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【レポート】生で聴く『のだめカンタービレ』の音楽会(オーケストラ版)

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2021年1月16日(土)

 

サントミューゼで恒例となった「生で聴く『のだめカンタービレ』の音楽会【オーケストラ版】」。クラシック音楽を題材にした人気マンガ「のだめカンタービレ」の世界を、作品に登場する楽曲の生演奏と解説を通してお届けする人気企画です。4回目を数える今年はコロナ禍という状況ながら、満席に近い多くのお客様を迎えて開催することができました。

 

冒頭、ステージに登場したのは指揮者の茂木大輔さん。本音楽会を企画した立役者であり、マンガ原作の取材協力や、ドラマ化・映画化の際の演奏演技指導も務めています。

 

「最初にサントミューゼから企画のお話をいただいた時に考えたのが、“『のだめカンタービレ』に登場するピアノ協奏曲を全曲コンプリートしよう”ということでした。今年はラフマニノフの第2番を演奏します」

 

 

「のだめ最有名曲」と言われるラフマニノフのピアノ協奏曲第2番は、原作の重要な場面で登場する曲です。

主要人物の一人であるエリート音大生・千秋真一は、有名指揮者のシュトレーゼマンに弟子入りしたにもかかわらず、この曲で「ピアノを弾きなさい」と命じられます。練習中も謎めいた指導で千秋を困惑させるシュトレーゼマン。その葛藤を、茂木さんはこう話してくれました。

 

「楽譜や作曲家を完璧に研究している千秋の演奏は正しい。でも、音楽というものはそれだけではないんです。心に触れる温かなもの。人間は一瞬一瞬変わっていく、それに寄り添わなければいけない。千秋は、指揮者の大きな教育としてそれを習うんですね。

もう一つ。客席で千秋の演奏を聴いた主人公・のだめが、“自分もこの曲をどうしても弾きたい”と心底思う。我々音楽家は誰しも、人生のどこかの瞬間で音楽家になろうと決める、そんな曲との出会いがあるんです」

 

期待に満ちた大きな拍手と共に幕を開けた音楽会。管弦楽は群馬交響楽団。ピアノ演奏は2020年末にサントミューゼで開催した「“生で聴く『のだめカンタービレ』の音楽会” ピアノ版」に出演したピアニスト、菊池洋子さんです。

 

 

スクリーンには「第1楽章」の文字。このように楽曲解説や原作での登場シーンがスクリーンに映し出され、曲の理解を深めてくれるのが本企画の特徴です。

 

冒頭、静かに始まるピアノ序奏。年末のピアノ版の演奏会で菊池さんが解説してくれた「鐘のような音色」がゆっくりと近づいてくるように響きます。それを広い海のように包み込むオーケストラ。茂木さんの解説にあるように、ロシア的なエキゾチックな旋律で魅了します。

 

スクリーンには、原作でシュトレーゼマンが千秋を指導するシーン。

「もっと音楽に没頭しろと言ってマス!!」

「観客への魅せ方 これも大事な勉強です」

 

オーケストラの音の波に包まれて、華麗に踊るような菊池さんのピアノ。第1楽章のラストはオーケストラとの一糸乱れぬ調和で、心地よい興奮に包まれました。

 

第2楽章の序盤、フルートの美しいソロ演奏。スクリーンには演奏者の名前が映し出されました。続いてはクラリネット奏者の名前といったように、楽器や奏者に注目させてくれるのも本企画の特徴。オーケストラをより深く味わうことができます。

 

静かな水面に広がる波紋のように、かと思えば千々に乱れるように激しく、美しく波打つピアノは心に迫り、スクリーンに映る千秋の演奏姿とも重なります。

 

高揚を誘うハーモニーから始まった第3楽章では、繊細さと強さを併せ持つピアノに圧倒されます。演奏する喜びが、菊池さんの全身からあふれているかのようでした。スクリーンの中では、千秋の演奏に圧倒された主人公・のだめが心で叫びながら走り出します。

「ピアノ、ピアノ、ピアノを弾かなきゃー!!」

 

菊池さんとオーケストラが呼応し合うやり取りは心地よく、音の重なりにずっと身を委ねていたくなるほど。ラストは舞い踊るようなピアノとオーケストラの壮大で優しい調和が、ホールいっぱいに鳴り響いていました。客席からは大きな拍手が、長く長く、雨のように降り注ぎます。

 

止まない拍手に応え、登場した菊池さん。

「オーケストラの大きなうねりの中で、気持ちよく演奏させていただきました」

菊池さんが音楽家になろうと決心したのは中学時代、恩師である田中希代子さんとの出会いが分岐点になったそう。

「音楽は人の心を動かし、訴えかけてくるものなのだと衝撃を受けたんです」

と、当時を振り返ってくれました。

そしてアンコールにソロで披露したのは、ショパンの「エオリアン・ハープ」。小川のように透明な音は、心にまで染み渡るようでした。

 

第2部はブラームスの交響曲 第1番。ドラマ版のクライマックスで、千秋が指揮をした曲です。

スクリーンの解説によれば、19世紀のベートーヴェン没後、「どの作曲家も交響曲を作れないのではないか」と言われていた中で誕生したこの曲が、音楽史を塗り替える存在となったのでした。

 

 

第1楽章。なじみある荘厳なハーモニーから曲が幕を開けました。ティンパニの連打による迫力の音色、オーボエとフルートの哀愁漂う調べ。勇壮で、明瞭で、堂々としたハーモニー。どこまでも美しく、強さを感じさせます。

 

曲の進行と共にスクリーンには「第1主題」「展開部」など曲の構成のほか、楽譜の一部が映し出されたり、際立つ楽器を紹介したり、さらにベートーヴェンの曲からの引用部分の解説もあったりと、演奏を120%楽しませてくれます。もちろん、千秋の指揮のもと演奏する原作のオーケストラシーンも。

 

第2楽章では、ブラームスと愛情を交わし合ったシューマンの未亡人・クララの紹介も。「迫る心」を表すオーボエと、「応える微笑」を表すクラリネットといったように、曲の背景を交えながら楽曲を解説してくれました。「管と弦の対話 語り合う二人」と示されたパートでは、まさに対話するような美しいハーモニーで魅了します。

 

第4楽章には、ブラームスがクララに贈った絵葉書に書かれていた短い旋律が登場します。実はこの旋律は、この交響曲のあらゆるメロディを作り出す核心となっています。悲劇から一転、美しいメロディが希望や歓喜を感じさせるよう。解説にあった通り、曲全体がクララへの恋文だったのでしょうか。

 

壮大な愛情を感じさせるクライマックス。躍動するオーケストラの音色、繊細で厚みのある音の重なり。あらゆる楽器の音色が温かな塊となり、聴衆に訴えかけてくるようでした。

 

演奏後、ホールはうねるような大きな拍手に包まれました。拍手に応えて再び登場した茂木さんが、楽器のパートごと奏者を立たせて紹介してくれます。

 

アンコールは、誰もが知る名曲「ハンガリー舞曲第5番」。客席の手拍子がオーケストラと一体となり、演奏を盛り上げます。緩急あるリズムが心地よく、生演奏と共に過ごす素晴らしさを心から味わうことができました。

終演後、客席へ向かって大きく手を振ってくれた茂木さん。来年も同じ場所で会える日を、心待ちにしたいと思います。

 

 

【プログラム】

〈第1部〉

ラフマニノフ:ピアノ協奏曲 第2番 ハ短調 作品18〈ピアノ:菊池洋子〉

第1楽章 モデラート

第2楽章 アダージョ・ソステヌート

第3楽章 アレグロ・スケルツォアンド

〈第2部〉

ブラームス:交響曲 第1番 ハ短調 作品68

第1楽章 ウン・ポコ・ソステヌート-アレグロ

第2楽章 アンダンテ・ソステヌート

第3楽章 ウン・ポコ・アレグレット・エ・グラツィオーソ

第4楽章 アダージョ-ピウ・アンダンテ-アレグロ・ノン・トロッポ・マ・コン・ブリオ

 

〈ソリスト・アンコール/菊池洋子(ピアノ)〉

ショパン:練習曲作品25-1「エオリアン・ハープ」

 

〈アンコール〉

ブラームス:ハンガリー舞曲第5番