色は、彼の母親の故郷に伝わるマズルカに影響を受けたと言われています。

 

「独特の憂いが漂います。彼はポーランドに伝わる民族的な舞踊のエッセンスを取り入れて、独創的な音楽を作り出しました。ショパンは二十歳でパリに渡り作曲家として成功を収めますが、作品に宿る祖国の音楽のエッセンスがパリの人々を惹きつけたからなのですね」

 

エレガントな雰囲気でパリの貴族に人気を博したショパンが恋に落ちたのは、エキセントリックな女流作家ジョルジュ・サンド。

スキャンダルとして取り沙汰された二人は、スペインのマジョルカ島に逃避行の旅に出ました。

旅先で作曲したのが『24のプレリュード』。1オクターブの中にある12の音それぞれの長調と短調、つまり24の調性で書かれた作品です。

 

「一つひとつの曲は短いのですが、それぞれの調性の世界観が見事に表現され、さらにショパンのさまざまな思いも込められている。壮大だけれど凝縮された宇宙をお楽しみください」
その言葉通り、24の曲からは希望や荘厳、神秘や孤独などさまざまなイメージが想起され、気持ちを揺さぶります。

ショパンが見た世界、作ろうとした宇宙が、仲道さんの音を通じて目の前に描かれるような贅沢なひとときでした。

 

 

後半は、祖国の姉へ、ショパンが手紙と共に楽譜を送ったとされるノクターンからスタート。
仲道さんが「ピアノを歌わせる」と表現したこの曲は、美しく悲しい旋律の中にも安らぎや温かさを宿しているよう。

 

仲道さんはショパンに限らず、曲と向き合うときは作曲家の気持ち、そして曲を聴いた当時の人の気持ちに思いを巡らせると話します。

「その人の人生とその人が生きた時代、空気感の中で、その曲はどのように生まれどのように音として立ち上ったのか。その作品は、時代を超えて現代の私たちの心にも響いてくる。それが音楽の素晴らしさだと思います」

 

 

曲にタイトルをつけることを嫌ったショパン。

彼が「物語」を意味するバラードを作った理由に、ポーランドの詩人ミツキエヴィチによる物語の存在があったのではないかといいます。

 

バラード第1番は、敵国の司令官となりながら祖国のために戦い、それが明らかになって処刑された青年の物語にショパンが共鳴し生まれたと言われることがあります。

英雄的で華麗な旋律を、全身全霊で奏でる仲道さん。時代を超えて、彼のほとばしる情熱を届けてくれるようでした。
そして「戦争と平和」とも形容される第2番は、ポーランドの自然を思わせる穏やかな部分と嵐のように激しい部分が交互に現れる構成。穏やかな中にも、どこか暗さを感じる美しさが印象的でした。
水の精の詩をモチーフにしたかのような第3番は優しく温かな雰囲気。晩年に作曲された第4番は、「ショパンのさまざまな思いが千々に乱れてぐるぐると回っているような曲」と仲道さん。
得られなかった祖国の栄光と、故郷へ戻れなかった自分。後悔と希望、矛盾する思いを内包する美しいメロディーは、ショパンの苦悩を浮かび上がらせるようでした。

 

 

最後はポロネーズ『英雄』。ポロネーズとはポーランドで生まれた踊りのリズムで、貴族や兵士が儀式で誇りを持って踊る曲です。
戦争で大変な状況にあった同国の人々はショパンのポロネーズに大きく勇気づけられ、ピアノのまわりに集まって明日への勇気をもらっていたのだそう。

 

力強く、華麗に。重厚なハーモニーに圧倒されながらも、ショパンが祖国に抱いた切ないまでの希望が伝わってくるようで、音楽の力を再確認させてくれる圧巻の演奏でした。

 

アンコールは、ベートーヴェンの『悲愴』から包み込むような優しさを感じる第2楽章を。
そしてリサイタルではいつも最後に感謝の気持ちと共に演奏する『愛の挨拶』で、夢のような音を届けてくれました。

 

ホワイエではCDの販売が行われ、終演後のサイン会には多くのお客様が集まりました。

仲道さんは今日の感動を伝えるお客様とにこやかに言葉を交わしていました。

 

 

 

訪れたお客様に感想を聞きました。
ピアノを習っている小学生の女の子は「仲道さんの演奏はずっと聴いてみたかったので嬉しかったです。初めてポロネーズの生演奏を聴きましたが、迫力があってかっこよかった」。
サントミューゼでの仲道さんのリサイタルは毎回最前列の席をとるという男性は、「ショパンが大好きなのですが、中でも仲道さんが弾くショパンは最高なので半年前から楽しみにしていました。今日は仲道さんにショパンが乗り移っているように感じられるぐらい、迫力が違いましたね。いつもの数倍感激しました」
と感動覚めやらぬ様子で話してくれました。一緒に訪れた娘さんはピアノリサイタルは初めてだったそう。「演奏しているというより、歌を聴いているような時間でした。解説を聞くと、自分では想像できないイメージが広がって楽しかったです」と話してくれました。

 

 

【プログラム】

オール・ショパン・プログラム

マズルカ 第13番 イ短調 Op.17-4

24のプレリュード Op.28

ノクターン 第20番 嬰ハ短調 “レント・コン・グラン・エスプレッシオーネ”(遺作)

4つのバラード

第1番 ト短調 Op.23

第2番 へ長調 Op.38

第3番 変イ長調 Op.47

第4番 へ短調 Op.52

ポロネーズ 第6番 変イ長調 Op.53「英雄」

 

アンコール

ベートーヴェン:ピアノ・ソナタ第8番「悲愴」 第2楽章

エルガー:愛の挨拶