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【レポート】新倉瞳(チェロ)&佐藤卓史(ピアノ) デュオ・リサイタル

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2021年3月13日(土)14:00開演 サントミューゼ 小ホール

 

今年1月に上田市内でアナリーゼ・ワークショップ、クラスコンサート、アウトリーチコンサートを届けてきたチェリスト・新倉瞳さんとピアニスト・佐藤卓史さんが、デュオ・リサイタルで上田に戻ってきました。

 

 

 

新倉瞳さんは、カメラータ・チューリッヒの首席チェリストとしてスイスを拠点に幅広く活動しています。佐藤卓史さんは、多数の受賞歴があり室内楽奏者としても人気のピアニスト。実力派ふたりの共演への期待は高く、バルコニー席も含めて満席となりました。

 

拍手で迎えられた1曲目は、サン=サーンスの組曲「動物の謝肉祭」の「白鳥」。さざ波のようなピアノの音色の上を、チェロの旋律が優美に泳ぎます。

 

演奏後、新倉さんが「今日は満席御礼で、昨年はコロナ禍で360度お客様に囲んでいただいて演奏する機会がなかったので、嬉しいです」と笑顔で客席に挨拶します。「上田に『ただいま』という気持ちで帰ってきました。街の中にいろんな目印もできて、“ホーム感”がありますね」と佐藤さんが続け、上田への再訪を喜んでいる気持ちが伝わってきます。

 

 

2曲目はフォーレの「シシリエンヌ」。フランス語でシシリエンヌ、イタリア語でシチリアーノというこのタイトルの意味について、クラスコンサートなどでも好評だった三択クイズを出します。正解は、舞踊の名前。地中海に浮かぶシチリア島の踊りなのです。寄せては返す波のようにスイングする緩やかなリズムが特徴です。誰もが一度は耳にしたことのある美しいメロディはさまざまなかたちで演奏されていますが、チェロ版が原曲なのだとか。

 

3曲目・4曲目は、シャミナードというフランスの作曲家のピアノ曲。シャミナードは女性作曲家として初めて職業的に成功したコンポーザー・ピアニストと言われています。佐藤さんは幼少期にラジオで聴いて好きになり、以来こつこつと楽譜を集めて、シャミナードの作品だけを集めたCDをリリースしています。「旋律の美しさが彼女の作品の特徴です」と言う通り、「森の精」は高音部の音の連なりが真珠の粒を思わせ、「昔」はチェンバロの奏法を取り入れた古風なフランス音楽らしい響きが印象的です。

 

 

 

新倉さんが舞台に戻り、佐藤さんが作曲した「夜想」へ進みます。いろんな作曲家に曲を依頼するプロジェクトを進めている新倉さんが、ここ5年ほどデュオとして共演を続けている佐藤さんに依頼したものです。

「冒頭の、チェロの人間の声のような深い音色が生きる旋律はすぐに浮かびました。この曲は三部形式なのですが、真ん中の部分は時間がかかりました」と、作曲の様子を佐藤さんが話してくれます。新倉さんが「『夜想』というタイトルの由来は?」と尋ねると、「シューベルトの『春の想い』という曲から連想しました」と、ライフワークにしているシューベルトからタイトルを思いついたことを明かします。

心を揺さぶられるチェロの美しい旋律が堪能でき、新倉さんのために書かれた曲であることが伝わってきます。

 

前半の最後は、ドビュッシーの「チェロ・ソナタ」です。「このソナタは一目瞭然ならぬ“一聴瞭然”と言いますか、ピアノとチェロが対等だと感じます」と新倉さん。続いて佐藤さんが「ドビュッシーは晩年、全6曲のソナタを書こうとして3曲書いたところで亡くなってしまいました。ぜひ他のソナタも聴いてみてください」と解説を加えます。

 

新倉さんが対等と言った通り、2つの楽器が緊張感を持って丁々発止の演奏を繰り広げます。日本文化の影響を受けていたといわれるドビュッシーらしく、時間の流れや間などに、どこか日本的なニュアンスも。

 

休憩をはさんでの後半1曲目は、オーストリアの作曲家・ウェーベルンの「3つの小品」です。ウェーベルンはシェーンベルクを師として、新ウィーン楽派として前衛的な作品を残した作曲家です。ミニマルな楽曲で、これまでの曲とまったく違う風景が展開されます。

3曲が3分で終わるタイトル通りの小品で、おふたりが「ウェーベルンはこのように小さな曲をたくさん残しています。絵画の点描を思わせるような曲ですね」と補足しました。

 

話題は上田滞在に移ります。新倉さんは前回魅了された「室賀温泉ささらの湯」に、昨日は佐藤さんと一緒に行かれたのだとか。「前回は5日間いたので、スタッフの方も含め、まるで家族のようなチームでした。いろんなお蕎麦屋さんを巡ることもできました」と、上田での時間を楽しまれているようです。

 

 

佐藤さんは、新倉さんが「第19回齋藤秀雄メモリアル基金賞(チェロ部門)」を受賞したことを紹介したうえで、チェリスト、指揮者だった齋藤秀雄は、「子供のための音楽教室」を開設して後の桐朋学園音楽系学科に繋げるなど、パイオニア的な活動で功績を残しました。「齋藤先生は、戦時下のラジオ放送でベートーヴェンを演奏していたエピソードが印象に残っています」と解説を加えます。そして、昨年が生誕250周年のメモリアル・イヤーだったベートーヴェンの話へ。

 

新倉さんは、こんなエピソードを披露します。「ベートーヴェンのチェロ・ソナタを、当時の楽器であるピアノフォルテとガット弦のチェロの組み合わせで聴いたことがあります。それでベートーヴェンのソナタへの印象が変わりました。フォルテッシモが印象的な曲が、楽譜に忠実に演奏すると“シンプル・イズ・ベスト”であることが浮き上がってくるようでした」。

ピアノフォルテを学んだことのある佐藤さんの、「曲が作られた当時の楽器を知って、今のピアノのようにモダンな楽器に戻ってくると、また違った感覚を得られます」という言葉には、音楽の歴史の厚みがにじみます。

 

「チェロ・ソナタ 第2番」は、2楽章からなります。天才ピアニストとしても名声を得ていたベートーヴェンは自身の演奏でこのソナタの初演を果たし、曲はプロイセン国王フリードリヒ・ウィルヘルム2世に献呈されています。ピアニストとしてのベートーヴェンが前面に出た技巧的な曲で、スケールの大きい第1楽章、くるくると曲想が変化する第2楽章が、新倉さんのチェロと佐藤さんのピアノによって奏でられると、ひときわ聴きごたえがあります。

 

繊細でありながら力強い約30分の演奏が終わると、大きな拍手が響きます。両手を挙げて拍手を送るお客様も。

 

アンコールは、リサイタルの一昨日、3月11日が誕生日というアルゼンチンの作曲家アストラ・ピアソラの曲。「ピアソラといえば『リベルタンゴ』を思い浮かべる方も多いと思いますが、今日は『タンティ・アンニ・プリマ』という曲を演奏したいと思います。祈りの曲で、ピアソラの作品の中でもしっとりとした響きです」と新倉さんが曲紹介をします。

 

元は歌曲「アヴェ・マリア」として作曲されていたのが、イタリア映画『エンリコ4世』の劇中曲として編曲されたもの。「タンティ・アンニ・プリマ」とは「昔むかし」という意味です。抒情性の中にピアソラらしいドラマティックな展開も随所に顔を出す、美しい作品でした。

 

 

終演後、お客様に感想を伺いました。小諸市からいらした女性の方は「素晴らしいデュオでした。ふだんはオーケストラを聴くことが多いので、新鮮でした」と笑顔で答えてくれました。海外生活が長く、サントミューゼが初めてという女性は「響きも雰囲気もよかったです。上田のお話も聞けて、ローカル色が出ているのも好ましくて。演目は特に後半がよかったですね」と満足げなご様子。一緒にお越しになった方は「上田は音楽が身近な街だと感じます」と、3回目のサントミューゼを楽しまれていました。

 

【プログラム】

サン=サーンス:組曲「動物の謝肉祭」より「白鳥」
フォーレ:「シシリエンヌ」
シャミナード:「森の精」作品60(ピアノ・ソロ)

シャミナード:「昔」作品87-4(ピアノ・ソロ)

佐藤卓史:「夜想」

ドビュッシー:「チェロ・ソナタ ニ短調」

 

・・・《休憩》・・・

 

ウェーベルン:「3つの小品」

ベートーヴェン:「チェロ・ソナタ 第2番 ト短調」作品5-2
〈アンコール〉
ピアソラ:「タンティ・アンニ・プリマ」

 

 


 

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