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【レポート】MONO『怠惰なマネキン』

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サントミューゼ レジデント・カンパニー事業
MONO『怠惰なマネキン』
11月4日(月・祝)14:00~  サントミューゼ大スタジオ

 

 

サントミューゼのレジデント・カンパニーとして滞在創作を行った劇団「MONO」。
テレビドラマや映画の脚本執筆も多数手がける劇作家で演出家の土田英生さんを中心に、1989年に京都で結成。
張りつめた状況に置かれた普通の人々を描いた軽妙な会話劇に社会的テーマを織り交ぜた作品は全国で人気を博し、今年で結成30周年を迎えます。

 

『怠惰なマネキン』は、2017年にMONOが上演した作品の再演。
土田さんは本作のテーマを「自分で責任を取らず、すべてを環境や他人のせいにするダメな人たち」と話します。
さぞや「ダメな人たち」が登場するのだろうと思いきや、登場したのは確かにずるいけれどどこか共感してしまう、「普通の人たち」でした。

 

舞台は、無数のマネキンが並ぶ奇妙な一室。
物語は、この部屋だけのワンシチュエーションで進んでいきます。

 

とある起業セミナーで出会い、「“大きなこと”をして注目されたい」と集まった5人の男女。
計画の中心人物で「仙人さん」と呼ばれる男の発案でマネキンをせっせと集めたものの、肝心の「何をやるか」が決まらないまま2カ月以上がたち、4人はイライラを募らせています。

 

 

「どうするんですか!」と詰め寄られ、あっけらかんと「このままじゃ失敗する。何か意見をもらいたいんだよね」と笑顔で答える仙人さん。

観ている側も「お前が言うな」と心で突っ込まずにはいられません。
無責任なのに悪気がなくて、不思議と憎めない。「いるいる、こういう人!」と思わせる絶妙な「人たらし」です。

 

他の4人も、私たちの回りにいそうなキャラクターぞろい。
真面目で正論をまくし立てる「カオリ」、自由で適当な「ユリカ」、アツいけれどどこか間抜けな「川崎くん」、意見を主張せずうまく立ち回る年下の「ともちゃん」。
みんな悪い人ではないけれど、ずっと自分の正しさを主張して誰かを批判しています。「できるって言ったじゃないか」「私は言われた通りにしたのに」。
見えないボールを空中でトスし合うような堂々巡りは既視感すら覚えるほどリアルで共感してしまう部分も多く、「自分ならどうするだろう」と考えてしまいます。

 

 

観ている側がいたたまれなくなるリアルな女同士のマウンティングや、共通の敵がいるとやたら団結する女たちなど、どこの職場や学校にもありそうな人間模様が軽快なテンポで描かれます。真面目なシーンに限って飛び出す絶妙なカオリの言い間違いや「前世はタタミだった」と断言する怪しい占い師など笑えるポイントがテンポよく散りばめられ、本人たちが真剣だからこそ、おかしみや情けなさが浮かび上がってきます。

 

水面下で三角関係も絡み、5人の関係は入れ替わりながら思わぬ方向へ。
人間関係に悩むカオリにともちゃんがかけた「自分で思ってる自分と、外から見た自分は違う」という言葉が印象的でした。
他人とうまくやっていくことは、だからこんなに難しいのかもしれません。

 

 

混乱の末「全員がクズ」ということが判明し、状況は最悪に。
「これさ、誰が悪いの?」と呟くカオリに、「別に誰も悪くないよ。いや、全員悪いのかも。怠惰だしね、あたしたち」とユリカ。
悪いと分かっていても、自分を変えることは難しい。だから周りのせいにする。
一見まともな言い分で取り繕うことに慣れていた彼らが、少しずつ気付き始めます。

 

プロジェクトはついに解体。時が流れ、彼らはそれぞれ別の道へと進み始めます。

「いつまでも座ってたら私たち、まるでマネキンだしね。立ち上がって、思いっきり冒険しないと」
果たして、彼らは変われるのでしょうか。
自分と同じように「ダメだけれど普通の人たち」が変わろうとする様子に、期待を込めずにはいられませんでした。

 

 


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