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【レポート】茂木大輔の“生で聴く『のだめカンタービレ』の音楽会”

みる・きく
会場
サントミューゼ

 

茂木大輔の“生で聴く『のだめカンタービレ』の音楽会”
2019年1月12日(土) 15:00開演 at 大ホール

 

 

 

昨年に引き続き上田では2回目の開催となる“生で聴く『のだめカンタービレ』の音楽会”。
漫画「のだめカンタービレ」に出てくる曲の解説や原作シーンなどをステージ上のスクリーンに投影。曲の背景を感じながら聴くことのできる全国で人気のコンサートです。

指揮はドラマ『のだめカンタービレ』のクラシック音楽監修者である茂木大輔さん。ピアノはこのコンサートのピアノ版をサントミューゼで開催している高橋多佳子さん。管弦楽は3月に上田公演が予定されている群馬交響楽団です。

 

開演前、ロビーには原作で、のだめも着たマングースの着ぐるみが登場。一緒に写真を撮りたいと多くの方が列を作り、思い思いに撮影を楽しんでいました。

 

 

今公演は『ロシア・プログラム』。コンサートは茂木さんによる曲の解説からスタートしました。オープニングのチャイコフスキー『1812』は原作には登場せず、劇場版で千秋がマルレ・オケの常任指揮者に就任して初めての定期演奏会で指揮した曲です。

「実はこの曲、フランスがロシアに負ける曲なのでフランスではほとんど演奏されることがないと聞いていました。その曲を千秋がパリで演奏するのはちょっと……、と申し上げたところ、監督から長い歴史の中で2回だけ演奏されたことがあると。しかも名だたる巨匠が。そこで千秋もあえてこの曲をパリで演奏するということになったんです」と、曲にまつわる裏話を交えた軽快なトークに会場から笑いが起こります。

 

 

 

ヴィオラとチェロの美しい音色で始まった曲は打楽器の登場により緊迫した雰囲気に。フランスの国歌「ラ・マルセイエーズ」とロシア民謡風の主題が重なり戦いの激しさを感じさせます。そしてロシア軍の勝利の鐘と大砲が鳴り響き華々しく曲を閉じます。

 

2曲目はピアノ協奏曲の最高峰といわれるラフマニノフの『ピアノ協奏曲第3番』です。2年前、この曲をコンサートで演奏するにあたり、原作者の二ノ宮知子先生が『第3番』をテーマに番外編を書き下ろしてくれたそうです。

常に3~4つの声部を同時に演奏するだけでなく、目まぐるしい転調を重ねるなど内容の濃さはもちろん、ピアノ協奏曲としては異例の長さといわれる曲。通常、リハーサルは予定の1時間前には終えるという茂木さんですが、あまりにも大変な曲なので、この2日間はギリギリまで練習を行ったといいます。
その曲の演奏を前に登場したピアニストの高橋さんはマイクを持ってステージに。

 


「この難曲を演奏する前に話すピアニストがいるとは思わなかった」と驚きを隠せない茂木さん。
「ピアニストにとって人生をかけてやる曲だと思います。今日も頑張って弾きたいと思います」と笑顔の高橋さんに会場から拍手が沸き起こりました。

 

第一楽章。哀愁を帯びた美しいピアノの音がしだいにスピードと厚みを増していきます。超絶技巧が必要とされる第2楽章はこの曲の1番の聴きどころ。スクリーンにはのだめの姿。難しいけれど「楽しい」というセリフが高橋さんの表情と重なります。

 

 

 

鍵盤の上を、一見軽やかそうに動く指から紡ぎ出される音は、優雅さがありつつもダイナミック。その力強さはどこから来るのかと、ピアノに視線が釘付けになります。そして切れ目なく第3楽章に突入し、ピアノの全音域が使われたカデンツァ。さらにピアノは加速しオーケストラと融合、力強い終結を迎えます。

演奏機会の少ない協奏曲ということもあってか、長く壮大なドラマのエンディングを見たかのように、観客から大きな拍手とともに「ブラボー」という声が上がりました。

 

 

 

 

休憩をはさんで3曲目はムソルグスキーが親友である画家ガルトマンの遺作展を観に行き、その印象をまとめたピアノ組曲『展覧会の絵』。それを20世紀に入りラヴェルがオーケストラに編曲し大ヒットした曲です。原作では千秋がウィルトール・オケを指揮した演奏会のメイン曲になっています。

 

 

高らかに鳴り響くトランペットの『プロムナード』で曲が始まります。絵と絵の間を歩いて行くかのように『プロムナード』が趣の違う10曲を繋ぎます。

 


スクリーンには曲に合わせガルトマンの絵画、もしくは関連性ある絵画が映し出されます。
絵を想像させる楽器の使い方や曲の構成、作曲家の人生など、音に合わせて解説を見ることでさらに曲への理解が深まり、通常のコンサートとは違う楽しみ方で作品に触れることができました。

 

 

鳴り止まない拍手の中、始まったアンコールは2曲。ラヴェルの「妖精の国」と、ドラマ版のオープニング曲であるベートーヴェンの『交響曲第7番』です。
『のだめ』といえば、というこの曲。最後には観客の拍手も加わり会場が一体となって幕を閉じました。

終演後は茂木さんと高橋さんのサイン会が行われました。2人を前に「今度はラフマニノフの2番を弾いてください」「今日は感動をありがとうございました」「鳥肌が立ちました」「サントミューゼで行われたピアノ版のコンサートにも来ました。勉強になりました」など、さまざまな感想が聞こえてきました。

 

 

【プログラム】
チャイコフスキー:荘厳序曲「1812」変ホ長調 作品49
ラフマニノフ:ピアノ協奏曲 第3番 二短調 作品30
Ⅰ.アレグロ・マ・ノン・タント
Ⅱ.インテルメッツォ アダージョ
Ⅲ.フィナーレ アラ・ブレーヴェ
ムソルグスキー(ラヴェル編曲):組曲「展覧会の絵」
〈プロムナード〉〈こびと(グノーム)〉〈プロムナード〉〈古い城〉〈プロムナード〉〈テュイルリー〉〈ブィドロ(牛車)〉〈プロムナード〉〈卵の殻をつけた雛の踊り〉〈サミュエル・ゴールデンベルクとシュムイレ〉〈プロムナード〉〈リモージュの市場〉〈カタコンブ(ローマ時代の墓) 死せる言葉による死者への呼びかけ〉〈にわとりの上に立つバーバ・ヤーガの小屋〉〈キエフの大門〉

〈アンコール〉
ラヴェル:組曲「マ・メール・ロワ」より第5曲「妖精の国」
ベートーヴェン:交響曲第7番より抜粋