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【レポート】茂木大輔監修 高橋多佳子の“生で聴く『のだめカンタービレ』の音楽会” ピアノ版

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サントミューゼ

茂木大輔監修 高橋多佳子の“生で聴く『のだめカンタービレ』の音楽会” ピアノ版 Vol.2

2018年8月17日(金)19:00開演 at小ホール

 

 

クラシック音楽を題材とした人気マンガ『のだめカンタービレ』に登場する楽曲を、自身も「のだめファン」であるピアニスト高橋多佳子さんが生演奏でお届けする本コンサート。

昨年に続く2回目の開催です。

 

ステージ上のスクリーンには、演奏と同時進行で曲にまつわる原作の名シーンや楽曲解説が投影され、作品ファンのみならずクラシック音楽を身近に楽しめる企画です。
開演前や休憩中、ロビーには作品に登場したマングースの着ぐるみが登場。お子さんはもちろん、多くのお客様が記念写真撮影を楽しんでいました。

 


「オーケストラ版『のだめカンタービレの音楽会』は全国で人気ですが、ピアノ版はここサントミューゼだけの特別バージョン。今日は皆様と一緒に“のだめ”の世界を楽しみたいと思います」 と笑顔で挨拶した高橋さん。

 

今回のプログラムは、主人公「のだめ」こと野田恵と千秋真一のパリ留学時代の登場曲が中心。
パリに着いて最初にピアノで音を出したのだめが、「日本と音が違う!」と感動し演奏したのがラヴェル作曲、ピアノ組曲「鏡」の一曲でした。

 


「私もポーランドに留学した時、のだめと同じように感じました。ヨーロッパの建物は天井が高くて石造り。空気も乾燥していて音が伸びるんです」
そう話した高橋さんが奏でたのは、水面に広がる水紋を思わせる繊細な音色。

 

 

スクリーンには「うねる大小の波、木の葉のように揺れる小舟…… 鏡のようにラヴェルは描写する」といった曲解説や作曲者ラヴェルの紹介などが映し出され、イメージが広がっていきます。

 

 

 

のだめの演奏を聴いた先生が「もっと恋をしなさい」とアドバイスした曲が、ショパンの「ノクターン」。
「柔らかな晩秋の光を感じさせる穏やかな主題」「転調」「あふれ出す強い思い」など、情緒を感じる曲の構成やショパンの込めた思いを、スクリーンでリアルタイムで解説します。
バッハの「平均律クラヴィーア曲集」は、作中ののだめ同様、高橋さんも「難しくて学生時代は苦手だった」そう。けれど最近になって、その楽しさに気づいたと話します。
のだめのセリフを借りて「楽しんで弾くので、頑張って聴いてください」と奏でた曲は、光のように明るく軽やかな前奏曲から穏やかで美しいフーガへ。演奏後は、客席から「ブラボー!」の声があがりました。

光のように明るく軽やか。
高橋さんの演奏に圧倒されるとともに演奏する喜びをダイレクトに感じさせる演奏に、客席から「ブラボー!」の声があがりました。

 

第二部は、来年1月にサントミューゼで行われるオーケストラ版「のだめカンタービレの音楽会」の曲の聴きどころをピアノで披露。
まずは高橋さんが「すべての音楽の中で一番難しいと思う曲です」と紹介したラフマニノフの「ピアノ協奏曲」から。
ステージにはピアノが2台並び、音楽評論家でピアニストの下田幸二さんとともに演奏します。

 

 

下田さんが弾く暗く美しい音色から、二人の音が重なって温かで厚みのあるハーモニーへ。
情熱的なハーモニーはラフマニノフの故郷ロシアの叙情を思わせます。
スクリーンには、この難曲に挑むのだめの真剣な姿。最後は千秋と二人でピアノを弾くイラストが現れ、どこかステージ上の二人とも重なったのでした。

 

 

千秋がオーケストラで指揮を振った組曲「展覧会の絵」は、ムソルグスキーが親友の建築家ガルトマンの遺作展で得たイメージをもとに作曲した作品。
小曲の間に「プロムナード」(散歩)という短い曲が挿入される構成で、絵を1枚1枚観て歩くムソルグスキーの姿を描いています。
スクリーンには各曲のモチーフとされるガルトマンの絵が投影されます。

タイトルから伺えるように一風変わった絵もあり、それぞれの音楽も実に個性豊か。
プロムナードも、絵を観た後の心情の変化を表すように変化していき、一連の作品として面白さを感じます。
そして最後にスクリーンに映った「ムソルグスキーとガルトマンの友情と偉業は音楽の中に永遠の命を得た」という言葉が、さらにこの作品を味わい深く感じさせたのでした。

 

 

大きな拍手とともに幕を閉じたコンサート。
訪れたお客様からは、「『のだめカンタービレ』はマンガもアニメもドラマも全部見て入るほど好き。音楽には詳しくないけれど、身震いするほど素晴らしい演奏だった」「演奏を聴いて、マンガを読んだときの気持ちが蘇って楽しめた」などマンガの感動と重ね合わせた声や、「高橋さんの解説と重ね合わせて情景がイメージできて楽しめた」と言った感想が聞かれました。

 

 

来年1月12日には、オーケストラ版「のだめカンタービレ」の音楽会が開催され、高橋さんもピアノで出演します。
ぜひお楽しみに!

 

 

【プログラム】

〈オープニング〉ベートーヴェン:「悲愴」より第2楽章 〈のだめ in パリ〉
ラヴェル:「鏡」より≪洋上の小舟≫
ショパン:ノクターン 第8番 変ニ長調 作品27-2
ショパン:バラード 第1番 ト短調 作品23
バッハ:平均律クラヴィーア曲集 第2巻より第5番 ニ長調 BWV874
リスト:超絶技巧練習曲より 第10番 ヘ短調 〈オーケストラ版「のだめ音楽会」の聴きどころをご紹介!〉
ラフマニノフ:ピアノ協奏曲 第3番 ニ短調 作品30より第2楽章(2台ピアノ版/共演:下田幸二)
ムソルグスキー:組曲「展覧会の絵」より
≪プロムナード≫≪グノームス(小人)≫≪ビドゥオ≫≪卵の殻をつけたひなどりのバレエ≫≪ニワトリの足の上に建つ小屋≫≪キエフの大門≫

 

〈アンコール〉

ドビュッシー:2つのアラベスク 第1番
ラフマニノフ:ピアノ協奏曲 第2番より第3楽章(抜粋)