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【レポート】“生で聴く『のだめカンタービレ』の音楽会” ピアノ版

みる・きく
会場
サントミューゼ

“生で聴く『のだめカンタービレ』の音楽会” ピアノ版 Vol.3

2019年9月6日(金)19:00開演 小ホール

 

クラシック音楽をテーマにした人気漫画『のだめカンタービレ』の世界を、物語に登場する楽曲の生演奏と、解説や名シーンを映した映像と共にお届けする“生で聴く『のだめカンタービレ』の音楽会” 。
この日は、ピアニストの三浦友理枝さんによるピアノ版コンサートが行われました。

 

ステージに登場した三浦さんが最初に演奏したのはショパンの「ノクターン 第8番 変ニ長調」。

 

 

演奏と同時進行で、スクリーンに楽曲解説や曲にまつわる漫画のシーンが投影されるのがこの音楽会の特徴です。
曲の進行に合わせて「♭系から♯系への突然の展開」「溢れ出す強い思い」などの解説文が映し出され、さらに作曲当時の19世紀のパリの風景画もイメージを膨らませてくれました。

 

この日のプログラムはフランスの作曲家がテーマ。
三浦さんは「みなさんにフランスの音楽に親しみ、どのようなものなのか知っていただけたら」と挨拶しました。

 

フランス印象主義音楽の開拓者、ドビュッシーによる4曲から成る組曲は「一般的な彼の印象とは違うミステリアスさがあります」と紹介。
第3曲「月の光」では、スクリーンにマンガの一場面が登場し、物語と音楽が融合した新しい世界を見せてくれました。

 

 

続いてはプーランクの曲。
同時代を生きたシャンソン歌手、エディット・ピアフの才能に感銘を受けて作った「エディット・ピアフを讃えて」は、シャンソン曲「枯葉」のメロディーによく似たテーマで始まり、歌うような旋律がドラマチックに展開していきます。

 

続く第2部は、三浦さんによるラヴェルの「ピアノ協奏曲」解説コーナー。
来年1月11日にサントミューゼで開催するオーケストラ版“生で聴く『のだめカンタービレ』の音楽会” で、三浦さんが演奏する曲です。

 

 

オーケストレーション(オーケストラ用に編曲すること)に優れ、「音の魔術師」と呼ばれたラヴェル。
几帳面な性格であまり感情を露わにしなかったと言われる反面、「内に情熱を秘めていたことが、さまざまな楽曲から伝わってきます」と話しました。

 

「以前、ラヴェルが晩年暮らしたパリ郊外の家を見学したことがあります。暖炉の上には爪やすりなど身だしなみを整える道具が置かれていたのですが、それらが長さ順にきれいに、平行に並べられていて。彼の音楽感と重なって、『なるほど』と納得したことを覚えています」

 

三浦さんが考えるラヴェルの作風のキーワードは、「バロック・古典への敬愛」「スペイン的情熱」「印象派」「ジャズ」。

 

「印象派というジャンルは、ドビュッシーが作り上げてラヴェルが追随したというイメージが浸透していますが、実はラヴェルの作品は古典やバロック系の新古典主義の曲が多くを占めています。そして、ピアノ曲で印象派の曲を最初に作ったのはラヴェルなんですね。

絵に例えると、ドビュッシーの音楽は淡い色彩で優しい輪郭なのに対して、ラヴェルの音楽は原色が多くてカラフル。ただし色が重なっても濁らず、向こう側が透けて見えるようで、それが彼の音色のミソだと思います。その輪郭は、尖った鉛筆でデッサンしたようにシャープな印象です」

 

ここで、ピアノ協奏曲第1楽章の冒頭を少しだけ音源で聴いてみます。出だしにパチッという音が響きますが、「これはムチの音なんです」と三浦さんが解説すると客席からは驚きの声が。

スラップスティックという名の楽器で、マンガにも演奏シーンが描かれています。1月のオーケストラ公演では、この演奏を実際に見ることができるそう。

 

第2楽章は長いピアノソロから始まります。しみじみと穏やかなメロディーを、実際に演奏してくれた三浦さん。
オーケストラでは次にこのメロディーが登場する時、コーラングレという木管楽器にバトンタッチするそう。
哀愁を帯びたコーラングレの音色は、この旋律をどのように響かせるのでしょうか。

 

第3部はラヴェル作品を4曲。「ラヴェルの音色は繊細で緻密ながら、スペインの民族的情熱やジャズの影響による絢爛さも」と解説が添えられたのは、有名な「亡き王女のためのパヴァーヌ」。マンガで同曲をオーケストラで演奏する場面も登場しました。
1月のオーケストラ公演でどの楽器がどの部分を担当するのか、「ヒントは漫画の中にありましたね」と三浦さん。

 

 

「鏡」より第2曲「悲しき鳥たち」では、暗い森に鳥の声が響いたり、鳥たちがバタバタとざわめく様子が不穏な音色で表現されます。
インコを飼っているという三浦さん、「鳥を飼い始めてから、飛び立つシーンがすごく理解できるんです」と話すと客席からは笑いが起こっていました。

 

最後は「ラ・ヴァルス」。第一次大戦末期、ラヴェルが従軍で味わった辛さ、そして母親の死による深い影を感じさせます。
スクリーンには当時の豪華な舞踏会の様子の絵が登場しますが、どこか不安を感じさせます。曲は怒涛の展開を迎え、混沌とした音色へ。
それに合わせて先ほどの舞踏会の絵がモノクロで現れ、荒れた戦地の写真が現れます。
「豪華な生活が戦争の中に吹き飛ばされる」という文章ののち、銃声のような重低音で曲は突如終わりを迎えました。
迫力ある演奏に、1月のオーケストラ演奏にも期待が高まります。

 

 

終演後のロビーではサイン会が開かれ、お客様は三浦さんとの会話を楽しんでいました。
訪れたお客様からは「解説が丁寧で分かりやすく、素直に音楽に入れた」「『のだめカンタービレ』はDVDを持っていてよく観ている。今日はすごくきれいな音だった」
などの感想が聞かれました。

 

 

1月のオーケストラ版コンサートでは、「のだめカンタービレ」ドラマ・アニメのクラシック音楽監修を務めた茂木大輔さんが指揮とお話を担当し、群馬交響楽団を迎えてお送りします。
今日登場したラヴェルの「ピアノ協奏曲」、そしてベートーヴェンの交響曲も演奏予定です。ぜひお楽しみに。

 

 

 

 

【プログラム】

〈第1部〉

ショパン:ノクターン 第8番 変ニ長調

ドビュッシー:ベルガマスク組曲

サティ:ジムノペディ 第1番

プーランク: 即興曲 第15番「エディット・ピアフを讃えて」

〈第2部〉

ラヴェル ピアノ協奏曲 解説コーナー

〈第3部〉

ラヴェル:亡き王女のためのパヴァーヌ

ラヴェル:古風なメヌエット

ラヴェル:「鏡」より第2曲「悲しき鳥たち」

ラヴェル:ラ・ヴァルス

 

 

2020年1月の、生で聴く“のだめカンタービレ”の音楽会の詳細はコチラ