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【レポート】礒絵里子 アーティスト・イン・レジデンス豊殿地域

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サントミューゼ

芸術家ふれあい事業
礒絵里子さん、中川賢一さんクラスコンサート

2017年11月1日 at 豊殿小学校

 

10月から11月にかけて12日間、上田市に滞在し、さまざまな地域の小学校や公民館などに出向いてヴァイオリンやクラシックの楽しさを伝える活動をしていたヴァイオリニストの礒絵里子さんとピアニストの中川賢一さん。

 

この日は市の北部にある豊殿小学校でクラスコンサートを開きました。

登場とともに演奏したのは、小学校でのコンサートであいさつがわりにセレクトしているというエルガーの「愛のあいさつ」です。

 

 

「まずは皆さんに音楽で愛を届けました」と演奏後に自己紹介し、ヴァイオリンの楽器紹介に進みました。

またヴァイオリンの音階は左手で弦を押さえることで出すことができるが、ギターのように押さえる場所を示すフレットがないため、音を聴き分けるためにとにかく練習をくり返して音を体に染み込ませることが必要、と児童たちに話す礒さん。

 

 

ほかにも弓の弦をこする部分は何か児童たちに質問を出すと、「うどん!」「骨!」などユニークな回答が出るなかで「馬のしっぽ!」と正解を答える児童が。

 

弓毛と呼ばれる部分は弓1本に対して180本ほどの毛が使われていて、使い続けるうちに切れたり、音が悪くなってきます。礒さんの場合は1~2カ月に一度張り替えているのだとか。

 

 

2曲目にはディニク作曲のひばりを演奏。

途中でまるで本物のひばりがさえずっているかのようにヴァイオリンの音色が響きます。

高音域が得意なヴァイオリンの性質が良く生かされた曲でした。

 

礒さんのヴァイオリンの楽器紹介からバトンタッチをして、今度は中川さんによるピアノの楽器紹介が始まりました。

 

 

まずはどのようにピアノの音が出るのか、鍵盤からハンマーまでを切り取ったアクションカットモデルを見せながら説明をしてくれました。

 

分かり易くユーモアも交えた説明は子どもたちからの反応もよく、しまいには話すたびに笑いがこぼれるほどに。

今度はピアノのまわりに集まってもらい、実際に中を覗き込みながら構造の説明を進めていきます。

音を響かせる役目をしている響板はどれほど響くのかを確かめるためにオルゴールをあてて確認をしたり、みんなで「わー!」っと叫んでみたり、体験を通して構造を実感していくように。

 

 

「これから『キエフの大門』を演奏するから、床やピアノの下などいろんなところで聴いたり、触ったりして音の振動を感じてください」と中川さんが子どもたちに伝えて演奏を始めると、いろんなところに移動したり、掴まったりしながら楽しむ児童たち。

 

最後にはピアノの弦がどれだけ振動しているのか視覚的に楽しんでもらおうと無数のピンポン球を入れました。

生き物のようにはね続けるピンポン球に児童は大興奮!

 

 

 

こうしてヴァイオリン、ピアノそれぞれの楽器の魅力を伝えていきました。

 

 

再び礒さんが登場。

「例えばピアノは同時に両手を使って10音の演奏が可能だけれど、一度出した音は次第に小さくなります。

一方ヴァイオリンはほぼ同時に出せる音は4音までですが、弓で弾き続けることによって音の大小を含めて音を出し続けることができます」

と、ピアノとヴァイオリンの音の出し方の違いで弱点を補い合いながら演奏していることも触れていきました。

 

 

最後に選んだモンティ作曲のチャルダーシュでは、礒さんがみんなが座っているところを周りながら演奏。

間近で指の動きや音色をじっくり観察しながら鑑賞をすることができました。

 

 

アンコールには「みんなの将来を願って演奏します」と中川さんがアレンジしたアメイジング・グレイスをセレクト。

最後に児童たちから「迫力があった」「ヴァイオリンの音の表現が面白かった」などの感想が伝えられてコンサートは終了。

 

ただ聴くだけではない、芸術家に触れることによる学びが多い時間となったのではないでしょうか。